時を喰らう館:天才高校生探偵、神藤葉羽の難解推理

葉羽

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13章

沈黙の語り部

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過去の事件の調査は、葉羽を深い闇へと導いていた。天堂家一族に隠された秘密、血塗られた過去――それは、想像を絶するほど残酷で、悲劇的なものだった。

数十年前、天堂一徹は、一族の財産を不正に利用し、私腹を肥やしていた。その事実を知った朽木蒼司は、一徹を告発しようとしたが、雅也によって阻止された。雅也は、一族の体面を守るため、一徹の不正を隠蔽し、蒼司を陥れたのだ。蒼司は、全てを失い、天堂家への復讐を誓った。

そして、現在。蒼司は、綿密な計画を練り上げ、雅也への復讐を実行に移した。彼は、VR技術とクロノスの花を利用し、雅也の時間感覚と記憶を操作し、自殺に見せかけて殺害した。さらに、紅葉も、蒼司によって殺害された。紅葉は、過去の事件の真相を知っており、蒼司にとって邪魔な存在だったのだ。

葉羽は、これらの事実を突き止め、蒼司の復讐劇の全貌を理解した。しかし、彼の心は、重苦しい闇に覆われていた。蒼司の復讐は、確かに正当化できるものではなかった。しかし、同時に、葉羽は、蒼司の心に潜む苦しみと絶望を理解していた。

葉羽は、彩由美と共に、事件について議論した。彩由美は、蒼司の行為を断固として非難した。

「どんな理由があろうと、人を殺めていいはずがないわ。蒼司さんは、間違っている」

彩由美の言葉は、正論だった。しかし、葉羽は、簡単に善悪を断罪することができなかった。

「確かに、蒼司のやったことは許されるべきではない。でも、彼をここまで追い込んだのは、雅也さんと天堂家一族なんだ。彼らが、蒼司の人生を奪ったんだ」

葉羽は、静かに反論した。彼は、蒼司の復讐劇の裏に隠された、人間の弱さと愚かさを感じていた。

二人は、沈黙に包まれた。暖炉の火がパチパチと音を立て、二人の影を壁に映し出していた。葉羽は、書斎の本棚から一冊の厚い本を取り出した。それは、哲学者のニーチェの著作だった。葉羽は、ページをめくり、人間の倫理観、善悪の概念、そして復讐の心理について書かれた箇所を読み返した。

「人間は、なぜ復讐をするのだろうか? 復讐によって、何が得られるのだろうか?」

葉羽は、自問自答を繰り返した。彼は、事件を通して、人間の心の奥底に潜む、闇の深淵を覗き込んだような気がしていた。

彩由美は、葉羽の苦悩を理解していた。彼女は、葉羽の肩にそっと手を置き、優しく微笑んだ。

「葉羽さん、あなたは正しいことをしているわ。真実を明らかにしようとするあなたの勇気を、私は尊敬している」

彩由美の言葉は、葉羽の心に温かい光を灯した。彼は、深く息を吸い込み、決意を新たにした。

「ありがとう、彩由美。僕は、この事件を解決し、全ての真実を明らかにする。そして、蒼司を止める」

葉羽の瞳には、静かな炎が燃えていた。彼は、真実を追求する探偵として、そして、一人の人間として、この事件に決着をつける覚悟を決めたのだった。
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