焔星高校の密室 鏡影の殺人 ～天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿～【本格推理×ホラー×どんでん返し】

10章

第二の犠牲者

深い闇に包まれた旧佐伯邸。葉羽と彩由美は、緊張した面持ちで洋館の前に立っていた。ひび割れた鏡の不気味な光景が、彼らの脳裏に焼き付いていた。まるで、洋館自体が悪意を帯びているかのような、重苦しい雰囲気が漂っている。

「彩由美、大丈夫か？」

葉羽は、彩由美の手を握りしめ、優しく尋ねた。彼女の小さな手が、冷たく震えているのが伝わってくる。

「う、うん…でも、ちょっと怖い…」

彩由美は、正直な気持ちを吐露した。彼女の瞳には、不安の色が浮かんでいた。

「大丈夫だ。俺がそばにいる」

葉羽は、力強く言った。彼は、彩由美を守るという強い決意を胸に秘めていた。

二人は、ゆっくりと洋館の中へと入っていった。玄関ホールは、ひっそりと静まり返っていた。埃っぽい空気が、重苦しく漂い、時折、どこからか風が吹き抜ける音が聞こえてくる。

葉羽は、懐中電灯を取り出し、周囲を照らした。薄暗い光が、壁に飾られた肖像画を浮かび上がらせる。その目は、まるで彼らを見つめているかのようだった。

「行こう、彩由美」

葉羽は、彩由美の手を引き、書斎へと向かった。

書斎のドアを開けると、彼らは息を呑んだ。

部屋の中は、荒らされていた。本棚の本は散乱し、机の引き出しは全て開けられていた。そして、床には、血だまりが広がっていた。

「これは…」

葉羽は、言葉を失った。

彩由美は、恐怖で叫び声を上げた。

「きゃあああ！」

葉羽は、彩由美を抱きしめ、彼女を落ち着かせようとした。

「大丈夫だ、彩由美。落ち着け」

彼は、優しく声をかけた。

しかし、彼自身も、動揺を隠しきれなかった。

書斎で、一体何が起きたのか。

そして、誰が、血を流しているのか。

葉羽は、懐中電灯で部屋の中を照らし、血だまりの周辺を調べた。

血だまりは、机の近くに広がっており、その傍らには、一冊の本が落ちていた。

葉羽は、本を拾い上げた。それは、密室トリックに関する専門書だった。そして、その本には、血痕が付いていた。

彼は、本を開いてみた。

本のページには、様々な密室トリックが解説されていた。そして、あるページには、赤いインクで線が引かれていた。

それは、「二重密室」と呼ばれるトリックだった。

二重密室。それは、二つの密室を組み合わせることで、完璧なアリバイを偽装するトリックだ。

葉羽は、このトリックが、今回の事件の鍵を握っていると感じた。

彼は、再び部屋の中を見渡した。そして、ある異変に気づいた。

書斎の壁に掛けられていた鏡が、なくなっていたのだ。

「鏡がない…」

葉羽は、呟いた。

「え？でも、さっきまで…」

彩由美も、驚いた様子で言った。

葉羽は、鏡が掛けられていた場所を調べた。そこには、何もなかった。

まるで、鏡が、忽然と消え去ってしまったかのようだった。

その時、葉羽のスマートフォンが鳴った.

見知らぬ番号からの着信だった。

彼は、電話に出た。

「もしもし」

「神藤葉羽君、第二の犠牲者が出たようだな」

低い声が、受話器から聞こえてきた.

それは、仮面の男の声だった。

「お前がやったのか！」

葉羽は、怒りを込めて叫んだ.

「私は、何もしていない。ただ、ゲームを見守っているだけだ」

男は、冷たく言った。

「ふざけるな！お前は、人殺しだ！」

「人殺し？それは、違う。私は、ただ真実を明らかにしているだけだ。そして、真実は、時に残酷なものだ」

男は、意味深な言葉を残して、電話を切った。

葉羽は、スマートフォンを握りしめ、考え込んだ。

第二の犠牲者。それは、一体誰なのか.

そして、犯人は、誰なのか.

葉羽は、混乱していた.

しかし、彼は諦めなかった。

彼は、必ず事件の真相を解き明かし、犯人を捕まえなければならない.

それが、彼にできる唯一のことだった.

葉羽は、彩由美の手を握りしめ、書斎を後にした.

二人は、洋館の中をくまなく捜索した.

そして、ついに、第二の犠牲者を発見した。

それは、佐伯家の使用人、灰原静香だった.

彼女は、地下室で、遺体となって発見された.

彼女の死因は、窒息死だった。

まるで、誰かに首を絞められたかのようだった。

葉羽は、静香の遺体を調べた。

そして、彼女の首に、奇妙な痕跡を発見した。

それは、まるで、鏡の破片で刺されたかのような痕跡だった。

葉羽は、確信した。

犯人は、鏡を使って、静香を殺害したのだ。

そして、犯人は、まだ洋館の中にいる。

葉羽は、彩由美を抱きしめ、彼女を守りながら、犯人捜索を開始した。