焔星高校の密室 鏡影の殺人 ~天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿~【本格推理×ホラー×どんでん返し】

葉羽

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11章

過去からの影

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地下室の冷たい空気が、葉羽の肌を刺す。灰原静香の遺体が、無残な姿で横たわっている。彼女の首には、鏡の破片で刺されたような傷跡が残されていた。犯人は、残忍な方法で彼女を殺害したのだ。

葉羽は、彩由美を抱きしめ、彼女の震える体を温めた。彩由美の瞳には、恐怖と悲しみが入り混じっていた。

「大丈夫だ、彩由美。俺が守る」

葉羽は、優しく囁いた。しかし、彼自身の心にも、暗い影が落ちていた。第二の犠牲者が出てしまった。犯人は、ますます大胆になっている。一刻も早く、犯人を捕まえなければならない。

葉羽は、静香の遺体をもう一度丁寧に調べた。何か見落としているものはないか、彼は注意深く観察した。

その時、彼の目に、静香の手に握られた小さな紙片が映った。

葉羽は、紙片を静香の手から取り出した。紙片は、古びて色あせていたが、そこに書かれた文字は、はっきりと読み取ることができた。

それは、「鏡の部屋」という文字だった。

「鏡の部屋?」

葉羽は、呟いた。一体、それは何を意味するのか。

彼は、彩由美に紙片を見せた。

「彩由美、この文字を知っているか?」

彩由美は、首を横に振った.

「いいえ、知らないわ…」

葉羽は、考え込んだ。「鏡の部屋」。それは、この洋館のどこかに存在する秘密の部屋なのだろうか。

彼は、もう一度地下室を見渡した。何か手がかりがないか、くまなく探した。

その時、彼の目に、壁に掛けられた一枚の絵が映った。

絵は、古い洋館を描いたもので、一見すると何の変哲もない風景画だった。

しかし、葉羽は、絵の左下に描かれた小さな鏡に気づいた。

鏡は、絵の中で小さく描かれているだけで、特に意味があるようには見えなかった.

しかし、葉羽は、その鏡に何かを感じた。

彼は、絵に近づき、鏡の部分を指で触れてみた。

すると、絵の表面が少しへこんだ.

葉羽は、絵の裏側を調べてみた。

絵の裏側には、小さなボタンが隠されていた。

彼は、ボタンを押してみた.

すると、壁の一部がスライドして開き、隠し通路が現れた。

「これは…」

葉羽は、驚きの声を上げた.

隠し通路は、狭く、暗かった。

葉羽は、懐中電灯で通路を照らし、中へと入っていった。

彩由美も、葉羽の後について行った。

通路は、曲がりくねっており、どこまでも続いているように思われた。

しばらく歩くと、通路は行き止まりになった。

行き止まりの壁には、一枚の鏡が掛けられていた。

鏡は、葉羽たちが書斎で見た鏡と同じものだった。

しかし、この鏡には、ひび割れは入っていなかった。

葉羽は、鏡に近づき、自分の姿を映してみた.

彼の姿は、歪むことなく、はっきりと鏡に映っていた.

その時、鏡の表面が波打ち始めた。

そして、鏡の中から、声が聞こえてきた.

「ようこそ、鏡の部屋へ」

それは、仮面の男の声だった.

鏡の表面が、さらに波打ち、まるで液体のようになった.

そして、鏡の中から、男が現れた.

男は、仮面を外した。

彼の顔は、葉羽も彩由美も見たことのない顔だった。

「お前は、誰だ?」

葉羽は、男に問いかけた。

「私は、佐伯久美子だ」

女は、静かに答えた。

「佐伯久美子?」

葉羽は、その名前に聞き覚えがあった.

それは、佐伯蔵人と写っていた写真の女性の名前だった。

「しかし、あなたは、もう死んでいるはず…」

葉羽は、混乱していた.

「私は、死んでいない。私は、鏡の中に生きている」

久美子は、謎めいた言葉を残した。

「鏡の中に?」

葉羽は、理解できなかった.

「私は、数十年前、この洋館で起きた一家惨殺事件の唯一の生き残りだ. 私は、犯人によって、鏡の中に閉じ込められた」

久美子は、静かに語り始めた.

「犯人?それは、誰だ?」

葉羽は、息を呑んだ。

「犯人は…」

久美子はじっと葉羽を見つめ、こう言った。

「あなたの祖父よ」

その言葉は、爆弾のように葉羽の心に炸裂した。

祖父?まさか…

葉羽は、信じられない思いで久美子を見つめた。

「なぜ、私の祖父が…」

葉羽は、混乱していた.

「あなたの祖父は、佐伯家の財産を狙っていた。彼は、一家を惨殺し、全ての財産を手に入れようとした。しかし、私は生き残った。そして、私は彼を呪った。私は、鏡の精霊となり、彼を永遠に苦しめることを誓った」

久美子の言葉は、静かだが、力強かった.

「そして、今、私は復讐を遂げようとしている. あなたの祖父の罪を、あなたに償わせるために」

久美子
の黒い瞳が、葉羽を射抜くように見つめていた.

葉羽は、恐怖で体が硬直していた.

彼は、何を言ってもいいのか分からなかった。

彩由美もまた、恐怖で言葉を失っていた。

彼女は、葉羽の手を強く握りしめ、彼に寄り添った.

久美子は、ゆっくりと葉羽に近づいてきた。

「さあ、ゲームを始めよう、葉羽くん」

久美子の声は、冷たく、そして不気味だった。

                
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