仮題「難解な推理小説」

葉羽

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6章

突然の悲鳴

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 第6章: 突然の悲鳴

時計のズレに気付いたことで、葉羽の推理は加速していた。リビングに戻り、全員が再び揃うと、彼は皆の行動を改めて整理することにした。各自がどの時計を基準にしていたか、その「ズレ」がどのようにアリバイの成立に影響を与えたかを一つ一つ確認するためだ。

「各自がどの時計を見ていたのか、そしてそれが鳴海さんの死亡推定時刻とどれだけズレているかが重要だ」

葉羽はそう言って全員をリビングのソファに座らせ、冷静に説明を始めた。だが、緊張した空気が流れる中、赤城玲司が不満げな声を上げた。

「ズレた時計がどう影響するかなんて分からない。俺たちにはこの事件を解決するための専門知識なんてないんだ。お前が言っていることが正しいかどうかも判断できない」

赤城は焦りと苛立ちを隠せず、鋭い視線を葉羽に向ける。だが葉羽は動じることなく、彼の言葉に冷静に応えた。

「確かに、このズレが直接的に鳴海さんの死を引き起こしたわけではない。しかし、この時計のズレを利用すれば、犯人は全員に異なる時間を『正しいもの』として信じ込ませることができる。つまり、アリバイが成立したと思わせながら、その実、犯行は別の時間に行われたということだ」

葉羽の理路整然とした説明に、参加者たちの表情は一様に険しくなった。彼の言葉が真実であるなら、全員のアリバイが疑わしくなり、誰もが犯人の候補に挙がるということになるからだ。

「それにしても……どうして鳴海さんが狙われたんだろう?」

藤田茉莉が小さな声でつぶやいた。彼女の怯えた表情が印象的だった。鳴海の死因がはっきりしていない今、彼がなぜ標的にされたのかも謎のままだ。

「それも、まだはっきりとは分からない。だが、もう少しで何かが掴めそうだ」

そう答えた葉羽が、さらに推理を進めようとした瞬間だった──。

突然、家の奥から女性の悲鳴が響き渡った。

「キャアアアアアアア!」

鋭く高い声が、豪邸全体に反響する。全員が驚き、即座に立ち上がった。葉羽の心臓が一瞬止まるかのように感じたが、すぐにその声が誰のものかを理解した。

「……彩由美!?」

悲鳴の主は、望月彩由美だった。彼女はこの場にはいないはずだが、葉羽は瞬時に判断し、声が聞こえた方向に駆け出した。驚いた参加者たちも彼に続くが、葉羽は一瞬たりとも迷うことなく廊下を進み、豪邸の奥にある部屋へとたどり着いた。

---

「彩由美! 無事か?」

葉羽が部屋の扉を開け放つと、そこには倒れた彩由美がいた。彼女は床に座り込み、肩を震わせながら涙ぐんでいた。葉羽は慌てて彼女に駆け寄り、その肩に手を置いた。

「大丈夫か? 何があった?」

彩由美は涙を拭い、震える声で答えた。

「……あ、あそこに……」

彼女が指差した先には、大きな壁掛け時計があった。その時計もまたズレているように見えたが、葉羽はその時、彩由美が示すものが時計ではないことに気付いた。

「誰か……見たの……」

「誰か?」

葉羽はその言葉に動揺しながらも、冷静に彼女の言葉を促す。

「どういうことだ? 何を見たんだ?」

「……分からない。暗い影が、私の後ろを……そばを通り抜けていったの。気づいたら、部屋のドアが開いていて……それで、怖くなって……」

彩由美の言葉は途切れ途切れだったが、その恐怖は伝わってきた。彼女が見たものが本物の人間か、それとも何かの錯覚かは不明だったが、この状況下ではただの偶然とは考えにくい。

「影……?」

葉羽はその言葉を反芻した。彼女が見たのは犯人だったのか、それとも別の何者かがこの屋敷に潜んでいるのか。彼の中でさらなる疑念が湧き上がってきた。

その時、後ろから足音が近づき、他の参加者たちが到着した。

「何があったんだ?」と赤城が尋ね、葉羽は簡潔に説明した。

「彩由美が誰かを見たらしい。暗い影のようなものが彼女の近くを通ったと……」

「それは……犯人ってことか?」

伊達卓巳が不安げに聞き返す。彼も他の参加者たちも、次第に動揺の色を隠せなくなっていた。

「いや、それはまだ分からない。だが、ここに誰かがいるのは確かだ。僕たち以外にもう一人、この屋敷に潜んでいるかもしれない」

葉羽の推理はますます複雑さを増していった。時計のズレによるアリバイトリックが存在する可能性、そしてその背後に潜む謎の人物。犯人が今もこの屋敷のどこかに潜んでいるのか、それともすでに別の罠が仕掛けられているのか。

「いずれにせよ、今はこれ以上犠牲者を出さないために行動しなければならない」

葉羽は決意を新たにし、再び全員をリビングに戻すことにした。だが、彼の中には今、彩由美を守るという新たな使命感が芽生えていた。

---

全員が再びリビングに集まったが、緊張感はピークに達していた。誰もが疑心暗鬼に陥り、隣に座る者すら信用できない状態だった。

「もう一度、皆の行動を確認しよう。この屋敷のどこかに、まだ手掛かりがあるはずだ」

葉羽は冷静に言葉を発しながらも、頭の中で彩由美が見た「影」が何を意味するのかを整理し始めた。時計のズレ、そして目撃された謎の人物。この二つの要素がどう繋がるのか──それを解き明かすことで、次の一手が見えてくるはずだった。

しかし、葉羽にはもう一つの疑問が残っていた。

「この屋敷のどこかに、僕たちの知らない『秘密』がある……それが明らかになれば、全てのピースがはまるはずだ」

葉羽の推理は次第に核心へと近づいていく。だが、それと同時に、さらなる危険が迫っていることも感じていた。

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