残響鎮魂歌(レクイエム)

葉羽

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13章

記憶の断片

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彩由美の声が、記憶の迷宮に囚われた葉羽の意識を揺さぶる。それは、まるで暗闇に差し込む一筋の光のようだった。彼は必死にその光に手を伸ばし、現実世界へと戻ろうともがく。

50年前の豪邸の光景が、断片的に葉羽の脳裏をよぎる。白いワンピースの女性、暴行する男たち、そして、恐怖に歪む自身の顔。それらの記憶は、まるで悪夢の残滓のように、葉羽の心を苦しめる。

しかし、彩由美の声は、葉羽に諦めない勇気を与えていた。「葉羽くん…負けないで…あなたは一人じゃない…」彼女の言葉が、葉羽の心の支えとなる。

その時、葉羽は記憶の断片の中に、ある重要な手がかりを見つける。それは、50年前の事件の直後、葉羽の祖父が警察に通報しようとしていた事実だった。祖父は、事件の共犯者としてではなく、目撃者として警察に連絡しようとしていたのだ。しかし、黒曜の父親に脅迫され、口を封じられてしまった。

「おじいちゃんは…真実を…伝えようとしていた…」葉羽は呟いた。この事実は、葉羽の心に新たな希望を灯した。祖父は、加害者ではなく、むしろ真実を隠蔽された被害者だったのだ。

葉羽は、記憶の迷宮の中で、祖父の残したメッセージを探し始める。彼は、祖父の視点で50年前の事件を再体験し、事件の真相を解き明かす鍵を探ろうとする。

断片的な記憶の中で、葉羽は祖父が事件の直後、ある場所に重要な証拠を隠したことを知る。それは、豪邸の庭にある古井戸だった。祖父は、事件の証拠となる品を、井戸の底に沈めたのだ。

「井戸…?」葉羽は呟いた。彼は現実世界に戻り、その井戸を探さなければならない。

彩由美の声は、ますます強くなっていく。「葉羽くん…もうすぐ…もうすぐよ…」

葉羽は、彩由美の声に導かれるように、記憶の迷宮から脱出しようとする。しかし、朔也の音響攻撃は、まだ続いていた。葉羽の意識は、過去と現在の間で激しく揺れ動く。

その時、葉羽は白いワンピースの女性と目が合う。彼女の瞳には、悲しみと諦めではなく、強い意志が宿っていた. 彼女は、葉羽に何かを伝えようとしているかのようだ。

「…忘れないで…真実を…」

女性の言葉が、葉羽の心に響き渡る。彼は、女性の遺志を継ぎ、事件の真相を明らかにすることを誓った。そして、ついに、記憶の迷宮から脱出し、現実世界へと意識を取り戻した。

「葉羽くん!」彩由美が駆け寄り、葉羽を抱きしめる。彼女の温もりと、安堵の涙が、葉羽の疲弊した心に染み渡る。

「彩由美…ありがとう…俺は…戻ってきた…」葉羽は弱々しく答えた。

彼は、記憶の断片を繋ぎ合わせ、事件の真相を解き明かすための、最後の戦いに挑む準備が整った。
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