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国王陛下の許しを得て、私はゆっくりと会場の中央に進み出た。
全ての貴族たちが、固唾をのんで私を見守っている。アルフレッド殿下は、何が始まるのかと訝しげな顔をし、セラフィーナ嬢は、勝利を確信したような笑みを浮かべていた。
「皆様。本日は、この国の建国を祝う、喜ばしき日でございます。ですが、その祝宴の席を汚すことを、まずはお詫び申し上げます」
私は、深く頭を下げた。そして、顔を上げると、まっすぐにセラフィーナ嬢を見据えた。
「ですが、この国の未来のために、今、明らかにせねばならぬ偽りが、ここにございます」
「な、何を言っているの、リリアンヌ様…?」
セラフィーナ嬢が、か弱い声で呟く。まだ、悲劇のヒロインを演じるつもりのようだ。
「セラフィーナ・ミルティ様。あなた様は、ご自分のことを、心優しく、か弱い、ただ純粋に殿下を愛する乙女であると、そう仰いましたわね?」
「そ、そうですわ…! わたくしは、ただ、殿下をお慕いしているだけで…!」
「嘘をおっしゃい」
私の、氷のように冷たい一言が、彼女の言葉を遮った。
「あなたのその仮面の下にある、本当のお顔を、皆様にご覧にいれましょう」
私は懐から、一束の書類を取り出した。それは、先日ゲルトナー氏から預かった、証拠の品々だ。
「皆様、こちらをご覧ください。これは数年前、隣町で大きな毛皮商を営んでいた、ゲルトナー家の息子さんが、セラフィーナ様に書かせたという借用書でございます」
私は、その内容を朗々と読み上げた。
「『愛するセラフィーナの借金を返済するため、ここに金貨五千枚を借り受けたことを証明する』…セラフィーナ様、あなたはこのように、裕福な家の息子に取り入っては、偽りの身の上話で同情を誘い、多額の金品を騙し取っておいででしたわね?」
「なっ…! そ、そんなもの、知らないわ! 偽造よ! あなたが、わたくしを陥れるために仕組んだ罠よ!」
セラフィーナが、金切り声を上げる。
「あら、偽造ですって? ご自分の筆跡も、お忘れになりましたの?」
私は、彼女がゲルトナー家の息子に送ったという、甘い言葉が綴られた手紙の束を、ひらひらとさせて見せた。
「『あなた様だけが、わたくしの騎士様です』…まあ、アルフレッド殿下にも、同じようなことを仰っていたのではございませんこと?」
会場が、どっとどよめいた。
「なんと、詐欺師だったのか…!」
「酷い女だ…!」
「殿下、騙されておいでだったのだ…!」
アルフレッド殿下の顔が、みるみるうちに青ざめていく。
「セラフィーナ…これは、どういうことだ…?」
「ち、違います、殿下! 信じてくださいまし! これは、全部、リリアンヌ様の嘘ですわ!」
セラフィーナは、アルフレッド殿下の腕に必死に縋り付く。
だが、私は、そんな彼女に追い打ちをかけるように、冷たく言い放った。
「まだ、お認めにならないのですね。…よろしいでしょう。ならば、あなたに過去の罪を思い出させてくれる、特別な方をお呼びいたしましたわ」
全ての貴族たちが、固唾をのんで私を見守っている。アルフレッド殿下は、何が始まるのかと訝しげな顔をし、セラフィーナ嬢は、勝利を確信したような笑みを浮かべていた。
「皆様。本日は、この国の建国を祝う、喜ばしき日でございます。ですが、その祝宴の席を汚すことを、まずはお詫び申し上げます」
私は、深く頭を下げた。そして、顔を上げると、まっすぐにセラフィーナ嬢を見据えた。
「ですが、この国の未来のために、今、明らかにせねばならぬ偽りが、ここにございます」
「な、何を言っているの、リリアンヌ様…?」
セラフィーナ嬢が、か弱い声で呟く。まだ、悲劇のヒロインを演じるつもりのようだ。
「セラフィーナ・ミルティ様。あなた様は、ご自分のことを、心優しく、か弱い、ただ純粋に殿下を愛する乙女であると、そう仰いましたわね?」
「そ、そうですわ…! わたくしは、ただ、殿下をお慕いしているだけで…!」
「嘘をおっしゃい」
私の、氷のように冷たい一言が、彼女の言葉を遮った。
「あなたのその仮面の下にある、本当のお顔を、皆様にご覧にいれましょう」
私は懐から、一束の書類を取り出した。それは、先日ゲルトナー氏から預かった、証拠の品々だ。
「皆様、こちらをご覧ください。これは数年前、隣町で大きな毛皮商を営んでいた、ゲルトナー家の息子さんが、セラフィーナ様に書かせたという借用書でございます」
私は、その内容を朗々と読み上げた。
「『愛するセラフィーナの借金を返済するため、ここに金貨五千枚を借り受けたことを証明する』…セラフィーナ様、あなたはこのように、裕福な家の息子に取り入っては、偽りの身の上話で同情を誘い、多額の金品を騙し取っておいででしたわね?」
「なっ…! そ、そんなもの、知らないわ! 偽造よ! あなたが、わたくしを陥れるために仕組んだ罠よ!」
セラフィーナが、金切り声を上げる。
「あら、偽造ですって? ご自分の筆跡も、お忘れになりましたの?」
私は、彼女がゲルトナー家の息子に送ったという、甘い言葉が綴られた手紙の束を、ひらひらとさせて見せた。
「『あなた様だけが、わたくしの騎士様です』…まあ、アルフレッド殿下にも、同じようなことを仰っていたのではございませんこと?」
会場が、どっとどよめいた。
「なんと、詐欺師だったのか…!」
「酷い女だ…!」
「殿下、騙されておいでだったのだ…!」
アルフレッド殿下の顔が、みるみるうちに青ざめていく。
「セラフィーナ…これは、どういうことだ…?」
「ち、違います、殿下! 信じてくださいまし! これは、全部、リリアンヌ様の嘘ですわ!」
セラフィーナは、アルフレッド殿下の腕に必死に縋り付く。
だが、私は、そんな彼女に追い打ちをかけるように、冷たく言い放った。
「まだ、お認めにならないのですね。…よろしいでしょう。ならば、あなたに過去の罪を思い出させてくれる、特別な方をお呼びいたしましたわ」
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