〘完結〛婚約破棄ですか、ところで浮気相手はどちら様で?

桜井ことり

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全てが終わり、数週間が過ぎた。

王都は落ち着きを取り戻し、アルフレッドに代わって、彼の聡明な弟である第二王子が、新たな王太子として立つことが決まった。国は、良い方向へと向かっている。

そして、私は、クラインフェルト家の庭園で、穏やかな午後の日差しを浴びていた。

目の前には、あの日と同じように、カイが座っている。

しかし、今日の彼は、旅人の服装ではない。シルヴァーナ王国の王子として、国の紋章が刺繍された、見事な礼服に身を包んでいた。

彼は、正式な使節団を率いて、この国を訪れていたのだ。その目的は、二国間の友好をさらに深めるため。…そして、もう一つ。

「リリアンヌ」

カイが、私の名を呼ぶ。その声は、いつもより少しだけ、緊張しているように聞こえた。

「約束の、答えを聞かせてもらおうか」

私は、何も言わずに、ただ微笑んだ。

カイは、すっと立ち上がると、私の前に恭しく片膝をついた。それは、あの日、彼が私に正体を明かした時と同じ、騎士の礼。

「リリアンヌ・フォン・クラインフェルト嬢」

カイは、私の手をそっと取った。

「俺は、シルヴァーナ王国第二王子、カイ・フォン・シルヴァーナとして、そして、ただのカイという一人の男として、あなたに、心からお願いがある」

彼の紫水晶の瞳が、真剣な輝きを宿して、私をまっすぐに見つめている。

「どうか、俺の妃になってほしい。そして、俺と共に、シルヴァーナへ来てほしいんだ」

それは、公式な、そして何よりも心のこもった、求婚の言葉だった。

「俺の隣で、もう何物にも縛られず、本当のあなたとして生きてほしい。あなたの知性も、強さも、優しさも、そして、時々見せる意地悪な笑顔も、全部、俺の国は歓迎するだろう」

カイは、私の手を取り、その甲に、誓いの口づけを落とした。

「俺が、生涯をかけて、あなたを幸せにすることを誓う」

温かい日差しが、彼と私を包み込む。庭園の花々が、祝福するように、風に揺れていた。

私は、もう迷わなかった。私の心は、とうの昔に決まっていた。

「…はい」

私の唇から、喜びと共に、答えがこぼれた。

「喜んで、お受けいたしますわ、カイ様」

そして、私は、人生で一番の、最高の笑顔を浮かべた。それは、全ての苦悩から解き放たれ、愛する人と共に未来を歩むことを決めた、一人の女性の、幸せに満ちた笑顔だった。

カイは、顔を上げると、子供のように、くしゃりと笑った。

「…やっと、その笑顔が見れた」

彼はそう言うと、私を優しく抱きしめた。

私の新しい人生が、今、この場所から、始まる。
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