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リンユウの店「プルメリア」の名声が、王都で確固たるものとなりつつあったある日。
店の前に、王家の紋章を掲げた、一台の壮麗な馬車が静かに停まった。
騒然となる店の前の人々をかき分けるように、侍従らしき男が店の中に入ってくる。
「こちらに、リンユウ・プルメリア様はいらっしゃいますかな?」
突然の出来事に、店内にいたリンユウは驚きながらも、すぐさま前に進み出た。
「わたくしが、リンユウ・プルメリアでございますが」
「おお、あなたが。これは、王妃陛下からの勅令である」
侍従は、恭しく巻物をリンユウに差し出した。
『王妃陛下からの勅令』。
その言葉に、店内にいた客も従業員も、息を呑んだ。
リンユウは、震える手で巻物を受け取り、ゆっくりとそれを開く。
『其方の作る商品、評判はかねてより聞き及んでいる。よって、プルメリアの品々を王宮へ献上することを命ずる』
簡潔な文章だったが、その意味は計り知れないほど重い。
王妃陛下が、リンユウの商品に興味を持たれたのだ。
「……謹んで、お受けいたします」
リンユウは、深く頭を下げた。
心臓が、早鐘のように打っている。
これは、事業を始めた時には夢にも思わなかった、最高の名誉だった。
このニュースは、瞬く間に王都中を駆け巡った。
エルミロード大公妃のお墨付きだけでも大変なことだったのに、今度は王妃陛下ご自身からのお声がかり。
一介の子爵令嬢が興した店としては、まさに前代未聞の快挙だった。
リンユウは、その日から工房に泊まり込む勢いで、献上品の準備に取り掛かった。
最高の材料を使い、最高の技術で、一点の曇りもない完璧な品を作り上げる。
それは、プレッシャーとの戦いでもあったが、リンユウの表情は充実感に満ち溢れていた。
彼女の情熱は従業員たちにも伝わり、店全体が、かつてないほどの熱気に包まれた。
そして、約束の日。
リンユウは、美しく包装された献上品を携え、王宮へと向かった。
案内された謁見の間で、初めて間近に見る王妃陛下は、噂に違わぬ気品と威厳に満ちた女性だった。
「あなたが、リンユウ・プルメリアですか」
「は。この度はお召しいただき、光栄の至りに存じます」
「顔を上げなさい。エルミロード大公妃から、あなたのことはよく聞いています。素晴らしい才覚を持った女性だと」
王妃は、穏やかな笑みを浮かべている。
リンユウは、献上品の保湿クリームや香油、ジャムなどを一つ一つ、丁寧に説明した。
王妃は、興味深そうにそれに耳を傾け、実際に香りを試したりもした。
「……見事なものですね」
一通り説明が終わると、王妃は満足げに頷いた。
「品質もさることながら、作り手であるあなたの、商品への愛情が伝わってきます。これほどの品が、王都の片隅に埋もれているのは惜しい」
王妃は、側近に目配せをした。
側近が、リンユウの前に一つの木箱を差し出す。
「これを、あなたに授けましょう」
リンユウがおそるおそる蓋を開けると、中には、王家の紋章が刻まれた、美しい木製の看板が入っていた。
「それは、王家御用達の証。あなたの店に、それを掲げることを許可します」
「……!」
王家御用達。
商人にとって、これ以上の名誉はない。
リンユウは、言葉を失い、ただただ深く頭を下げることしかできなかった。
「これからも、その情熱を忘れず、良い品を作り続けてください。期待していますよ」
王妃からの、温かい励ましの言葉。
リンユウは、涙が溢れそうになるのを、必死でこらえた。
この日をもって、リンユウの店「プルメリア」は、王家御用達の看板を掲げることになった。
その名声は、もはや誰も揺るがすことのできない、絶対的なものとなったのだ。
リンユウ・プルメリアの名は、単なる美しい令嬢としてではなく、国を代表する事業家の一人として、歴史に刻まれることになったのである。
店の前に、王家の紋章を掲げた、一台の壮麗な馬車が静かに停まった。
騒然となる店の前の人々をかき分けるように、侍従らしき男が店の中に入ってくる。
「こちらに、リンユウ・プルメリア様はいらっしゃいますかな?」
突然の出来事に、店内にいたリンユウは驚きながらも、すぐさま前に進み出た。
「わたくしが、リンユウ・プルメリアでございますが」
「おお、あなたが。これは、王妃陛下からの勅令である」
侍従は、恭しく巻物をリンユウに差し出した。
『王妃陛下からの勅令』。
その言葉に、店内にいた客も従業員も、息を呑んだ。
リンユウは、震える手で巻物を受け取り、ゆっくりとそれを開く。
『其方の作る商品、評判はかねてより聞き及んでいる。よって、プルメリアの品々を王宮へ献上することを命ずる』
簡潔な文章だったが、その意味は計り知れないほど重い。
王妃陛下が、リンユウの商品に興味を持たれたのだ。
「……謹んで、お受けいたします」
リンユウは、深く頭を下げた。
心臓が、早鐘のように打っている。
これは、事業を始めた時には夢にも思わなかった、最高の名誉だった。
このニュースは、瞬く間に王都中を駆け巡った。
エルミロード大公妃のお墨付きだけでも大変なことだったのに、今度は王妃陛下ご自身からのお声がかり。
一介の子爵令嬢が興した店としては、まさに前代未聞の快挙だった。
リンユウは、その日から工房に泊まり込む勢いで、献上品の準備に取り掛かった。
最高の材料を使い、最高の技術で、一点の曇りもない完璧な品を作り上げる。
それは、プレッシャーとの戦いでもあったが、リンユウの表情は充実感に満ち溢れていた。
彼女の情熱は従業員たちにも伝わり、店全体が、かつてないほどの熱気に包まれた。
そして、約束の日。
リンユウは、美しく包装された献上品を携え、王宮へと向かった。
案内された謁見の間で、初めて間近に見る王妃陛下は、噂に違わぬ気品と威厳に満ちた女性だった。
「あなたが、リンユウ・プルメリアですか」
「は。この度はお召しいただき、光栄の至りに存じます」
「顔を上げなさい。エルミロード大公妃から、あなたのことはよく聞いています。素晴らしい才覚を持った女性だと」
王妃は、穏やかな笑みを浮かべている。
リンユウは、献上品の保湿クリームや香油、ジャムなどを一つ一つ、丁寧に説明した。
王妃は、興味深そうにそれに耳を傾け、実際に香りを試したりもした。
「……見事なものですね」
一通り説明が終わると、王妃は満足げに頷いた。
「品質もさることながら、作り手であるあなたの、商品への愛情が伝わってきます。これほどの品が、王都の片隅に埋もれているのは惜しい」
王妃は、側近に目配せをした。
側近が、リンユウの前に一つの木箱を差し出す。
「これを、あなたに授けましょう」
リンユウがおそるおそる蓋を開けると、中には、王家の紋章が刻まれた、美しい木製の看板が入っていた。
「それは、王家御用達の証。あなたの店に、それを掲げることを許可します」
「……!」
王家御用達。
商人にとって、これ以上の名誉はない。
リンユウは、言葉を失い、ただただ深く頭を下げることしかできなかった。
「これからも、その情熱を忘れず、良い品を作り続けてください。期待していますよ」
王妃からの、温かい励ましの言葉。
リンユウは、涙が溢れそうになるのを、必死でこらえた。
この日をもって、リンユウの店「プルメリア」は、王家御用達の看板を掲げることになった。
その名声は、もはや誰も揺るがすことのできない、絶対的なものとなったのだ。
リンユウ・プルメリアの名は、単なる美しい令嬢としてではなく、国を代表する事業家の一人として、歴史に刻まれることになったのである。
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