追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第3話 「世界最強級です」いやいや、何の冗談だ?

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辺境の町ウォルズは、想像以上に活気があった。  
街門をくぐった瞬間、エイルは思わず感嘆の声を漏らした。  
「へぇ……賑やかだな。もっと寂れた町かと思ってた」  

夕暮れの光を受けて、石造りの建物がオレンジ色に染まっている。人々の笑い声、荷車の軋む音、どこか油とパンの香ばしい匂い。  
辺境とはいえ、人の営みが確かにここにあった。  

商人のハルマンが朗らかに笑った。  
「この町は魔物素材の集積地ですからな! 帝都の商人も買い付けに来ることがあるんですよ。市場は活気づいておる」  

「なるほど……」エイルは頷きながら街並みを見渡した。  
馬車が広場に入り、停車する。荷下ろしを手伝いながら、彼はふと目を止めた。  
広場の中心に、立派な建物がある。石造りの二階建てで、屋根には十字の紋章。看板には“冒険者ギルド・ウォルズ支部”と刻まれていた。  

「ギルドか……」  
かつて、勇者パーティに所属していた頃、何度か訪れたことがある。だが今は、ただの一人旅の魔導士。登録し直す必要があるだろう。  

荷物をまとめ、ハルマンに礼を言って別れる。  
「良ければ、今後とも取引お願いしたいくらいですが……」という誘いを丁重に断り、エイルはギルドの扉を押した。

――ギィ、と重厚な音がした。  

中は人でいっぱいだった。  
テーブル席には酒を飲み交わす冒険者たちが並び、クエストボードには依頼書がぎっしり。ざわめきと笑いが交錯する、混沌とした雰囲気。  
一瞬にして懐かしさがこみ上げた。こういう喧騒が嫌いではない。  

カウンターに近づくと、受付嬢が笑顔で声を掛けてきた。  
「ようこそ、ウォルズ支部へ! ご用件をどうぞ!」  
明るい声の女性だ。茶色の髪をきっちりと束ね、制服姿がよく似合っている。  

「登録をお願いしたいんですが。冒険者として、しばらく滞在するつもりなので」  
「はい、かしこまりました! お名前をお伺いできますか?」  
「エイルです」  

彼女が小さな水晶球を取り出した。  
「では、手をこちらに。冒険者登録には簡易鑑定を行います。魔力の傾向などを判断するためです」  

(また鑑定か……)  
少し気が重いものを感じつつも、エイルはおとなしく手を水晶に置いた。  
光が灯り、淡い波紋が広がる。  

受付嬢の笑顔が止まった。  
「……え?」  
顔が強張る。手元の水晶にひびが入り、そこからピシピシと音を立てた。瞬く間に亀裂が走り――  

ボンッ!  

小さな爆発音と共に、水晶が粉々に砕けた。  
「……は?」とエイル。  
「ひ、ひぃっ!?な、なにこれっ!?」と受付嬢。  
ギルドの中が一斉にざわめき出した。  

「おい今の音何だ?!」  
「また新人が魔法暴発させたのか!?」  

職員が駆けつける。その中で、一人の女性が姿を現した。  
銀の髪、知的な眼鏡、冷静な視線。明らかに立場の高い人物。  
彼女は一瞬で場を掌握し、受付嬢に問いただした。  
「状況を報告しなさい」  
「い、いえその、登録中に、魔力反応が強すぎて水晶が……っ!」  
「反応を……強すぎて……?」銀髪の女性は眉をひそめ、エイルに視線を向けた。  

「あなたね?」  
「え、あ……はい。すみません、壊してしまったみたいで」  
「謝る必要はありません。問題は……水晶が壊れるほどの出力をどう説明するか、です」  

受付嬢の一人が怯えたように言った。  
「ギルド長、あれは……“測定不能級”の反応でした。先日のドラゴン討伐の記録と同じレベルです」  

「測定不能級……?」エイルはぽかんとした。  
「な、何の話をしてるんです?」  
「通常の魔力量計測では上限を超えたということ。つまり、あなたの魔力出力は……この町どころか、この国の冒険者ランキングでも最上位に相当するということです」  

「はっ!?」  
思わず変な声が出た。  
それはあまりに荒唐無稽だった。  
「いやいや!俺は本当に凡人ですよ!魔法学院でも平均点でしたし、勇者パーティでは後方支援しかできなかったんですって!」  

職員たちは顔を見合わせ、目を泳がせる。  
ギルド長の女性――名札には「イルゼ・ヴァン」とあった――は、じっと彼を見据えた。  
「凡人が、登録用の魔力水晶を粉砕する例はありません」  
「たまたま……何かの不具合かも」  
「“不具合”が一度で済むならいいけれど。あなた、最近不思議な現象に遭遇していませんか?」  

脳裏に浮かぶ。昨夜、山賊団を一撃で沈めた光景。  
まさか、あれも「不具合」では済まないのか。  

「……たしかに、少し、魔力の流れがおかしい気はしますけど」  
「ふむ。あなたの状況、正式な鑑定で確認しましょう。上位鑑定士を呼びます」  

「え、また鑑定!? いや、昨日したばっかりなんですけど……」  
エイルの顔が引きつる。しかしもう遅い。職員が奥の部屋に走り、ほどなくして見知った顔が現れた。

「やっぱり……あなただったんですね、エイル」  

紫のローブをまとった女性――セリアだった。  
昨日、交易所で出会った鑑定士。彼女は微笑みながら歩み寄った。  
「驚きました。まさかあなたが、ギルド登録に来ていたなんて」  
イルゼが問う。「知り合いですか?」  
「はい、昨日、彼のステータスを鑑定しました。その結果……」  
彼女は一呼吸おいて言った。  
「『世界最強級』の魔導士でした」  

ギルド内の空気が凍りついた。  
ざわめきすら止まり、数秒の沈黙が流れる。次に訪れたのは、混乱だった。  

「世界最強級!?」「嘘だろ、そんな新人が?!」  
「たぶん見間違いだ!」「いや、セリアの鑑定は絶対だぞ!」  

一瞬にして噂が広がる。  
エイルは顔を真っ青にして手を振った。  
「ちょ、ちょっと待って!言い過ぎですって!俺、弱いですから!」  

セリアは穏やかに首を振った。  
「謙遜ではなく、本気でそう言っているのですね。……なら、説明がつきました。あなたの力は、“無自覚型”。自身の限界を知らないことで、魔力制御が常に抑制されているんです」  
「つまり?」  
「気づかないうちに、世界を修正するほどの魔法を使ってしまうということです」  

「…………」  
エイルは乾いた笑いを漏らした。  
「はは……そんなバカな。俺、ただ登録したかっただけなのに……」  

イルゼが頷いた。  
「ともあれ、あなたを特別登録扱いとします。ランクは一時的にSS暫定。詳細な検査の後、正式階級を確定します」  
「SS!?俺、Fでいいんですけど!」  

職員たちの視線が熱い。半分は畏怖、半分は興味。中には尊敬の色さえ混じっている。  
そんな雰囲気に居心地が悪くなり、エイルは立ち上がった。  

「わ、わかりました。登録のことは後で確認させてください。今日は宿探しもあるので」  
「了解しました。ですが、くれぐれも――無闇に魔法を使わないように」イルゼが釘をさすように言葉を続けた。  
「あなたの“偶然”は、世界にとって事件ですから」  

外に出ると、夜の帳が町を包んでいた。  
屋台の灯り、酒場の喧騒、遠くで子供たちの笑い声。  
そのすべてが、平穏そのものに見える。  

(……偶然で世界最強、ね。冗談のつもりだったのに)  
エイルは苦笑いを漏らし、夜空を見上げた。無数の星が輝いている。  

だが、彼の知らぬところで、既にその名――“無名の最強魔導士”――はギルドの通信網を通じて、各地へと急速に広まり始めていた。

続く
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