追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第5話 一撃でダンジョン崩壊、なぜかギルドがざわついている

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翌朝。  
ウォルズの町は、いつになく騒がしかった。  
露店の主人たちが噂話を交わし、冒険者たちが早朝からギルドへ詰めかけている。  
「昨日の爆発、やっぱりベイル洞窟だったらしいぞ」「災厄級ドラゴンが沈黙したって?」「誰が倒したんだ?」  
そんな声がそこかしこで飛び交っていた。

当の本人――エイルは、いつものようにのんびりと宿屋の朝食を食べていた。  
パンとスープ、卵焼きとハム少々。辺境の町にしては上出来の味だ。  
「うーん、静かでいいなあ……昨日の運動でちょっと筋肉痛だけど」  
まったく緊張感の欠片もない。  

食後に軽く伸びをして、冒険者ギルドへ向かう。  
外へ出ると、町の人々の視線が妙に熱い。  
「もしかしてあの人が?」「いや、見た目は普通だぞ」「むしろ地味じゃね?」  
耳を塞ぎたい衝動に駆られながら、エイルは早足でギルドの扉を押した。  

扉を開けた瞬間、全員の視線が一斉にこちらへ向く。  
場の空気が止まった。  
「……お、おはようございます」  
気まずそうに挨拶すると、周囲が一拍遅れてざわつき出した。  
「うわ、本物だ……」「まさか生きて帰ってきたとは……」  
「見た目ふつーなのに災厄級ぶっとばしたとか……」  

何が何だかわからないまま、エイルはカウンターに向かった。  
受付嬢のリタが顔を引きつらせながら出迎える。  
「お、おはようございますエイルさん! 本日も依頼を……?」  
「いや、昨日の報酬を受け取りに。光苔のやつ」  
「あ、は、はい! こちらになります!」  

リタは慌ただしく書類を確認し、小袋を差し出した。  
銀貨数枚と追加の金貨一枚。  
「ん? 報酬、増えてません?」  
「べ、別途“特別危険区域の魔物討伐手当”として支給されました! ギルド長命令です!」  
「なるほど、気が利いてるな」とエイルは素直に感心し、財布にしまう。

その時、ギルドの奥から聞き慣れた声が響いた。  
「来ていたのね、エイル君」  
姿を現したのは銀髪のギルド長イルゼだった。  
相変わらず背筋の通った女性で、眼鏡越しの視線に威圧感がある。  
ただ今日は少し顔色が悪い。きっと、昨夜寝ていないのだろう。  

イルゼはカウンターの脇まで歩むと、ため息をついた。  
「……報告書に“誤記”がないか確認したけど、やはり事実のようね」  
「報告書?」  
「ええ。あなた、昨日“薬草採取中に誤って災厄級ドラゴンを討伐”と書いてあるけれど、念のため確認するわ。事実、なのね?」  
「うん、まぁ。偶然だけどね」  
「やっぱり事実なの……」  

イルゼは額を押さえた。  
周囲の職員たちがヒソヒソと話す声が聞こえてくる。  
「一撃で消し飛ばしたらしい」「ダンジョンごとだとか」「ベイル洞窟が崩落したそうだ」  

「え、崩落?」  
エイルが眉を上げると、イルゼが目を細めた。  
「ええ、あなたが帰った後に現地調査が行われたわ。洞窟構造の半分以上が消滅していた。爆裂痕も残っていたけれど、内部の魔力濃度はゼロ。完全に“焼き切れて”いたそうよ」  
「……へぇ」  
エイルは小さく相槌を打った。  
「まあ、でも洞窟の出口が勝手に開いたから助かりましたよ。むしろ便利だったなぁ」  
「便利……?」  
イルゼのこめかみがぴくりと動いた。  

リタが横から慌てて口を挟む。  
「え、えっと! 被害は最低限ですし! た、多分みんな助かってます!」  
「そういう問題ではありません!」  
イルゼがピシャリと言い返し、深いため息をついた。  
「あなた、他国に知られたらどうなると思う? “災厄級魔物を一人で討伐した異常個体”として追跡されるのよ」  

エイルは肩をすくめる。  
「そんな大げさな。俺、すぐ疲れるし。昨日も眠くて途中で帰ったくらいですよ」  
「……世界は、あなたの“眠い”に付き合っていられないのよ」  

横で様子を見ていたセリアが歩み出てきた。  
彼女はいつもの紫のローブを纏い、冷静な声音で言った。  
「イルゼ、責めても仕方ありませんよ。彼の力は制御できる域を超えています。本人が悪いわけではありません」  
エイルは思わず頷く。  
「そうそう、セリアさん分かってる」  
「でも、あなたはもう少し自覚を持ったほうがいいです」  
「う……」  

セリアが杖の先で床を軽く叩く。  
「災厄級討伐者なんて、国家公認英雄どころの話じゃありません。彼の魔力波を観測した魔術学院本部からも、照会の魔信が届いています」  
「魔術学院……って、俺の母校じゃないですか。あそこ、まだ俺を落ちこぼれ扱いしてるはずですけど」  
「その落ちこぼれが国防級になったので、驚いてるのでしょうね」  

ギルド内がざわめく。  
「国防級……って、聞いたことないぞ」「それって国家出動レベルじゃ……」  
「SSランクどころか、もはや災厄ランクだな……」

エイルは頭を抱えた。  
「もうほんと勘弁してよ……。俺はただ平和に生きたいだけなのに」  
イルゼは苦笑を浮かべた。  
「だからこそ、このウォルズでしばらく潜伏しなさい。私たちができる限りのことはするわ」  

そう言ってから、彼女は真顔に戻り、低い声で続けた。  
「ただし――もし次に何か起こしたら、もう辺境では隠せない。覚悟はしておきなさい」  
「うん……気をつけます」  

そのときだった。カウンターの奥の通信魔導具が急に光りだした。  
職員の一人が慌てて取り次ぐと、イルゼの顔色がみるみる変わる。  
「……何? 本当なの? ――わかった、対応はこっちで取る」  
通信を切ると、静かに全員に向き直った。  
「帝国の東部守備隊が、ベイル洞窟跡に異常反応を検知したそうよ」  
「異常反応……?」  
「どうやら、災厄級ドラゴン――ヴルム・カタストロフの核が、まだ動いているらしいわ」  

ギルド中に緊張が走った。  
「核……?」「じゃあ倒してなかったのか!?」  
エイルは思わず眉をひそめる。  
「核って、心臓みたいなもんですか?」  
「いいえ、魂そのものです。災厄級は核を破壊しない限り、再生します」  
セリアが淡々と説明する。  
「しかも、あなたの魔力を浴びたことで、変異する可能性があります」  
「うわ、面倒くさ……」  
「今さら“面倒”で済む話ではありません!」イルゼがついに声を荒げた。  

場が沈黙する。  
だが数秒後、エイルは苦笑して立ち上がった。  
「わかりました。さっさと片づけてきます。今度こそ、ちゃんと燃やしますから」  
「ま、待ちなさい! 準備もせずに行く気!?」  
「焼くだけですし」  
イルゼは顔を覆った。  
セリアは肩をすくめる。  
「……彼がそう言うなら止めても無駄ですよ。あれが彼の日常ですから」  

エイルは軽く手を振り、ギルドを出た。  
外の空は澄み渡り、森の方角に黒い煙がうっすら立ちのぼっているのが見える。  
「まだ残ってたか……まぁ、行くか」  

杖を片手に、風を巻き起こす。  
彼の足元から淡い光が走り、次の瞬間、その姿は空へと消えた。  

――数十分後。  

再びウォルズの町上空で陽光が弾けた。  
まるで彗星のような閃光が森を貫き、その先の地平線まで光の柱が伸びる。  
轟音と共に衝撃波が走り、ガラス窓が震えた。  

ギルドの屋上でそれを見ていたイルゼは、呆然と呟いた。  
「……終わったのね、きっと」  
セリアが隣で小さく笑う。  
「ええ、また世界の均衡を修正しただけですよ。たぶん彼の無意識がそうさせたんです」  

しばらくして、静かになった空に小さな影が舞い戻ってくる。  
エイルだ。額に少し煤をつけたまま、手をひらひらと振っていた。  

「灰にしました。たぶん、もう再生しません」  
「“たぶん”って言わないでちょうだい……」  
イルゼの溜息は、もはや疲労を超えて諦めに近かった。  

だが、その出来事の翌日。  
帝都からは緊急の連絡が届く。  
“辺境に神罰級の閃光が確認された。原因を調査せよ”  
そう記された文に、イルゼはただ天を仰いだ。  

エイル本人はというと、その頃パン屋でおやつのクロワッサンを買い、「うまいなぁ」と満足げにほおばっていたという。  

続く
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