追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第13話 元仲間たちの動揺と、気づかない俺の規格外さ

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王都・セレスティアの朝は、いつもより静かだった。  
夜明けとともに鐘が鳴り響くが、その音はどこか重たく響く。  
前夜――エイルが魔王軍を一瞬で蹴散らした、という報せは、もうすでに街中どころか貴族街まで届いていた。  

「“白衣の魔導士”、魔王軍を一撃で殲滅!?」「災厄の後継者ゼルアーク、行方不明!」  
朝刊の見出しが並ぶたび、エイル本人は机に突っ伏してうなっていた。  

「やっぱりこうなるのか……俺、静かに暮らしたいだけなのに」  
ベッドの上で、リュナが尻尾をゆるく揺らして笑う。  
「無理だよ。あんな派手なことしたら。“一撃で魔王軍消滅”なんて、聞いた人が信じなくても語り草になるよ」  
「語ってる本人が一番信じてないけどな……」  
「ねえ、気づいてる? あなたの“加減した魔法”って、周囲の地形を変えるレベルなのよ」  
「嘘でしょ?」  
「本気で言ってるから怖いのよ!」  

ため息をつくエイルを横目に、部屋の扉がノックされた。  
イルゼが入ってくる。今日は完全に仕事モードだ。  
「……おはよう。どうやら昨夜の件で、議会がざわついているわ」  
「ですよね……まさかバレないとは思ってませんでしたけど」  
「もはやバレるとかいう次元じゃないの。貴族院ではあなたを“神格指定”するか、“封印対象”とすべきか議論してるそうよ」  
「封印対象!? なんで!?」  
「国にとって、“制御できない力”は恐怖そのもの。あなたが本気で怒れば国がひとつ消えると考えているのよ」  

エイルは小さく肩を竦めた。  
「いやあ……誤解だって伝えてください。“怒ったら少し眩しい光が出るだけ”って」  
「その光で山が吹き飛ぶから問題なのよ」  
「ちょっとした地形調整でしょ」  
「それを“調整”という人間がどこにいるの!」  

イルゼが頭を抱えるのを、リュナがくすくす笑いながら眺める。  
「でもね、ギルド内ではむしろ人気者よ? “世界を護る無自覚英雄”とか、“寝坊助の救世主”とか」  
「どっちも気恥ずかしい……」  

そんな会話が続くなか、重い扉が再び開いた。  
そこに現れたのは、包帯に巻かれた勇者レオナードと、付き添う僧侶ミリアだった。  

「エイル……」  
その声音に、エイルは少し驚いて立ち上がった。  
「レオナード……生きてたか。よかった」  
勇者は俯きながら答える。  
「あの時……お前は、俺を、助けたのか」  
「うん。あのままだと魔王に完全に喰われてた」  
「なぜ……見捨てなかった。俺はお前を追放したのに」  

エイルは少し考え、そして微笑した。  
「理由なんてないよ。昔、仲間だったから。それだけ」  

その無邪気な言葉が、レオナードの胸に痛烈に響いた。  
彼の拳が震える。  
「……俺は、焦っていたんだ。お前の力が羨ましかった。凡人だと思っていたのに、実際には俺より遥かに強い。  
英雄の座を奪われるのが怖かったんだ」  

「気にすんな。ほら、結果的に生きてるんだし」  
「お前は……何者なんだ」  
「さあ? ただの凡人だよ」  
エイルはあっさりと笑って答えた。その笑顔が、レオナードにとっては何よりも恐ろしく見えた。  

ミリアがそっと手を伸ばす。  
「レオナード、もう十分よ。エイルを責める資格なんて、私たちにはない」  
「……わかっている。だが、彼は本当に人間なのか?」  

イルゼが咳払いをして話題を転じた。  
「あなたたちには療養が必要。政治的な問題はこっちで処理しておく。とりあえず、魔王軍は壊滅した。でも新たな動きがある」  
「また?」  
「ええ。ゼルアークの残党が東の砂漠地帯に集結中。どうやら“災厄の核”の残骸を再利用しようとしている」  
「……また行くのか、エイル」  
ミリアが不安そうに見上げる。  
「うん。これ放っとくとめんどくさいことになる」  
「あなた、本当に休む気ある?」  
リュナの突っ込みにも、エイルは苦笑するだけだった。  

その夜、彼はギルドの屋上に立っていた。  
星が冴え冴えと輝いている。  
風が頬を撫で、背中のローブを揺らす。  
下を見れば、闇に沈む街の灯。そこに人の営みが確かにあった。  

「世界って、綺麗だよな」  
「……そうね」  
背後から、ミリアの声。  
彼女はまだ完全に回復していない身体で、屋上まで来ていた。  
「もう、無茶ばっかりするんだから」  
「お互い様だろ。俺がいなかったら、あの勇者、文字通り闇堕ちだったよ」  
ミリアが笑った。  
「ほんと、あなたは変わらないわね……昔から誰かのためにしか生きられない」  
「それが俺の悪い癖」  

沈黙が落ちる。  

ミリアは空を見上げながら、ぽつりと呟いた。  
「ねぇ、エイル。あなたが“凡人”じゃないって、皆分かってるわ」  
「……ああ、自分では気づいてないんだろうけどね」  
「気づいてる。でも、気づかないふりをしてるだけ。人の形を保つために」  
エイルは少しだけ目を細めた。  
「……そうかもしれないな」  

それでも彼の笑みは柔らかかった。  
まるで、凡人のように。  

翌朝。  
王宮前の広場には信じられない数の人々が集まっていた。  
彼らは皆、ひとりの男を見送るために集まっている。  
“世界最強の魔導士エイル”が、再び前線へ向かう――そう噂が広まっていたのだ。  

本人は嫌そうに門の影で頭を掻いていた。  
「……なんで見送りされてんだ俺」  
「そりゃあ英雄だから」  
「英雄やめたいんだけど」  
「もう無理。あなた、すでに“時代”になってるから」  

イルゼとリュナの言葉に、エイルは深くため息をついた。  
「ほんと、世界って気まぐれだな」  
「気まぐれに愛されるのも才能ですよ?」  
イルゼが微笑む。  
「じゃ、ちょっと行ってくる」  

見送りの歓声が響くなか、エイルは杖を掲げた。  
そして軽く指を鳴らすと、風が巻き上がり、次の瞬間には姿が消えていた。  

その光景を見上げながら、ミリアは小さく呟いた。  
「凡人、ね……。そんな言葉、もう誰も信じていないわ」  

空は高く青い。  
その青の果てで、ひとりの“凡人”は今日も世界を救いに行く。  
本人だけが、まだそれに気づかぬまま。  

続く
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