追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第15話 勇者へのささやかな仕返しと、ざまぁの序章

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聖都ヴァルティナでの戦闘から数日が経った。  
街は奇跡と呼ばれた浄化の光に包まれ、すっかり平穏を取り戻していた。  
だが、その中心で人々に「新たな救世主」と祭り上げられている本人、エイルはというと――。

「……ねぇリュナ。俺たち、いつから露店の的屋扱いになったんだろう」  
聖都の中央広場。  
祭りの真っ只中、エイルは布屋根の下で子供たちに魔法制御の遊びを見せていた。  
彼の掌に浮かぶ光の球が、ちいさく跳ねて炎や風の形に変わる。  
「わーっ! すごい! もう一回!」  
笑顔の子供たちの歓声に包まれながら、エイルは苦笑を浮かべた。  
「英雄がやる仕事じゃないよなぁ」  
「あなたが“休んでろ”って言われても勝手に働くからでしょ」  
隣でリュナが尻尾を揺らす。  
「でも……あの戦いの後、みんなあなたに感謝してる。ああやって笑顔にしてるなら、立派な仕事だよ」  

そんな穏やかな時間の中、聖堂の鐘が鳴った。  
振り向くと、純白の馬車が通りを進んでくる。  
紋章は王都のもの。  
リュナが眉をひそめた。  
「また厄介なのが来たね」  
「うん、嫌な予感しかしない」  

馬車が止まり、従者が恭しく扉を開ける。  
中から現れたのは、きっちりと制服を着こなした王国使節団。  
その中央で、どこか見覚えのある顔があった。  

「…レオナード」  
エイルの呟きに、リュナが耳を動かす。  
勇者レオナードは依然として包帯姿だったが、服装は立派な式服に変わっていた。  
彼の背後には、眩しいくらいに契約装飾を施された聖剣“アークブレイド”が背負われている。  
一見立ち直った風だが、目の奥には焦燥が浮かんでいた。  

「エイル、いや、“白の賢者”。王の名のもとに、お前を呼びに来た」  
使節団が周囲に告げにかかるが、当の本人は露骨に顔をしかめた。  
「あー……なんかそれ、聞く前から嫌な話じゃない?」  
「お前は、聖都で神の奇跡を起こした。今や民の信仰の対象にさえなっている。  
だが――王はそれを危険視しておられる」  

リュナが尻尾をぴたりと止める。  
「……やっぱり。“危険”の二文字が出た」  
「王都には戻らんよ」エイルは即答した。  
「俺はただの旅人。もう王や貴族の手下になる気はない」  
レオナードは苦い顔で唇を噛む。  
「分かっている。しかしこれは命令だ。  
……もし拒めば、“不敬罪”として処分を検討するとの報告もあった」  

広場のざわめきが止まる。  
人々の視線が二人に刺さる中、リュナが一歩前に出た。  
「処分? この男を? 王国は本気で言ってるの?」  
「……命令だ」  
レオナードはその言葉を絞り出すように繰り返した。  
もはや彼自身の意思ではないことが見て取れた。  

エイルはしばらく沈黙し、やがて肩をすくめた。  
「じゃあ、こうしよう」  
「何を……?」  
「“呼び出し”が命令なら、俺が“お伺い”する。王都ごとね」  

リュナが蒼ざめる。  
「ちょっ……待って、そういう意味で言ってないよね!?」  
「手っ取り早い方法だろ?」  
軽く指を鳴らす。  
その瞬間、空気が変わった。  

雲一つない青空が割れ、聖都を中心に光の柱が立ち上る。  
地図上で数百キロも離れた王都セレスティアの上空に、同じ光の反応が展開した。  

「……これで“王の間”とリンク。話ならすぐにできる」  
呆然とするリュナと使節団を尻目に、エイルは軽く手を振った。  

光の中に王宮の大広間の映像が映し出される。  
王をはじめ、老臣や貴族たちが突如現れた閃光に悲鳴を上げていた。  
「ひっ……な、なにが起こった!?」  
「幻術ではない! 空間魔法だ!」  

エイルは笑顔で手を挙げた。  
「こんにちはー、王様。聞こえます? あ、映像届いてますね。あの、ちょっとお話しません?」  
ざわめきが止まる。  
「貴様……! 何者だ!」  
「いやいや、“白の賢者”って噂の奴です。王が呼んだとかで、いま聖都から遠隔で繋いでるんですけど」  

沈黙のあと、王が口を開いた。  
「……貴様が、エイル・シェルドか」  
「はい、凡人です」  
「貴様が持つ力はすでに危険域だ。王国に従わぬなら、王命をもって――」  

言葉の途中で、音が止まった。  
光がゆらめき、次の瞬間、王座の真横の壁に巨大な文字が刻まれる。  
『静かに話そう byエイル』  
魔力跡からは、何の攻撃痕もない。まるで自然に文字が浮かんだようだった。  

王と臣下たちは凍りついた。  
エイルは困ったように笑う。  
「威嚇でも攻撃でもありません。ただ、話が早く進むと思って」  
「――貴様、何をした!」  
激昂する大臣をよそに、エイルは淡々と指を鳴らす。  
すると王座の間いっぱいに、圧倒的な魔力が充満した。  
空間そのものが震え、王宮の外壁が音を立てる。  

「これ、制御限界の百分の一です。  
俺は王の命令に逆らう気はない。ただ、“協力”の形にしてほしいんですよ。  
脅しじゃなくて、もう少し建設的な関係にしたいだけ」  

王の顔が蒼白になる。  
貴族たちは次々と跪いた。  
映像越しに見ていたレオナードですら、背筋を凍らせていた。  
「本当に……人間なのか、こいつは……」  

やがて王は小さく頷く。  
「……分かった。命令ではなく、お願いとしよう。英雄エイル・シェルド殿。王国の守護を頼みたい」  
映像が消える。  
エイルはため息をついて肩を回した。  
「あー、緊張した。やっぱり王様と直接話すのって疲れるね」  
「いや、今のを“話した”とは言わないから!!」  
リュナが頭を抱える。周囲の兵士たちも地面にひれ伏したまま、震えていた。  

しばらくの沈黙の後、レオナードが歩み寄る。  
「……やはり、勝てる気がしないな」  
「勝負する予定もないけど?」  
「いや、これは自分への戒めだ。俺たちは、お前という存在の尊さを理解できなかった。その愚かさを、思い知らされた」  

レオナードはその場で頭を下げた。  
「すまなかった。俺は――勇者としての慢心に取り憑かれていた」  
エイルはその姿を見下ろし、小さく笑った。  
「もういいよ。俺はそんなに根に持つ性格じゃないし」  
「だが、せめて償いを――」  
「じゃあ、あの王都の役人たちを少し働かせてくれ。  
困ってる人に、ちゃんと支援が行き届くように。それで十分」  

軽い調子ながら、その言葉には不思議な重みがあった。  
レオナードは目を伏せた。  
「……了解した。勇者としてではなく、ひとりの人間として、それを約束しよう」  

一連の騒動が収まったあと。  
リュナがぽつりと言う。  
「今の、ちょっと“ざまぁ”って感じだったね」  
「そんなつもりなかったけどな……でも、まぁ少しスッキリしたかも」  
「やっぱり、あなた怖い人だわ」  
「褒め言葉?」  
「違うよ」  

その日の夜。  
エイルは聖都の宿に戻り、ベランダで星空を見上げて呟いた。  
「力を見せびらかすのは嫌いなのに……結局、繰り返してるな」  
その声を聞きつけて、ミリアが登ってくる。  
「人はね、神の力よりも、“信じられる誰か”を探すものなの。あなたはきっと、それを背負わされてるだけだと思う」  
「荷が重いな」  
「でも、あなたはそれを軽々と笑って持てるから、皆、惹かれるんでしょうね」  

彼女の微笑みに、エイルは照れくさそうに頭を掻いた。  
「惹かれられても、俺モテるの苦手なんだよなぁ」  
「言ってて殺意湧く発言ね、それ」  
リュナが背後から睨みながら、二人に追加の茶を置いていく。  

静かな夜。聖都の鐘が遠くで鳴る。  
誰かの笑い声に混じって、エイルの低い呟きが消えていった。  

「俺ってほんと、凡人じゃなくなってきたな……」  

続く
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