追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第16話 王都護衛依頼と、王女セレスの護衛任務

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王都からの正式な感謝状が届いたのは、聖都離脱の翌朝のことだった。  
封蝋には金と紺の二色が使われており、「王家直筆」と記された印章がある。  
エイルはそれを袋にしまいながら、ため息をついた。  

「……こういうの、重いんだよな」  
横でパンを頬張っていたリュナが、口の端にパン屑をつけたまま首を傾げる。  
「感謝されてるのに、なんでそんなに嫌そうなの?」  
「期待が増えるってことだよ。そうなると“英雄様、次もお願いします!”の流れが来る」  
「……つまり、また仕事が来るって顔?」  
「うん。悪い予感ってやつ」  

エイルの予感は外れたことがない。  
数刻後、早々にギルドに王都からの使者が現れた。  
青い制服の士官が深々と頭を下げ、正式な書簡を差し出す。  

「白の賢者エイル様。王都再建に伴い、要人護衛の任務を拝命いただきたいとの通達です」  
「……やっぱり来たかぁ」  

イルゼが横で書類を読み上げながら、内容を確認する。  
「護衛対象は王族関係者。しかも……王女殿下?」  
「は?」エイルは思わず声をあげた。  
「なんで国の一番偉い人の護衛を俺がやるの?」  
リュナがぼそりと呟く。  
「だって一番強いからでしょ」  

イルゼは眼鏡を軽く押し上げ、冷静に言った。  
「王都は今、政治的にも混乱しているの。新教団が地方で勢力を広げ、貴族派と王権派が揺れ動いている。王女殿下は父王に代わり、民と直に向き合う役目を担われているのよ」  
「それが護衛対象になる理由か」  
「ええ。あなたを正式な護衛騎士として任命したいという王命がある」  

「いや、俺、騎士って柄じゃないし……」  
「報酬は王城での専用住居と、無期限の特権免除」  
「むむむ……」  
横のリュナが囁く。  
「住むだけ住んで小金もらえば? スローライフに最適だよ」  
「静かに暮らしたいのに王族の護衛って真逆じゃない?」  
「でも断るとまた面倒な事になりそうだし」  

結局、流れでエイルは王都行きを承諾した。  

――数日後。  

王城に戻ってきたエイルを出迎えたのは、以前よりさらに人の気配が多い正門だった。  
街を歩くだけで、民や兵士が彼に向かって手を振ってくる。  
「エイル様だ!」「英雄だ!」  
「もう、誰も凡人扱いしてくれない……」  

ため息をつきながら王城の石畳を進むと、背筋の通った女性が彼を待っていた。  
黒髪にティアラをつけ、気品ある白のドレス。  
しかし目には柔らかな笑みがある。  

「あなたが、白の賢者エイルね」  
「えっと……王女殿下?」  
「ええ。セレス・アルティア。面倒な儀礼は省きましょう。私はあなたを信じてここへ呼んだ」  

セレスは年齢にして二十を少し過ぎた程度。  
近寄り難い気品を持ちながらも、その声は不思議と人懐っこい温度を持っていた。  
「あなたのことは知っているわ。勇者を救い、魔王を退け、聖都を救った英雄――でも同時に、王を脅した不遜者でもある」  
「それ、後半のほうが印象強いですね……」  
「ふふ。でも、王には必要な刺激だったのよ」  

照れ臭そうに頭を掻くエイルに、王女は一歩近づいた。  
「率直に言うわ。あなたに護衛してほしいのは、私自身。私はもうすぐ“民の声を聞く旅”に出るの」  
「王女が旅? そんな大胆な話あります?」  
「普通ならあり得ない。でもこの国はいま、上も下も信頼を失っている。私自ら足を運ぶことで変えたいの」  
「……なるほど。いい心がけだとは思うけど、危険すぎます」  
「だから、あなたが必要なのよ」  

まっすぐな視線に、エイルは一瞬だけ言葉を詰まらせた。  
彼女の瞳は、騙すことなどできないほど真っ直ぐだった。  

「俺の護衛が王族の旅についていくとか、完全に目立つだろうな……」  
「“旅の学者と護衛”という名目にしてある。正式な行列ではなく、身分を隠した巡察。表向きは匿名の冒険者よ」  
「おお、意外と策士ですね」  
「私だって政治の世界で鍛えられてるのよ。それに、あなたみたいな無自覚最強を連れていけば、世界中どこでも安全でしょ?」  
「その呼び名やめて……」  

隣でリュナがため息をつきながら首を突っ込む。  
「で、あたしもついて行くよ。どうせあなた一人じゃ面倒かけるんだし」  
「はいはい、リュナは外せないな」  

セレスは微笑んで頷いた。  
「良い仲間ね。では、同行者リストに彼女も加えましょう。出発は三日後です」  

――三日後。  

正午の王都の門前は厳重な警備が敷かれていた。  
馬車二台と俊敏な騎馬数頭。  
だが表に出るのは偽装用の旅行隊。  
王女セレスは簡素な外套に身を包み、銀髪を束ねた姿はまるで高位の学徒のように見えた。  

「ねぇ、エイル」  
「ん?」  
「ここから先、誰も“殿下”とは呼ばないでね。私はただのセレス。旅人のひとり」  
「了解」  

目的は王国北端、辺境ガラリア地方。  
近年魔物被害が急増している地域で、貴族の搾取と民の反乱が噂される場所だった。  

馬車の揺れが小さくなった頃、セレスがぽつりと言った。  
「あなたは、なぜ戦うの?」  
「難しい質問だなぁ」  
「理由がほしくないの?」  
エイルはしばらく考えて答えた。  
「うーん……人が困ってたら手ぇ出す。それだけかな」  
「単純ね」  
「そう単純でいたいんだよ。複雑になったら、誰かを守る理由が分からなくなる」  
セレスの横顔が一瞬だけ切なげに揺れた。  
「……羨ましいわ。私はいつも“国のため”って言い訳を探しているのに」  
「言い訳でいいんですよ。行動してるだけで、立派です」  

その時、揺れが止まった。  
御者の声が上がる。  
「前方! 隊商を襲う盗賊団です!」  
セレスが外套を翻すが、エイルは手を上げて制した。  
「下がっててください。こういう時こそ護衛の出番だから」  
「でも――」  
「任せて」  

彼が馬車を降りると、十数人の盗賊たちが見えた。  
鉄片をつなぎ合わせた鎧、粗末な棍棒や槍。  
「よぉ、お貴族さんの旅は儲かるか?」  
リーダーらしき男がニヤリと笑う。  
エイルは微笑で返した。  
「うん、儲かってないけど、暇つぶしにはちょうどいいかな」  
「は? 何言って――」  

瞬間、男の言葉が終わるよりも早く、風が走った。  
圧力で地面がえぐれ、次の瞬間、盗賊たち全員の武器が四散する。  
風は突如止み、誰ひとり怪我していない。  

「……え、なにが起きた……?」  
リーダーが呆然とつぶやく。  
エイルは肩をすくめて一言。  
「平和的解決」  

セレスが馬車の窓からその様子を見て、思わず驚嘆の息を漏らした。  
「……こんなの、平和どころか奇跡よ」  
「奇跡って言葉、最近聞き飽きたなぁ」  
そう笑うエイルの姿を、街道を吹き抜ける風が静かに包み込んだ。  

旅の初日から波乱含み。  
だが、この護衛任務が後に大陸全土を巻き込む大事件へと発展するのは――まだ誰も知らなかった。  

続く
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