追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第17話 暗殺者団をまとめて無力化した結果、求婚されました

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王女セレスを護衛する旅が始まってから、一週間が経った。  
街道沿いの町をいくつも抜け、領民の嘆きを聞き、地方貴族の腐敗を見た。  
セレスはどんな場所にも怯むことなく足を踏み入れ、民の前で堂々と立つ。  
その姿は王女というより、一人の理想家だった。  

「……あの人、ほんと真っ直ぐだな」  
昼下がりの休憩中、エイルは倒木に腰を下ろして呟いた。  
リュナが手早く焚き火を整える。  
「真っ直ぐすぎて怖いぐらいね。正義感が強すぎる。あんたと正反対」  
「俺、曲がってるのか?」  
「無自覚だけど行動は雑なんだから」  
「否定しきれないなぁ」  

セレスはそんな二人の会話を微笑みながら見ていた。  
「ふふ、あなたたちって漫才みたいね」  
「おもしろいこと言うね王女様。護衛中にツッコミ入れられるなんて思わなかった」  
「いや、護衛中に遊んでるほうが珍しいのよ普通」  

笑い合う時間も束の間、セレスの警備隊の一人が慌てて走ってきた。  
「殿下! 先行していた偵察が戻りません! 森の中で襲撃を受けた可能性が!」  
リュナの耳がぴくりと動く。  
「魔物じゃない……人為的な気配。囲まれてる」  
「やっぱり来たか」  
エイルはゆっくり立ち上がり、マントの裾を払う。  
「王女暗殺ってのも仕事としては重すぎるな。勘弁してくれよ」  
「どうする?」リュナが尋ねる。  
「簡単に終わらせる。疲れたくないし」  

一行はすぐに防御陣形を取り、セレスは馬車の影に下がる。  
すると、森の影から黒ずくめの人影が次々と姿を現した。  
全員で十五人ほど。双剣、弓、刃付き鎖。装備の見事さに、ただの盗賊でないことは明らかだった。  
黒い仮面の男が名乗る。  
「我ら〈黒刃連〉。王の腐敗を断つ影なり。王女セレス・アルティア、ここで果ててもらう」  

「やっぱり、貴族派の差し金か……」セレスが息を呑む。  
「政治の話は後に。今は、危ないよ」エイルはしれっと前に出た。  
「やめておきなさい。あなたが出ても、返り血を浴びるだけよ」  
「うーん……俺、血飛沫嫌いなんだよな。面倒だ」  
黒刃連の男たちが嘲るように笑う。  
「戯言を! 構えろ!」  

風が止んだ。  
次の瞬間、閃光が走る。  
森の木々がたわみ、足元の土が一瞬だけ消えたかのように抜ける。  

「……な!? う、動け……!」  

黒刃連の全員がその場で固まっていた。腕を振ることも、武器を抜くこともできない。  
エイルが軽く首をかしげる。  
「ほらね。動かないほうが楽だろ?」  
リーダーの男が息を荒げた。  
「な、何をした……!」  
「重力をちょっと調整しただけ。足下の空間、十分の一秒だけ世界線がズレてる。他の説明いる?」  
「わ、わけの……わからんことを……」  
「でしょ? 俺もよくわかってないし」  

全員が無力化される様子を見て、セレスは目を見張っていた。  
リュナがため息をつく。  
「……もう少し控えめにやれないの?」  
「控えめだよ? 生きてるし、血も飛んでない」  
「控えめが異次元すぎる……」  

セレスがエイルの隣へ歩み寄る。  
「あなた、凄いわね」  
「複雑な意味で褒められてる気がする」  
「いいえ、本気で感謝してる。もしあなたがいなかったら、私は今ここにいなかった」  
一歩近づいて、セレスは真剣な瞳で見つめた。  
「ねえエイル、あなたを王宮に帰して自由にしてしまうのが怖くなってきた」  
「へ?」  
「あなたを見ていると、まるで伝説を生きてるみたい。私、本気で惹かれてる……」  

リュナが吹き出しかけて口を押さえる。  
「……! それ、絶対誤解されるやつ!」  
しかしセレスは止まらなかった。  
「エイル、もしこの旅を無事終えたら――私に仕えてくれない? 王としてではなく、一人の女として側にいてほしいの」  

空気が止まった。  
風すら吹かない。  
エイルは口を半開きにして固まる。  
「……え、プロポーズ?」  
「そうなるわね」  
「いやいや、護衛任務の最中にそんな話されたの初めてだよ!?」  
「だって、生き延びた人にちゃんと伝えたいと思ってたの」  

リュナが横から割って入る。  
「待った待った! あたしがいる前で告白するの普通に大胆すぎない!?」  
「遠慮するタイプじゃないの、わたし」  
「いや、堂々としてるにも程がある!」  

動けない黒刃連の一人がぼそりと呟く。  
「……殺されるよりこっちの空気のほうがキツい……」  
エイルは頭を抱えてため息をついた。  
「とりあえず会話の前に、こいつらどうする?」  
「縛り上げておけばいいわ。あんたの魔法なら逃げられない」  
「そりゃ確かに」  

捕縛を終えたのち、セレスが再び彼の前に立った。  
「さっきの返事、今すぐじゃなくていい。考えておいて。私は本気よ」  
「……本気で王女に惚れられる人生とか、俺には荷が重い気しかしないんだけど」  
リュナが尻尾をばしばし地面に叩きながらぼそっと呟く。  
「……あんた、女難の相あるんじゃない?」  
エイルは遠い空を見上げた。  
「女難というより、事件に巻き込まれる運命の方だろ……」  

しかし、護衛の旅はこれで終わらない。  
黒刃連は組織の一部にすぎず、その背後ではもっと大きな陰謀が渦巻いていた。  
この出会いと告白が、後に国家を揺るがす戦乱の火種になることを、この時まだ誰も知らない。  

エイルは陽に照らされた王女の微笑を横目に、軽く杖を鳴らした。  
「……とりあえず、次は普通の旅がしたいな」  
「無理よ」リュナが即答する。  
「そういうこと言うから、また事件を呼び込むんだから」  

「俺が呼んでるわけじゃないのにな……」  
目の前に広がる草原の向こう、赤く沈む夕日が彼らの背中を長く照らしていた。  

続く
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