追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第18話 国家級会議で発覚する「世界最強候補」疑惑

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王女セレス一行が王都へ戻ったのは、黒刃連殲滅から五日後のことだった。  
長い旅路を経たはずなのに、民衆の目はまるで祝祭の日のように輝いている。  
「白の賢者、帰還!」「殿下を救いし英雄、凱旋!」  
通りに響く歓声を聞きながら、エイルはこめかみを押さえた。  

「……これ、完全に目立ってるよな」  
「当たり前でしょ」リュナが尻尾を揺らし、くすっと笑う。  
「王族の命を救って帰ってきたんだから。英雄扱いされない方がおかしい」  
「それにしたってさ……俺ただ護衛してただけで」  
「護衛が十五人の暗殺者を一瞬で無力化するのは普通じゃないの」  

そんな他人事のような会話を交わしながら、一行は王宮へ入る。  
白大理石の回廊を抜けた先――待っていたのは、王と宰相、各国大使、そして軍の将官たち。  
十数人が円卓を囲み、空気が張り詰めていた。  
エイルたちが入室した瞬間、ざわめきが走る。  

「これが“白の賢者”か……」  
「若いな」「化け物らしいぞ」  
「礼を欠くな、彼のおかげで国が救われたんだ」  

その声の群れを背に、王は立ち上がった。  
「エイル・シェルド。まずは感謝を述べさせてもらう。王女を守り、民を守り、我らの国を救ってくれた」  
「いえ、俺はただの――」  
「凡人、か?」王は苦笑しながら遮った。  
「その言葉は、今や誰も信じぬだろう」  

隣にいた宰相が札束のような書類を机に置く。  
「陛下、まず最重要議題に入らせていただきます」  
「よい、申せ」  

宰相の声が広間に響いた。  
「――“白の賢者エイル”の存在が、世界均衡を揺るがす可能性について、各国が共同で調査を要請しております」  

場がざわつく。  
「世界均衡……?」エイルが眉を顰めた。  
「なんだか物騒な言葉だな」  
「平たく言えば」イルゼが後方から歩み出る。「“世界で最も危険、もしくは最も有用な存在”という分類がなされたということ」  

「……え、それ俺?」  
「ええ。世界最強候補、だそうよ」  

瞬間、室内の全員の視線がエイルに集中した。  
沈黙。重苦しい空気。  
リュナが吹き出しかけて慌てて口を押える。  
「ぷっ……! いや、ほんとに本人まったく気にしてないって顔、逆に怖い」  
「だって俺、そんな大それたことしてないし」  

将軍が身を乗り出す。  
「大それたことを“無自覚”でできるから問題なのだ!」  
武人としての敬意と恐怖が入り交じった声だった。  
「あなたが放った浄化魔法の残滓だけで、半径十キロの腐敗地帯が再生した。  
あれは大聖堂の奇跡を超える。神の力をも凌駕していると評する学者もいる」  

「うわぁ……言い過ぎじゃない? 俺そんなつもり全く」  
「つもりの問題ではないの!」  
場の熱気が上がる。  

するとセレスが厳かな調子で立ち上がった。  
「皆、静まりなさい」  
その一言で、全員が息を飲んだ。  
「彼はたしかに常軌を逸した力を持っている。しかし、その力をどう使うかは本人の意思に委ねられている。  
少なくとも、彼は一度も“奪うため”に動いたことがないわ」  

王が頷く。  
「その通りだ。だが、各国は警戒するだろう。“一人で国家を滅ぼせる力”が味方か敵か、それだけで秩序が揺らぐ」  

イルゼが資料の束を指で叩いた。  
「各国から届いた書簡には、“協定”という項目があるわ。  
エイルを“共通守護者”として登録し、大陸全域の災害・魔王封印を統括する新たな枠組みを作りたいらしい」  
「守護者……ねぇ。響きだけはいいけど」  
「つまり書類上、あなたが“世界の防衛兵器”扱いになる」  
「それ全然よくない!?」  

リュナが喉を鳴らして笑った。  
「ほら、あんたもう“個人扱い”されてない」  
「冗談だろ……俺、人として見られてないの?」  
「もはやカテゴリーが違うのよ」イルゼが肩をすくめた。  

黙っていた学者風の男が口を開いた。  
「エイル殿、その力の根源について伺いたい。  
あなたのステータスには【世界修正】【概念干渉】と記載があると聞きましたが、それは……」  
「んー……わかんない」  
「わ、わからない!?」  
「だって誰も教えてくれなかったし、気づいたら起動してるし」  
「つまり、神の領域の力に自覚がないと……?」  
「うん。寝てても起動することあるみたい」  

学者たちは頭を抱えた。  
セレスも呆れたようにため息をつく。  
「……本当に無自覚なのね」  
「無自覚じゃなかったら、今頃喧嘩になってるでしょ」リュナが茶々を入れる。  
イルゼも口元に手を当て、ひそかに笑った。  

だが、会議はやがて真剣さを取り戻した。  
宰相が言葉を続ける。  
「冗談では済まされぬ事態もある。  
検討の結果、エイル・シェルドを“世界最強候補”として認定し、監視ではなく協力の形をとることで各国が一致した」  
「監視って言葉が出てこなかったのはありがたいけど、やっぱり褒められてる気がしないな」  
「褒め言葉よ」イルゼが眼鏡越しに微笑む。「あなたはこの時代の“例外”なんだから」  

セレスが立ち上がり、王や他の出席者たちに向かって宣言した。  
「私は王女として、白の賢者エイルを王国の正式な“第一守護者”に任命します。  
その力を抑制し、維持し、正しく導く義務は、この私が負う」  

どよめきが起こった。  
「殿下、それは……!」  
「不敬ではない。王国は彼を信じる。私も――信じたい」  

エイルは苦い笑みを浮かべながら頭を掻いた。  
「……もう好きにしてくれ。俺は自由に動ければいいから」  
リュナがすかさず低い声で囁く。  
「“自由にしていい”って言うと毎回面倒な役職増えるんだけど、わかってる?」  
「もう、いっそ肩書き増やしてコレクターになろうかな」  
「自虐が深刻」  

結局その日、翌日発表の布告案として、彼の名は“白の守護者エイル・シェルド”と公式文書に刻まれることになった。  

会議が解散したあと、長い廊下を歩いていると、セレスがそっと声を掛けた。  
「……ありがとう。あの場で私が暴走せずにすんだのは、あなたが落ち着いていてくれたおかげ」  
「落ち着いてたっていうか、状況についていけなかっただけだけど」  
「ふふ、そうだったのね。でもあなたがいると、不思議と皆が安心するの」  
「そうかな」  
「ええ。たとえ神より強くても、あなたは誰より“人間”だから」  

エイルは何も言えずに立ち止まった。  
沈む夕陽が窓を染め、長い影が床に伸びる。  
彼の肩越しに、王都の塔が金色に輝いていた。  

「……俺、人間でいられてるのかな」  
ぽつりとこぼした声は誰にも届かず、ただ風に溶けた。  

しかしその頃――大陸の裏側、黒い霧が渦巻く廃都に、ひとつの人影が立っていた。  
ゼルアークの部下、そして新たな「核の主」。  
光の国が祝福に包まれるその裏で、別の世界が、静かに牙を研ぎ始めていた。  

続く
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