追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

文字の大きさ
21 / 30

第21話 人魔両国から引っ張りだこ、平穏を望む男の苦悩

しおりを挟む
駐屯地での模擬戦から一週間。  
雪の地にまた一つ伝説が増え、エイルの名前はさらに遠くまで知れ渡った。  
「白の守護者」「氷をも砕く光」「人魔の境を越えた奇跡」――呼び名はもはや本人の知らないところで神話になりつつあった。  

当のエイルはというと、王都へ戻る途中の馬車の中で、くたびれた布袋を枕に眠そうな顔をしていた。  
「はぁ……あれから、行く先々で握手だの視察だの。ホントに休ませてくれないなぁ」  
隣で寝転んでいたリュナが、尻尾で軽く彼の顔を叩く。  
「自業自得でしょ。最強ぶりを、あんな派手に全国配信みたいに披露したんだから」  
「いや、クラウディアさんが本気出したの見て、ちょっとテンション上がったのが悪かった……」  
「“ちょっと”で全部凍らせるのやめなさいよ」  
「控えめにしたつもりだったんだが」  
「その控えめの基準がもう災害だってば」  

ぼやきながらも、窓の外に広がる見事な青空を見てエイルは目を細めた。  
魔族領で見た氷の世界とは違い、王国の大地は穏やかに陽が差している。  
「……なあリュナ。これからの予定ってどうなってる?」  
「さあ? 戻ったら会議とか表彰とか、王女様の“次の計画”があるってイルゼさんが言ってた」  
「おぉい……もうしばらく静かにしてたいのに」  

そう愚痴をこぼす間もなく、王都に着いたエイルを待っていたのは、予想を超える騒がしさだった。  
宰相館の前には行列ができており、国境を越えてやってきた魔族の使節、商人、冒険者、神殿の司祭まで、それぞれが彼に面会を求めて詰めかけていたのだ。  

「まさか……俺ご指名?」  
「当然でしょ」イルゼが横から現れる。  
「北の氷原の件で、魔族の新女王ルシアから感謝状が届いたわ。しかも彼女、自国にあなたを正式に招待するつもりらしい」  
「え、いや、あの氷の姫が?」  
「あなたが暴走龍を鎮めたあと、再生した氷の城を拠点に“人と魔族の共存”を宣言したの。その初手として、両国代表の親交が必要だと」  
「……つまり、俺が呼ばれた理由は“氷の姫の客”ってことか」  
「招かれざる中心人物、って言ってもいいわね」  
「イルゼさん、嬉しそうですね」  
「面白いって言ったのよ」  

リュナが口を挟む。  
「それ、まるっと王女セレスが動く案件になりそうだよ。外交ってやつ」  
「だろうね。あの人、退屈嫌いそうだし」  

案の定、その日の晩には王城から召喚の使いがやって来た。  
迎えに出たセレス王女は、輝くような笑顔を浮かべていた。  

「来てくれて嬉しいわ、エイル!」  
「なんか俺、毎回あなたの“招待”で波乱に巻き込まれてる気がするんですけど」  
「偶然よ、偶然!」  
「ここまで毎回起きてたら偶然じゃなく運命な気もしますけどね……」  

セレスはまるで聞こえないふりをして続けた。  
「実はね、魔族領のルシア女王と対話会を開くの。内容は“人魔共生条約”の草案よ。あなたにも同行してもらうわ」  
「聞いた瞬間に胃が痛いんですが」  
「あなたが行かないと成立しないのよ。ルシアは“あなたの隣でないと出席しない”って公言してしまったから」  

リュナが笑いをこらえ切れず噴き出した。  
「くぐっ……! 完全にフラグ立ってる!」  
「笑いごとじゃないからな、これ!」エイルは本気で頭を抱えた。  
「俺、外交とか一番不得意なんだけど……」  
「話すことはないわ。ただ居てくれればいいの。あなたの存在自体が“証拠”だから」  

そう言われてしまっては断る理由もない。  
結局、二日後――エイルは再び魔族領へ向かうこととなった。  

◇  

目的地は、氷原の中央に再建された城、〈クリュステリア・ドーム〉。  
白銀に光る氷壁と黒曜石の塔が組み合わさり、まるで幻想の宮殿のような風格を持っていた。  
一行が到着すると、魔族の兵たちが一斉に膝をつく。  
「人の英雄にして、闇を鎮めし白の守護者エイル殿……ようこそ」  

「……なんだこの大げさな歓迎」  
「これが外交ってやつなの。笑顔で手を振りなさい」セレスがささやき、  
「……そういうの苦手なんだよなぁ」  

中へ続く氷の回廊で、ルシアが姿を現した。  
白のドレスに淡い青の宝石を散りばめ、透き通る冷気をその身に纏っている。  
その歩みは静かで、息を呑むような美しさがあった。  

「久しぶりね、エイル」  
「お、おう。元気そうだね。よかった」  
「あなたが残した“光の領域”がこの国を安定させたのよ。感謝するわ」  
「いや、たいしたことしてないよ。ちょっと魔力調整しただけだから」  
「それで世界の気候が安定するのを“ちょっと”は言わない」リュナが突っ込む。  

セレスがルシアへ歩み寄って微笑んだ。  
「ルシア女王、改めてお会いできて光栄です。私たちは人と魔の橋を築くことを望みます」  
「同じことを、私も願う。……ただし、条件が一つあるわ」ルシアはまっすぐエイルを見た。  
「彼が、私の国との“友好の象徴”として、この場に立ち続けること」  
ざわめく会場。  
セレスはすぐに微笑を浮かべた。  
「もちろん構いません。ただし彼は私の――王国の守護者でもあります。奪い合うのはやめましょう」  
「奪う気など……ないわ。ただ、“隣に立つだけ”」  
「呼び方が違うだけで意味変わらない気が……」とエイルが困ったように呟く。  
リュナはついに吹き出した。  
「もはやハーレム外交だわ」  

その場にいた使節たちは息を呑み、緊張と期待の空気が交錯した。  
ルシアとセレス――王と女王の頂上会談は、結果的にエイルを中心に進み、“両国融和の象徴”として新たな条約が締結された。  

会談が終わった晩、ルシアは個人的にエイルを屋上へ呼び出した。  
夜空は群青に染まり、北極光が揺らめいている。  
「あなた、なぜ戦うの?」  
「またその質問か……みんな同じこと聞くなぁ」  
「この世界は延々と争ってきた。人間も魔族も、違いを恐れて。……けれどあなた、どちらにも優しい」  
「優しいっていうか、強引なのかも。誰かが悲しむと、無意識に止めに行っちゃうんだ」  
「だから平和を呼ぶ。あなたは不思議ね、人間というより、世界そのものの理みたい」  

エイルは苦笑しながら夜空を見た。  
「俺、世界を回してるつもりも、守ってるつもりもないんだ。ただ……壊したくないだけ」  
「十分、それが奇跡を呼ぶ理由よ」  

彼女の言葉に、エイルは少しだけ黙っていた。  
やがて小さく息をついた。  
「ねぇルシア……俺、いつになったら平穏に寝られるのかな」  
「あなたが自分を“誰かのために”動かす限り、それは訪れないわ。でも、それがあなたの幸福でしょう?」  
「……自覚がないのが俺の特徴らしい」  

北の空にオーロラが広がる。  
氷の女王ルシアと王女セレス、そしてエイルの名は、もはや人魔両国共に“共存期”の象徴として語られるほどになっていた。  

だが――その新時代の幕開けの裏で、誰も知らぬ影が動き始めていた。  
かつて封じられた黒き災厄の残滓、その核心が、ゆっくりとこの世界を蝕み始めていた。  

次に訪れる平穏は、暴風の前の静けさに過ぎない。  

続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱村人だった俺、知らぬ間に神々に祝福されて無双してた件~気づけば聖女も魔王も嫁候補でした~

たまごころ
ファンタジー
「村で一番弱い」と言われていた青年アルト。ある日、魔物に襲われて死にかけた瞬間、封印されていた神々の力が全部彼に流れ込む——。 本人は「ちょっと強くなった」くらいの感覚だが、周囲からすれば世界の理を変えるレベルの脅威。気づけば王女から魔王、果ては勇者までが彼を取り合う修羅場に発展!? 無自覚最強の青年が、世界の中心になっていく異世界無双ハーレムストーリー。

異世界で追放されたけど、実は神に愛された最強賢者でした 〜気づけば魔王も王女も跪いていた〜

たまごころ
ファンタジー
才能なしと蔑まれ、パーティを追放された青年アルト。 だが、彼の正体は神々が「人の皮をかぶった奇跡」と呼ぶ規格外の賢者だった。 無自覚に最強の力を振るい、仲間を救い、敵を屠るうちに——気づけば世界が彼に跪く。 追放者の快進撃、そして「ざまぁ」の連鎖が始まる! ハーレムあり、成り上がりあり、スカッと爽快な異世界冒険譚。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風
ファンタジー
仕事に疲れたサラリーマンがバスの事故で大人気乙女ゲーム『プリンセス ストーリー』の世界へ転生してしまった。しかも攻略不可能と噂されるラスボス的存在『アレク・ガルラ・フラスター王子』だった。 アレク王子はヒロインたちの前に立ちはだかることが出来るのか?

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...