追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

文字の大きさ
22 / 30

第22話 勇者パーティ没落劇と、追放の真実

しおりを挟む
白の守護者が人魔の絆を結んだその裏で、ひとつの組織が静かに崩壊していた。  
かつては王国最大の戦力と称された勇者パーティ〈黎明の剣〉――エイルを追放したあの日から、彼らの栄光はみるみるうちに色褪せていた。  

セレス王女の宰相館。  
イルゼが机の上に分厚い報告書を置きながら言う。  
「……これ、あの勇者一行の現状報告よ。読まない?」  
「うーん……正直、あんまり見たくないんだけど」エイルは苦笑しながら書類を指でつついた。  
「でも“勇者パーティの没落”って噂は聞こえてるよ」  
「事実、ほとんど崩壊ね。残っているのは勇者レオナード本人と回復役だった僧侶エレナだけ。剣士マリナも賢者バルドも、各国で拘束された」  
「……拘束って、何やらかしたんだよ」  
「魔族との密取引。武器横流し。しかも、相手が例のゼルアーク残党だった」  

リュナが尻尾をぴたりと止める。  
「え、それってつまり――敵側に加担?」  
「本人たちは“力を得るための契約”だと供述しているわ。その意識の先にあったのは、たぶん強さへの渇望。……かつての同僚が一撃で災厄を倒したのを見て、均衡が壊れたのよ」  

エイルは何も言わず、無表情で書類をめくった。  
そこには、尋問記録の断片が記されている。  

――「俺たちの中で、“凡人”だった奴が世界最強になった。笑えるよな。努力が無意味だと証明されたんだ。だったら、力なんてどこからでも取ればいい」  

「……俺のせいだな」エイルはぽつりと呟いた。  
イルゼが静かに首を振る。  
「誰のせいでもないわ。ただ、人は弱い。理不尽を見せられると、正しいものを信じる気力が削がれるのよ」  
「それでも、あいつらの選択は間違いだ」  
「ええ。だからこそ“勇者パーティ”はもはや存在しない。王家も正式に解体を認めたわ」  

窓の外では、穏やかな風が吹いている。  
かつて共に戦った者たちの結末を耳にして、エイルの胸の奥は不思議な静けさで満たされていた。  
怒りも恨みも、もう無い。ただ“虚しさ”が残るだけ。  

夜、彼は月明かりの中で一人立っていた。  
王城の屋上。  
いつも彼が考えごとをするときに訪れる場所だ。  

足音。  
「……見つけた」  

現れたのはミリアだった。  
彼女は以前よりも落ち着いた笑顔を浮かべている。  
エイルが視線を向けると、彼女は小さく笑った。  
「昔と同じ場所ね。考えごとする時、いつも一番高いところに来る」  
「まぁ、景色はいいからな」  
「あなたの噂、もう国中に広まってるわ。“白の守護者”と“人魔をつなぐ賢者”。これ以上ない称号ね」  
「皮肉だな。昔は“役立たず”呼ばわりだったのに」  

二人の間に、静かな時間が流れる。  
ミリアがゆっくりと息を吐いた。  
「……エイル。レオナード、明日処刑される」  
「……やっぱりか」  
「彼、自分から望んだの。“罪を償うには命を捧げるしかない”って」  
「真面目すぎるやつだよ、ほんと……」  

エイルはしばらく空を見つめたあと、ぽつりと呟いた。  
「俺が行く」  
「え?」  
「最後くらい、見届ける。仲間だったんだから」  

◇  

翌朝、王都西広場。  
民衆が遠巻きに見守る中、処刑台の上で勇者レオナードが静かに立っていた。  
その顔に怯えも後悔もない。  
「勇者レオナード、罪状――国家反逆および魔族への加担。よって、王の名により――」  

宣告が読み上げられようとした時、風が流れた。  
人々の視線が動く。白衣の青年がゆっくりと壇上へ歩いてくる。  
「……処刑はやめろ」  

衛兵たちは動けなかった。  
エイルの放つ圧力が、彼らの足を縫いとめる。  
「止まれ、賢者エイル! 王命に――」  
「王とは話をつけてある。……形式は、もう不要だろ」  

エイルの言葉に、広場は静まり返った。  
レオナードが目を見開く。  
「……来たのか」  
「約束しただろ。二度と仲間を見捨てないって」  
「……俺に救われる資格なんてない」  
「資格ってなんだよ。助けるのにそんなもん関係ない」  

沈黙。  
やがてレオナードは小さく笑い、膝を折った。  
「……俺は勇者失格だった。でも、お前がいれば、この国は大丈夫だ」  
「そりゃどうも。ただ俺は勇者じゃないよ。どこまでいっても凡人だ」  
「その凡人に憧れて、俺は勇者になったんだよ」  

エイルは無言のまま目を閉じ、そっと杖を彼の肩に当てた。  

「お前の罪、俺の名で消す」  

柔らかな光が周囲に広がり、群衆が息を呑む。  
一瞬の後、レオナードの首輪に刻まれた呪印が淡く光って霧散した。  

「――な……っ!? あれを解除できた!?」  
「白の守護者の名は伊達じゃねぇ!」  
人々の叫びが上がる中、エイルは静かに言う。  
「罰はもう与えられた。あとは生きて償えばいい。それでいいだろ」  

レオナードの目から、静かに涙がこぼれた。  
「……ありがとう、エイル」  
エイルは軽く笑い、振り返った。  
「行け。やり直せ。……お前なら、きっと大丈夫だ」  

群衆がざわめく中、処刑は白紙となった。  
王の特赦として記録上は「被赦免」となり、同時に勇者制度そのものが解体された。  

夜。  
城下町の酒場の灯りの下で、リュナとミリアが小声で話していた。  
「やりすぎじゃない? 国の法律変えちゃったわよ」  
「でもあの人らしいじゃない。助けられるなら助ける。それだけ」  

扉の外で風が吹き、エイルの声が聞こえた。  
「……ようやく一つの終わりを見届けられたな」  
リュナが笑う。  
「終わり? あなた、まだ十くらい“未解決案件”抱えてるけど?」  
「えぇ……」エイルが苦笑いを浮かべる。  
「明日こそ、ゆっくり寝られるかなって思ったんだけどな」  
「無理でしょ。ほら、聖女様がまた相談あるって」  
ミリアがにっこり微笑みながら近づく。  
「ね、エイル。次は“災厄の核”の再調査なんだけど」  
「……俺の平穏ってどこに売ってます?」  

笑い声が夜空に溶けた。  
そして、彼がまだ知らぬ新たな闇が、静かに国の地下で蠢き始めていた。  

続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱村人だった俺、知らぬ間に神々に祝福されて無双してた件~気づけば聖女も魔王も嫁候補でした~

たまごころ
ファンタジー
「村で一番弱い」と言われていた青年アルト。ある日、魔物に襲われて死にかけた瞬間、封印されていた神々の力が全部彼に流れ込む——。 本人は「ちょっと強くなった」くらいの感覚だが、周囲からすれば世界の理を変えるレベルの脅威。気づけば王女から魔王、果ては勇者までが彼を取り合う修羅場に発展!? 無自覚最強の青年が、世界の中心になっていく異世界無双ハーレムストーリー。

異世界で追放されたけど、実は神に愛された最強賢者でした 〜気づけば魔王も王女も跪いていた〜

たまごころ
ファンタジー
才能なしと蔑まれ、パーティを追放された青年アルト。 だが、彼の正体は神々が「人の皮をかぶった奇跡」と呼ぶ規格外の賢者だった。 無自覚に最強の力を振るい、仲間を救い、敵を屠るうちに——気づけば世界が彼に跪く。 追放者の快進撃、そして「ざまぁ」の連鎖が始まる! ハーレムあり、成り上がりあり、スカッと爽快な異世界冒険譚。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風
ファンタジー
仕事に疲れたサラリーマンがバスの事故で大人気乙女ゲーム『プリンセス ストーリー』の世界へ転生してしまった。しかも攻略不可能と噂されるラスボス的存在『アレク・ガルラ・フラスター王子』だった。 アレク王子はヒロインたちの前に立ちはだかることが出来るのか?

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...