追放された凡人魔導士ですが、実は世界最強の隠しステ持ちでした〜気づかないうちに英雄扱いされて、美少女たちに囲まれていました〜

にゃ-さん

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第28話 災厄の核との決戦、無自覚最強の到達点

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夜が明けると同時に、王都中の鐘が鳴り響いた。  
東の空を覆うように、黒い霧が形を成す。  
それはすでに“災厄”とは呼べない、形容不能の存在――世界そのものが負の感情に染まって実体化したものだった。  

「観測値が上がり続けています! 魔力反応、規定を超過!」  
報告する兵士の声が震える。  
セレス王女は指揮台の上から冷静に命じた。  
「全防衛隊、結界を張りなさい! 民を地下へ避難させるのを最優先!」  
「はっ!」  

王都上空では、巨大な光の円がゆるやかに回転していた。  
それはエイルが編み出した大陣――全種族の協力で張られた「世界守護結界」。  
ルシアの氷の柱、ミリアの祈り、リュナの獣の加護、セレスの聖印。  
四者四様の力が融合して、中心にただひとりの青年の魔力を集束していく。  

「エイル、準備は?」  
リュナが空を仰ぐ。その向こう、黒雲よりさらに高い場所に、ひとりの白い光が浮かんでいた。  
エイルは神殿の塔の頂――雲の上。  
目の前に広がるのは、裂けた空間の中心。そこから覗く闇の中に、無数の眼が蠢いている。  

「……やっぱりな」  
彼は静かに息を吐いた。闇の中央で、低いうめきが響く。  
――我ハ世界ノ裏面、創造者ノ手ヨリ零レシ欠片ナリ……  
「そんな立派な自己紹介いらないよ」  
エイルが淡々と構える。  

闇が声を変える。  
――修正者ヨ……“始源コード”ニ選バレシ者ヨ……オマエモワレラナイ。  
その瞬間、空間が爆ぜた。  

黒い触手のような腕が何十本も吹き出し、空を覆う。  
人々が見上げた王都上空には、太陽を隠すほどの闇がうごめいていた。  

エイルは杖を握り、静かに言葉を紡ぐ。  
「全開放、コード:ルート・クロス」  

彼の身体から八色の光が一気に走る。  
光と闇がぶつかりあい、次元の境界が軋む。  
魔力の爆破は一瞬で王都の外壁を越え、空の雲をも消し飛ばした。  

地上のセレスが思わず目を覆う。  
「光が……大気を、消してる?」  
イルゼが隣で呆然と呟いた。  
「彼の魔力に空間が耐えられないのよ。まるで……星そのものが反応しているみたい」  

再び轟音。  
エイルを中心に黒と白の渦がぶつかりあう。  
彼の魔力はもはや“魔”ではなかった。  
炎も氷も雷も、元素のすべてが言葉のように共鳴している。  

――何故抵抗スル……  
災厄の核が咆哮する。  
――ワレラハ始源、世界ノ修正ハ我ラノ役目……!  
「違う、修正ってのは壊すことじゃない!」  
エイルの声が空を切り裂く。  
「誰かの夢や希望を消すのは、“管理”じゃないんだよ!」  

黒い手が彼の身体を貫こうと迫る。  
だが、その瞬間――彼の全身が透明に近い光を放った。  

世界が静止する。  
時間が凍りつき、空中で止まった光の粒がすべて反転した。  
「……これが、“始源コード”の本当の使い方か」  

彼は自分の中にある“もう一つの始源”――  
第二ステータスに刻まれていた“世界修正”を完全展開する。  

「宙域システム、再編開始――すべての位相、均衡化」  
言葉と同時に、時間そのものが反転した。  
空を覆っていた闇が、瞬く間に砂のように崩れ、光の粒となって吸い込まれていく。  

黒い瘴気が一塊に集まり、中央で再び形を成す。  
だが、それは戦意を失っていた。  
――人ハ、何故……逆ラウ……?  
「生きたいだけだよ。みんな、誰も失いたくない。それだけだ」  

エイルの言葉に、闇の声がかすかに震える。  
――ナルホド……我ラハ、間違エタノカ……  
「気づけたんなら、もう十分だろ」  
――終焉ヲ……恐レルナ、修正者ヨ。ソレハ……新タナ始マリ……  

闇が消える。  
空に広がる亀裂が弾け飛び、まばゆい白光が世界を包んだ。  

数秒の静寂。  
やがて、空に広がる光が薄れ、青が戻ってくる。  
夜明けのような柔らかな輝きが世界を照らした。  

「……やった?」  
リュナが空を見上げて息を飲む。  
「断層域の反応……消失!」  
ミリアの声が震える。  
「本当に、終わったんだ……!」  
人々の叫び声が一斉に上がり、歓声が王都中に響き渡る。  

だが、空の頂点――エイルの姿が見当たらなかった。  

セレスが不安げに叫ぶ。  
「エイル!? 返事して!」  
風にかすかに光の粒が漂い、穏やかな声が空から降ってきた。  
「大丈夫、ちゃんと聞こえてる……眠いだけさ」  
次の瞬間、空気が歪み、彼は地上へとゆっくり浮かび降りた。  

衣は焼け焦げ、髪も乱れていたが、顔にはいつもの脱力した笑みが戻っている。  
ミリアが駆け寄り、涙を浮かべながら抱きしめた。  
「馬鹿! 本気で死ぬかと思った!」  
「死なないって言ったろ」  
リュナも拳で軽く脇腹を小突く。  
「次に暴走したら、あたしがとどめ刺すからね」  
「物騒すぎる会話やめて?」  

ルシアは少し離れた場所から見つめ、微笑した。  
「ようやく、あなたは“伝説”ではなく現実になったのね」  
「伝説なんて願い下げだ。俺は人でいたい」  

セレスが泣き笑いの顔で言う。  
「今のあなたを見ていると、誰も“ただの人”だとは思えないわ」  
「どうしても凡人を認めないなぁ」  
「当然でしょ。あなたは世界そのものを救ったんだから」  

兵士たちや魔族、そして獣人たちが次々にひざまずき、歓声を上げた。  
その光景は、まるで新しい時代の幕開けを告げる儀式のようだった。  

エイルは空を見上げ、少し目を細める。  
青く澄み渡った空。その中心に、もはや亀裂はない。  
ただ、わずかに――ひとつの小さな黒点が瞬いたように見えたが、彼は何も言わなかった。  

「さて……すべて終わったし、寝るか」  
「この状況で寝る勇者がどこにいるの!」セレスが叫ぶ。  
「勇者じゃないし」  

そう答える彼の瞳には、穏やかな光が宿っていた。  
歓声の中で、彼は静かに笑う。  
世界は修復された。けれど、彼の物語はまだ終わらない。  

その笑顔を見上げる彼女たちの瞳には、それぞれの想いが宿っていた――。  
救世主、凡人、そして誰よりも優しい魔導士。  

そしてその夜、月の裏側で、誰も知らぬ“第二の災厄”が微睡むように目を開く。  

続く
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