平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

にゃ-さん

文字の大きさ
16 / 30

第16話 世界樹の加護を得て

しおりを挟む
レオンたちは、果てしなく伸びる森を進んでいた。  
昼なお暗い原生林。木々は空を覆い隠し、差し込む光はわずか。  
その中で一際異彩を放つ一本の巨木があった。  
まるで大地そのものを貫くようにそびえる神木――世界樹ユグレア。  

「ここが……神々が生まれた場所」  
リリアが息を呑む。  
「想像していたよりも、ずっと大きいわね……」  

風が吹くたび、枝葉が光を纏って鳴り響く。  
それはまるで、世界が呼吸しているような音だった。  

フィオナは神妙な面持ちで膝をつく。  
「主よ。ここに漂う魔力を感じますか? これは純粋な“理の源流”……神々の記憶と呼ばれるものです」  
レオンは頷き、手を伸ばした。  
掌に触れる空気が温かい。  
まるで森そのものが彼の到来を歓迎しているかのようだった。  

「……懐かしい匂いだ」  
「懐かしい?」リリアが眉をひそめる。  
「昔、まだ村で子供だった頃に見た夢とそっくりなんです。青い光の中で、誰かが“いつか戻ってこい”って言ってた」  
「もしかして、その“誰か”が神樹なのかもしれません」フィオナが静かに言った。  
「かつて神々が地上に降り立つ前、この樹の内部に封印されていた“意志”がありました。名を、“根源の精霊”と呼びます」  

その時、森全体が微かに震えた。  
大地が響き、鳥たちが一斉に飛び立つ。  
レオンの足元に青い紋章が浮かび上がると、樹皮の奥から低い声が聞こえた。  

「……ようやく帰ってきたか、創世の子よ」  

声は男か女かわからない。  
しかし、そのすべてを包み込むような温かさがあった。  
レオンは胸の奥で何かが震える感覚を覚えた。  

「あなたは……世界樹の意志?」  
「そう、我は始まりの根。神々もこの肉体を通じて生まれた。お前は、我の欠片。創世の理の継承者だ」  

フィオナが目を見開く。  
「欠片……? 主が“樹の一部”と?」  
「そうではない。“樹”が主であり、副まといしものが神。この世界は、一つの心から分かたれた体のようなものなのだ」  

リリアは息を呑む。  
「ってことは、レオンは……この世界そのものの意思?」  
「いや、今の俺はただの人間です。神だとか、世界とか――それより、知りたいんです」  

レオンはまっすぐに光を見つめた。  
「どうして神々は、人間を見下ろす存在になったんですか? 本当は、共に歩くはずだったのに」  

沈黙の後、世界樹の声が低く鳴り響く。  
「それは、“恐れ”だ。かつて神々も命ある存在だった。お前と同じ、迷いと欲を持つ者たち。  
だが、神になった瞬間、彼らは永遠を得た。永遠は安らぎではなく、果てのない不安。ゆえに、己より短き者を支配し、意味を得ようとしたのだ」  

レオンは静かに頷いた。  
「……わかる気がします。永遠に生きるより、誰かと生きたい」  
「ならば、選べ。創世の子よ。お前には二つの道がある」  
樹の根の奥から、淡い光が二筋、天へと伸びる。  

「ひとつは、“神を超え、全を統べる存在”として理を安定させる道。  
もうひとつは、“人として己の肉体を限りあるままに”歩み、世界を変えていく道だ。  
お前の選択が、すべての未来の鍵となる」  

リリアが無言でレオンを見つめる。  
フィオナもまた、静かに両膝をついて頭を下げた。  
「主よ。どちらの選択を為すにせよ、私は従いましょう」  

長い沈黙の後、レオンは深く息を吸い込み、空を見上げた。  
枝葉の隙間から覗く小さな光。  
それは遠い過去を思い出させた。  

――村で見た夕暮れ。笑い声。温かな手。守りたいと思えた日常。  

「俺は“人”でいたい。それが俺の答えです」  
「創世の血を持ちながらも人を選ぶか」  
「神って言われるほどの力なんていらない。ただ、隣にいる人たちの笑顔を守れれば、それでいい」  

世界樹がゆっくりと唸り、光が大地を包んだ。  
「ならば与えよう。お前が“人”として歩むための力――“世界樹の加護”を」  

枝葉が輝き、無数の種が風に舞った。  
それは光の粒となり、レオンの体へ吸い込まれていく。  
不思議と痛みも苦しみもなく、ただ、心の奥が満たされるような感覚。  
掌の中に浮かぶ光が形を変え、緑色の紋章となって刻まれた。  

「その証は“命の加護”。創造でも破壊でもなく、育む力。  
お前が在る限り、滅びぬものがここにあるだろう」  

光がゆっくりと消えていく。  
風が穏やかに吹き、森の響きが戻った。  

リリアが呆然と立ち尽くしていた。  
「……またさらっと神秘的な儀式を突破したわね……あんた何なんだ本当に」  
「正直、自分でもよくわかりません」  
レオンは笑い、手を見つめる。  
確かに加護が宿った。けれど、その力は静かで、優しい。  
「これで誰かを救えるなら、俺はこのままでいいと思います」  

フィオナが隣に立ち、穏やかな声で言う。  
「主よ。これで神々の支配に抗う力を得ました。しかし同時に、神々はおそらく黙ってはいません」  
リリアが肩をすくめた。  
「神々の根っこを揺らしたも同然だもの。反応がないわけないわ」  

「それでも構わない」  
レオンは静かに世界樹を見上げた。  
「俺の中に宿ったこの力は、誰かを滅ぼすためじゃない。繋ぐためにある。なら、恐れる理由はない」  

その言葉に、世界樹の幹がわずかに輝いた。  
まるで微笑むように。  
「行け、人の子よ。天と地の橋は再び繋がった。  
次にお前が目にするのは“堕ちた楽園”。そこに神々の真実がある」  

風が吹く。光が消える。世界樹が静寂の中へ戻っていく。  

レオンたちは森を後にした。  
背後では、枝葉の間から小さな芽が芽吹いていた。  
それは新たな命、次なる希望の象徴。  

「世界を救うとか、均衡を保つとか、そういう立派な言葉は苦手なんだよな」  
「でも、あんたが歩く先でみんな笑う。それが結果的に救いなんでしょうね」  
リリアの声に、レオンは笑った。  
そして三人は再び歩き出す。  

その遥か上空――  
神界の高座で、白い衣の影が一人、沈黙を破った。  
「世界樹の加護を受けたか……ならば、次は“堕天の試練”を与えよう」  

その言葉と共に、天の光が暗転した。  
穏やかな風が止まり、空の静寂が次なる嵐を予兆していた。  

続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...