追放された最弱村人、実は世界最強でした 〜神々に愛された無自覚チート、気づいたら聖女も魔王も嫁希望だった件〜

uzura

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第3話 神の加護を受けし者

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朝日が差し込む木漏れ日の中、リオは川で顔を洗いながら深呼吸した。  
冷たい水が肌をなで、体の内側まで澄み渡るような気分になる。  
森の匂い、土の感触、そして水の透明さ。昨日までと同じ世界のはずなのに、すべてが新しく見えた。  

「……なんか、本当に世界が違って見えるな。」  
「それはあなたの感覚が覚醒している証拠にゃ。」  
肩の上にちょこんと座るシリスが、尻尾をゆらゆらと揺らしながら答えた。  
「世界は“命”で作られている。あなたがその命を感じ取れるようになったから、色も匂いも鮮やかに見えるにゃ。」  
「なんだか、ありがたいような……落ち着かないような気分だ。」  
リオは苦笑しつつ、再び森の奥へと歩き出した。  

村娘を助けたことで、小さな噂が広がり始めていた。  
“白い光を纏った旅人が、盗賊を退けて少女を癒した”――それが、村の人々の間で「神の使徒」の話として伝わり始めていた。  
もちろん、リオはそんなつもりはなかった。ただ、助けたくて手を差し伸べただけ。  
けれどその行動が、彼の運命をまた一歩、思わぬ方向へと進めていく。  

昼を過ぎた頃。森を抜けて、小さな神殿の前に出た。  
木造りの簡素な建物だが、周囲の空気が澄んでいる。不思議と懐かしい感覚だった。  
「ここは……」  
「古代の守護神“ミリア”を祀る神殿にゃ。」  
「ミリア……どこかで聞いたような……」  
「あなたの“前の加護主”にゃ。」  
「前の?……どういう意味だ?」  

シリスは木の枝の上に飛び移り、枝先から金色の目でリオを見下ろした。  
「あなたが赤子の頃、まだ力が不安定だったとき、ミリアが命を守ったにゃ。あなたが今ここに生きているのは彼女のおかげにゃ。」  
リオは静かに視線を落とした。  
胸の奥がじんわりと温かくなる。知らなかった過去。誰かが自分を守ってくれていたという事実。  
「……恩を返せるといいな。」  
「その気持ちがあれば十分にゃ。神は“想い”を糧に生きるにゃ。」

神殿の扉を開けると、ひんやりとした空気が流れ出した。  
中には古びた祭壇があり、中央に一輪の白い花が供えられている。  
リオは膝をつき、手を合わせた。  
すると突如、光が祭壇からあふれ出す。  
その中に人の姿が現れた。  

透き通るような銀髪、青い瞳を持つ女性――それがミリアだった。  
「――ようやく、あなたに会えましたね。」  
優しい声が響き、光が舞い散る。  
リオは言葉を失う。そこに立つのは、まるで月光そのもののような美しい存在だった。  

「貴方が、ミリア……?」  
「はい。あなたが成長して、こうして歩いている姿を見られるなんて……あの時、力を尽くした甲斐がありました。」  
ミリアは微笑みながら、リオの頬に手を触れた。  
その指先は、柔らかく、そして暖かい。だが人間の手ではない。  
「あなたの中の“創世の力”、それは本来、神々が人に与えるには大きすぎるもの。けれど、あのままならあなたは幼くして命を失っていました。だから私は願ったのです――この子の運命が、いつか世界に光をもたらしますように、と。」  

リオは息を呑んだ。  
知らない間に、誰かが命を懸けて守ってくれていた。  
それを聞いた瞬間、彼の目の奥に涙がにじんだ。  
「俺は……その願いに応えたい。」  
「ふふ……その言葉だけで充分。」  
ミリアは優しく微笑み、リオの胸に手を置いた。  

「あなたの力には“覚醒の段階”があります。今はまだ第一段階、“生命の加護”まで。でも、本領はその先――“創造”に至るとき。」  
「創造……?」  
「そう。世界の“理”を生み出す力。けれどその道は同時に、試練でもあります。あなたが本当に望むものが何かを問われるでしょう。」  

シリスがしっぽを振って加わる。  
「にゃー。だからこそ、今から心を固めておくにゃ。力は人を映す鏡。もし憎しみで使えば、あなた自身を呑み込むにゃ。」  
「わかってるよ。」  
リオは短く答え、拳を握りしめた。  

その瞬間、祭壇の花が強く輝いた。  
ミリアの光が体の中に流れ込み、胸の奥で脈動する。  
まるで命がもう一つ生まれたかのような感覚。  
「……あたたかい……」  
「それが“神の加護”。あなたの心と、私の祈りが繋がった証です。」  
「俺に……何ができる?」  
「まずは、見捨てられた人々を助けなさい。あなたが流れに逆らうほど、この世界は少しずつ正しさを取り戻します。」  

ミリアの姿が淡く溶けていく。  
「待って、まだ聞きたいことがある!」  
「道を信じて。あなたはもう、ひとりではありません。」  
そう言い残して光が消えた。神殿には再び静寂が戻る。  

リオはしばらくその場に立ち尽くしたあと、静かに息を吐いた。  
胸の奥の光が穏やかに脈を打っている。  
「……これが、神の加護か。」  
「よかったにゃ。あなたが“生まれ直した”瞬間にゃ。」  
シリスが肩の上で嬉しそうに喉を鳴らす。  
「もう迷わないにゃ。あなたはあなたのままで、世界を救えるにゃ。」  

リオは立ち上がり、神殿を後にした。  
扉を閉めた瞬間、森の空気が柔らかく流れ、遠くで鳥たちが一斉に鳴いた。まるで祝福のようだった。  

その後、彼は再び村に戻り、助けた少女――メリアという名だと知った――の家を訪ねた。  
メリアの母親は病に倒れており、寝台の上で苦しそうに息をしていた。  
「お願いです、助けてください。神殿の祈りでも治らないんです……」  
女性の手を握るメリア。その目には必死の祈りがこもっていた。  

リオは何も言わず、そっと女性の額に手を当てた。  
光が溢れ、室内に柔らかな風が吹いた。  
すると、女性の顔色が見る見るうちに良くなり、深くゆっくりとした息を吐いた。  
「……あ……体が、軽い……」  
「母さん!」  
メリアが母親に抱きつく。  
その光景を見ながら、リオは小さく笑った。  

「これが……救うってことなんだな。」  
シリスが小さく頷く。  
「そうにゃ。復讐もいいけど、こうして笑顔を取り戻す方が、あなたの本質に近いにゃ。」  
「わかってるさ。でも……向こうがまた俺を狙うなら、容赦はしない。」  
リオの瞳に一瞬、冷たい光が宿る。  

遠く離れた王都では、勇者アルトが机を叩きつけていた。  
「何?村人リオが“神の加護”を得ているだと?」  
部下が険しい顔で頷く。  
「はい。村人の間では“祝福の旅人”と呼ばれています。聖女リア様がそれをお聞きになって……心を痛めているようで。」  
「ふん、哀れなものだな。追放された負け犬が今さら何をしようと、俺たちの正義を揺るがすものか。」  
だが、その声にはわずかな焦りも滲んでいた。  

空の下、リオは村の丘に立ち、風を感じていた。  
胸に宿る光、手のひらに蘇る温もり、そしてこれからの旅路。  
「……行こう、シリス。」  
「にゃっ。行き先は?」  
「まだわからない。でも――この力が誰かを照らせるなら、それでいい。」

光の粒が彼の背中を押すように舞い上がり、森の向こうへと消えていった。  
リオの旅は、まだ始まったばかりだった。

続く
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