追放された最弱村人、実は世界最強でした 〜神々に愛された無自覚チート、気づいたら聖女も魔王も嫁希望だった件〜

uzura

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第4話 最弱スキルの真の力

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リオは村を離れ、再び森を抜ける山道を歩いていた。  
昨日までの自分なら息が上がっていたはずの坂道も、今日は不思議と軽い。胸の奥で光が脈を打ち、体のすみずみまで力が満ちていく感覚があった。  

「ふむ、身体の循環が完全に変わったにゃ。」  
肩に座るシリスが、金の瞳を細めて観察するように言った。  
「お前はなんでも知ってるな。」  
「神の使いにゃもん。あなたの身体は人間の限界から“逸脱”したにゃ。もう普通の剣や魔法ではどうにもならないにゃ。」  
「……そんなこと言われても、俺には派手な魔法も剣も使えないけどな。」  
「それが面白いところにゃ。あなたは無自覚のまま“すべてを繋ぐ”力を持っている。スキル〈採取〉に隠された真の意味、そろそろ教える時が来たにゃ。」  

リオは立ち止まり、木の幹に手を当てた。  
「〈採取〉って、草や石を拾うくらいの能力だろ? 戦闘向きじゃない。」  
「表面上はそうにゃ。でも、“採取”というのはつまり“世界から抽出する”力。生命の本質を取り込み、変換する能力にゃ。」  
「……抽出、変換?」  
「簡単に言えば、“命の本質”を素材として取り出すにゃ。草なら癒やし、石なら大地の守護、炎の灰なら破壊。あらゆる命の性質をあなたは吸収し、自分のものにできるにゃ。」  

リオは木に手を当てたまま、集中した。  
空気が静まり、風の音が遠ざかる。  
意識を向けると、木の中に流れる柔らかな温もりが感じ取れた。  
次の瞬間、掌が淡く光り、微細な粒が彼の手に吸い込まれていく。  

「……これ、まさか……」  
「そうにゃ。それが生命の“根源素”にゃ。あらゆる存在を作り出す材料。あなたはそれを無意識に扱ってたにゃ。」  
木の幹から手を離した瞬間、枝葉が一斉に伸び、小鳥が喜ぶようにさえずった。  
木はむしろ強く、元気になっていた。命を奪ったのではなく、分かち合ったのだ。  

「なんだ……奪うんじゃなくて、循環させてる感じがする。」  
「それがあなたの特性にゃ。創世の力とは“創るだけ”ではなく、“命を繋ぐ”こと。――でも、気をつけるにゃ。力の使い方を誤れば、すべてを“吸い尽くす”ことにもなるにゃ。」  
リオは小さく頷き、真剣な表情で拳を握った。  

山道を抜けると、小高い丘の上に小さな集落が見えた。  
畑には人影がなく、住民たちは村の中央に集まっていた。  
なにごとかと思い近づくと、巨大な猪の魔獣が暴れている。背に黒い瘴気を纏い、明らかに普通の動物ではなかった。  

「危ない! 誰か魔法で止めろ!」  
「だ、だめだ、魔石が効かない!」  
村人たちの悲鳴が飛び交う。  

リオはすぐに駆け寄る。  
「俺がやる。」  
「な、何だあんた!」  
「話してる暇はない!」  

リオは手を地面に押し当てた。意識を深く沈める。周囲の植物、土、空気。  
そのすべてが彼の体と一体化していくような感覚。  

「――〈採取〉。」  
たった一言。  
地面から緑色の光が広がり、猪の足元を覆った。  
次の瞬間、黒い瘴気が淡い粒子となって剥がれ落ちていく。  
魔獣が苦しそうにうめき声を上げた。だが、暴れることはやめ、人の目をじっと見つめて動かなくなった。  

「……まさか、治したのか?」  
誰かの小声が響く。  
リオはゆっくりと立ち上がり、猪の額にそっと手を当てた。  
そこに宿っていた闇が完全に消え去ると、猪は穏やかな鳴き声を上げて森のほうへ走り去った。  

「すごい……」「いま、何をしたんですか?」  
村人たちが一斉に近づく。  
だがリオは特別なことをしたつもりはなかった。  
「ちょっと力を貸してもらっただけだ。ここの土地、長く穢れていたみたいだな。」  

すると、一人の老人が震える声で言った。  
「あなた……まさか、“神の加護を受けた者”なのか……?」  
「そう呼ばれても、実感はないけどな。」  
リオが肩をすくめると、周囲から拍手と歓声が上がった。  

その光景を見ながらシリスが尻尾を立てた。  
「よかったにゃ。これでまた命の流れが整ったにゃ。」  
「……あの猪、どうして暴れてたと思う?」  
「人の怨念を吸ってたにゃ。あの村人たち、最近誰かを追い出したんじゃないかにゃ。」  
リオは一瞬、顔をしかめた。  
「――“追放”。」  
その言葉だけで、自分の胸の奥が暗く疼く。  
「嫌な循環だな。俺たちはああなりたくない。」  
「だからあなたが必要にゃ。」  

その後、村人たちは再び畑に戻り、平穏が戻った。  
感謝の言葉を何度も受けたが、リオは長居せずに丘を離れた。  
群青色の空の下、風が髪を揺らす。  

「シリス。少し分かってきた気がする。」  
「にゃ?」  
「俺の“最弱スキル”。あれは、ただの採取じゃない。命を繋ぐために与えられた力――そうだろ?」  
「にゃ、ようやく気づいたにゃ。」  
「なら……この力で、俺と同じように苦しむ人を助けたい。」  
リオの声に迷いはなかった。  

そのとき、不意に空が揺れた。  
雷のような轟音と共に、頭上が一瞬白く光る。  
「シリス、何だ!?」  
「にゃ、にゃんだか嫌な気配にゃ!」  
空間が歪み、黒い渦が広がる。そこから何かが落ちてきた。  

それは、人の姿をした少女だった。  
金の髪が乱れ、ボロボロのローブをまとい、細い体を抱えるように倒れている。  
リオは慌てて駆け寄り、抱き起こした。  
「おい、大丈夫か!?」  

目を開けた少女の瞳は透き通るような薄青色。だが焦点が定まらない。  
「……神よ、どうか……祈りを……」  
その声はかすかで、血がにじむ唇からこぼれた。  
「ひどい怪我だ……!」  
リオは手をかざし、再び光を放つ。  
彼の掌から流れた輝きが少女の身体を包み、傷がゆっくりと癒えていく。  

「にゃあ……まさか空から落ちてくるなんて、ただ者じゃないにゃ。」  
リオは頷きながら少女の髪を払いのけた。  
その額には、かすかな聖印が刻まれている。それは神殿の聖女だけが持つ印。  

「……あなたは……誰……?」  
彼女のかすれた声に、リオは答える。  
「俺はリオ。通りすがりの村人だ。」  
「リオ……その名……どこかで……」  
そのまま彼女は意識を失った。  

リオは彼女をそっと抱き上げる。  
「どうするにゃ?」  
「神殿の聖女がこんな傷を負って落ちてくるなんて、放っておけるか。」  
「ふむ、宿命の再会ってやつかにゃ。」  
「宿命?」  
「にゃ。あの印、あなたを裏切った“聖女リア”の教団と同じ紋章にゃ。」  

リオの目がわずかに揺れた。  
「……まさか……リアが関係しているのか?」  
「少なくとも敵か味方かはわからないにゃ。けど、この出会いは運命をまた一段、動かすにゃ。」  

風が吹いた。聖女の金髪が夜明けの光を受けて揺らめく。  
その姿を見つめるリオの瞳に、再び決意の炎が宿った。  
かつて最弱と呼ばれた男の旅が、今、新たな邂逅によって大きくうねり始める。  

続く
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