気付いたら、ゲーム世界の顔グラも無いモブだった

玄月白兎

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第一章

第十一話

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「さて、シントールとハイナは放課後に少し残ってもらおう。体育祭に向けての戦略を話し合いたい」

 ホームルームが終わりそそくさと帰ろうとしていたのだが、早速ビハイムからの呼び出しがかかった。
 フリートにとっては少し意外な事でもある。てっきりお前たち後は任せた的な事を言うのかと思ったが、話し合いたいと来た。最も嬉しいことではあるが、複雑な部分もある。ビハイムが参加しない場合失敗したときの責任が全てフリートとラングにのしかかってくる代わりに好き勝手することが可能になるのだ。極論、面倒ごとを覚悟に体育祭準備を放棄することだってできる。後でビハイムから何をされるか分かったものではないが、その分空いた時間を他の事に回せるというメリットは大きい。
 だが今回はビハイムも参加するらしく、教室の隅に座ってわざわざ待っている。

ーーマジか。いや良いんだけどさ、これを機になんで婚約破棄することになるのかとか探ってみてもいいし。ただ面倒だなあ……、先生残っててくれないかな……。

 面倒ごとを予感し、チラっとジンにアイコンタクトを送る。この学園では生徒の自主性を重んじるということで教師が関わることは少ないのだが、皇族関りの面倒ごとを予感したのはフリートだけではなかったらしい。溜息と共に頷いてこちらに来てくれた。

「ビハイム殿下、集まりましたよ。ジン先生も話に立ち会ってくださるそうです」
「さっきは詳細を話していなかったからな。その説明もかねて一応立ち会おう」
「うむ。ではそうだな、まずはその詳細とやらを聞こうか」

 流石は皇族と言ったところか、教師相手であろうと躊躇のない壮大な物言い。生まれた時から人の上に立ってきた故と言ったところであろうか。

「ではそうだな、まずは大体のルールから説明しよう」

 リーク帝国第一学園の体育祭はクラス対抗で競技を行い、それぞれでつけられた点数の総合を競う。
 競技と言っても、現代日本の体育祭でやられるようなものではない。というかそもそもやるものの根本が違っている。現代日本では、所謂スポーツを行うことがほとんどだろう。しかしこの世界ではそもそもスポーツが発展していない。よって行われるのは武術による競技が主となる。
 例を出すのであれば、剣舞、模擬集団戦、騎乗試合といったところか。
 ちなみに魔法の使用は原則認められいない。武術の前提となる身体強化は別だが、それ以外での魔法の使用が認められた場合即刻反則負けとなる。

「競技は後でリスト化したものを渡すが、全部で八種類だ。人数調整以外の理由で同じ人が二種目に出ることは認められていないからな。高順位を目指すならばしっかりとその人にあった種目を見き分ける必要がある」
「捨てる競技と絶対に取る競技という差別化も可能というわけか。なるほど、ポイントの差は当然競技ごとにあるのだろうな?」
「ああ、これも後で渡すが、基本的に人数に比例してポイントは大きくなると考えてもらえばいい。つまりは模擬集団戦が一番多いわけだな」

ーーなるほど、個人プレーで勝ちに行くかチームプレーで行くか、か。ただぶっちゃけA組は化け物揃いだしな。個人プレーで勝てる見込みは殆どない。てことは、まあチームプレーで勝つしかないだろう。

 どうやらビハイムも同様の結論としたらしく、話し合いはチームプレーでいこうということに決定した。
 流石に大陸覇者の遺伝子を継いでいるだけはあるということだろうか。見えを張るために個人プレーと言い出すかもしれないと危惧していたフリートにとっては嬉しい誤算だ。

ーーというか、コイツの地頭は悪くないんだろうな。それにこうやってしっかり話し合っているし、案外悪いやつでもないのか……? 確かに変な頼みとかなかったしな。まあ俺らが避けてたってのもあるんだけど。

 だが、彼が全ての元凶であることは変わらない。ここが『revolues』の世界である以上そうなのだ。いや、そうあるべきであると言ってもいいかもしれない。

「で、その場合個人技はどうするんです? 捨てるにしても誰を置くか。勝利のための戦略とはいえ、やりたがる人なんてそういないでしょう」

 現代日本でよく問題になる少数意見問題。多数のためとはいえ、尊重せねばいけないというやつだ。
 質問したフリートにとっても、この問題に答えは見つからない。結局どこかでどちらかが妥協しなければいけないし、またそれは少人数側であることが多い。

ーーある意味性格で判断が決まるとも言えるが、さあどうだ……?

 解決する最適解がないのであれば、それはもう主観的判断で最終決定をするしかない。
 そう考えての質問だ。勝手に決めつけていたビハイムのイメージが揺らいでいるからこそ、この関わりで彼がどういう存在なのかを見極めておきたかった。想定通りの悪役ならばよし。だが、もしそうでないのならば。
 つまりはこの半年で何かが起きるということだ。確かに未来視というアドバンテージを失うが、これは少し訳が違う。いい奴が悪化してくのを見過ごすのは、少し、フリートにとって苦痛だった。

「ビハイム殿下、あなたはどう思う?」

 どっちであることを望んでいるのか。フリートは、自分でもよくわからなかった。
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