気付いたら、ゲーム世界の顔グラも無いモブだった

玄月白兎

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第一章

第十二話

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 第二皇子ビハイム・ルフト・リーク。
 彼は『revolues』においてまさしくすべての元凶と言える存在だが、内乱勃発後にどうなったのかはゲームにおいて描かれていない。恐らく反乱がおきた責任として処刑されたのではないかとフリートは考えているが、真相の程は不明だ。
 だが、たとえどのルートを辿ったにせよ彼が表舞台に出てこなくなることは確定だ。学園におけるちょっとした悪役というキャラを制作側としては求めていたのだろうが、ある意味不遇なキャラクターであるとも言えるのかもしれない。

「そうだな。では、どの種目をやりたいかの投票を取ることとしよう。それぞれ第三希望まで書いてもらい、その中に納まる範囲内で調整すればある程度満足する割り振りになるのではないか?」

ーーなんでこんなことを言える奴が、婚約破棄なんてしたんだ……? このセリフが打算からなのか感情からなのかはどうでもいい。どっちにしろ、こんな奴が婚約破棄なんてことを、ましてや収穫祭という場所でするわけがない。

 勝ちを重視するなら投票なんて取らなくてもいい。皆がやりたいものを重視するなら投票から調整する必要はない。
 ビハイムが言ったのはそのどちらでもない。両方の複合だ。ある意味どっちつかずの中途半端な意見だともいえるが、客観的に見た時の落としどころとしてはこんなものだろう。そしてこれはつまり、ビハイムは客観的な、公平な視点を持っているということだ。無論まぐれであるという可能性もあるが、大事なのはその可能性ではなくビハイムが実は善良な人間であるという可能性が生まれたことだ。
 ラングがへえ、と小さく呟くのがフリートの耳に伝わる。
 フリートも彼の立場であったら同様の事をしただろう。だが、ゲーム知識が単にその評価を下すことを許さない。

ーー俺というイレギュラーがいるにしても、俺はほとんどビハイムに関わっていない。つまり現時点ではゲームとほとんど同様であるはずだ。……ならここから半年で変わるのか? それとも誰かの陰謀的なのが働いているのか。クソ、情報が足りない。密偵でも雇うか?

 現状フリートが個人で動かせる人間は多くない。というか、家臣という存在で言えばヴァンだけである。一応伯爵家らしく専属執事などはいるのだが、彼らは父親の家臣であってフリートの家臣という訳ではない。皇族に、それも第二皇子について調べろなどと命じたら間違いなく父親の耳に入るだろう。どんな反応がされえるのかは分からないが、間違いなく好意的な反応はされない。

ーー長期契約を結んで密偵を雇うか、それか直臣として誰か声をかけるかだよなあ……。だがどっちにしても信頼性に欠ける。まあそういう意味ではゲームに出てきたキャラを雇えばいいんだが……。が今どこにいるのか分からないしな……。一応帝都にいないかヴァンさんに探してもらうか。

 ここまで考え、取り敢えずビハイムの意見に賛成しておこうと口を開ける。

「分かりました、それでいきましょう。では明日のホームルームで投票を取るということでよろしいでしょうか?」
「うむ。本日は以上だ。ご苦労だった」


   * * *


「ヴァンさん、少し頼みがあるんですけど、良いですか?」
「いいぞ。なんだ? ……というか、敬語使った方が俺の胃に優しいんだが、使っちゃダメか?」
「ははは」
「ダメですか?」
「ヴァンさん?」
「……」

 何を言っても変わらないとヴァンは説得を諦める。彼が胃痛から解放されるのは果たして何時のことになるのだろうか。流石に伯爵家を継いだら言葉遣いは変えなくてはならなくなるだろう。が、現当主はまだまだ現役だ。当主交代までは早く見積もっても十年はかかる。
 つまりは。彼の胃に穴が開く方が早いかもしれない。
 フリートとしては年上から敬語はヤダなあ、という日本人らしい考えなのだが、生憎この世界は年功序列社会ではなく身分差社会である。フリートもそこは分かっているのだが、まあ所謂、「変に抜けている」という奴である。

「まあともかくですね、頼みたいことがあるんですよ。具体的には人探しなんですけど、良いですか? 範囲は帝都ですが、いるか分からないので数日探していなければいいです」
「問題ない。特徴はどんなだ?」
「えーとですね、白髪のショートヘアに黒目。歳は俺と同じ15で、比較的小柄な体型ですね」

 ゲームに登場したとあるキャラの特徴を言っていく。暗殺者系のキャラクターであり、暗殺の他にも情報収集等の暗躍で役立つキャラだ。主に帝国側に立った時のルートで味方になるキャラであり、普段はいろんな場所を転々としている。ルートが確定していない現状で関係を持つのはリスキーかもしれないが、このキャラは本来あと一年ほどは出てこない。半年ほどの契約であるならば問題ないだろうという考えだ。

「ああ、それと、性別はどっちだ?」
「ん? ああ、大事なことを忘れていましたね。性別は女ですよ」

 名前は、サーニャ。貧民出身の雇われ密偵である。

「……女……?」

 変な視線をヴァンがフリートに向ける。
 なるほど確かに、はたから見ればフリートはよく分からない同年代の少女を探す変態だ。貴族ならともかく貧民出身というのがさらにその疑念に拍車をかける。
 しかも体型は、小柄、らしい。

「いや、違いますからね? そういう意味で探してきて欲しいわけじゃないですから」
「……分かっている」

ーーいや、視線を逸らすなよ! 妾探しとかじゃねえぞ!?

 生憎、心の声は届いていない。

「ふ、冗談だ。今言った特徴の女だな? ふむ……それなら、確か昨日見かけたような気がするが」
「……え? マジですか」

 無言でうなずくヴァン。
 サーニャは一ヵ所にとどまることはほとんどない。滞在期間は長くても一週間というほどだ。
 つまり、

「い、今すぐその場所に案内してください! 急ぎましょう!」

 次を待っていてはいつ来るかは分からない。今しかチャンスは無かった。
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