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契約結婚も変化していく?
契約結婚も変化していく?2
しおりを挟む「もしかして……あの事件の後、月菜さんと柚瑠木さんの関係になにか変化があったりしたのかしら?」
聖壱さんと瑠瑠木さんが玄関から出てすぐに、香津美さんは私に微笑みながらそう聞いてこられました。なぜそのことが香津美さんに分かったのでしょうか?私達がこうして会うのは二度目だというのに。
「どうして、香津美さんがそれを……?え、まさか柚瑠木さんがなにか……?」
いいえ、柚瑠木さんに性格からしてそんな事を簡単に言うとは思えません。
「やっぱり、そうなのね!分かったわ。ゆっくり月菜さんの話も聞きたいし、お茶を入れてくるから少し待っていてちょうだい。」
もしかして、香津美さんは凄く勘の良い女性なのでしょうか?彼女から見たら、私と柚瑠木さんの雰囲気が前と違って見えたのかもしれません。
「はい、柚瑠木さんから月菜さんはミルクティーが好きだと聞いたからね。」
私の前に置かれた綺麗なベリーのタルトとミルクティー、どちらも確かに私の好物なのですが……
「あの、私はそんな事を柚瑠木さんに話したことは無かったと思うんですけど?」
「え?じゃあミルクティー嫌いだった?」
慌てた様子の香津美さん。すみません誤解させてしまって、ただ私が知りたかったのは……
「いえ、ミルクティーもタルトも大好物です。ただなぜその事を柚瑠木さんが知っていらっしゃったのかと思って。」
私は一度だって柚瑠木さんに何が好物だとは聞かれたことがありません。柚瑠木さんの好物は、使用人の希子さんにこっそり教えていただいているのですが。
それなのに……
「柚瑠木さんは月菜さんが思っているよりも、ずっと貴女の事を見ているんじゃないかしら?だって彼……自信満々な様子で月菜さんは紅茶が好物だと言っていたわよ?」
「……そうなんですか?」
ちょっと信じられない気持ちです。あの事件のあった日、それまで柚瑠木さんは私の事なんて興味ないのだろうと思っていましたから。
あの日までずっと私は柚瑠木さんにとって都合のいいだけの契約妻だと……でも、もしかして最初から少しくらいは私の事を気にして頂けてたのでしょうか?
「柚瑠木さんが、最近月菜さんの事をよく話してくれるようになったって聖壱さんが言っていたの。私が誘った料理教室の件も貴女の事を思ってOK出してくれたんでしょうしね。」
「柚瑠木さんが私の話を……なんて?」
柚瑠木さんは私の事を聖壱さん達にどんなふうに話しているのでしょうか?もしかして不器用でおっちょこちょいだとか……?
「真面目で努力家。どんなことにでも一生懸命で……一緒に居ると前向きになれる人、だそうよ?」
紅茶のカップを持ちながら、その時の事を思い出したように微笑んで見せる香津美さん。ちょっとだけ信じられない気持ちもありましたが、その言葉が嬉しくて……
「本当に柚瑠木さんがそんな事を?彼が私と一緒に居ると前向きになれると言ってくださったんですか?」
「ええ、そうらしいわ。柚瑠木さんて月菜さんの事を話すときは凄く穏やかな顔をするのね、驚いちゃったわ。」
え?私はそんな顔を見せて貰ったことはありません。香津美さんや聖壱さんだけが柚瑠木さんのそんな顔を見れて羨ましいです!
そんな私の考えが香津美さんにバレてしまったようで……
「大丈夫よ、柚瑠木さんにそんな顔をさせているのは間違いなく月菜さんなんだから。近いうちに貴女も見れるわよ、きっと。」
香津美さんは美人でスタイルも良くて、私の事も気遣ってくれて……本当に素敵な女性です。もしかしたら香津美さんの様な女性の方が、柚瑠木さんは何でも話しやすいのではないでしょうか?
「そうでしょうか?私は小さなことでも、香津美さん達に嫉妬してしまっているようです。こんな心の狭い妻って嫌がられますよね……?」
柚瑠木さんはいつもクールな感じがしますし、きっと私みたいにすぐに嫉妬なんてしないのではないでしょうか。こんな嫉妬深い私は、柚瑠木さんに面倒くさい妻だと思われてしまうでしょう……
「そうね……今の彼ならば逆に喜ぶんじゃないかしら?」
「こんな事で柚瑠木さんが喜ぶんですか?いったい何故?」
不思議に思って香津美さんに詳しい事を教えてもらおうとしたのですが、香津美さんはこれ以上は教えてくれる気はないようで……
「これ以上は月菜さんが自分で考えなくては駄目よ?ふふ……あまり余計な事を言うと後が怖そうだものね、柚瑠木さんは。」
確かに、そうですけれど……ここまで聞いてしまうと気になるじゃないですか。
でもこれ以上しつこくするのも良くないと思い、話題を変えることにしました。
「あの事件の後、香津美さんと聖壱さんは本当の夫婦になったと聞きました。私はお二人が凄く羨ましくて……」
「私達はあの事件の前から少しずつお互いの事を理解する努力を始めていたのよ。月菜さん達はあの時からお互いの距離を縮め始めたのだから、そんなに焦る必要はないんじゃないかしらね。」
香津美さんの言っている事は分かります。きっと2人もそれなりの時間をかけてお互いを理解し合い、本当の夫婦になったのでしょうから。私も柚瑠木さんとそうなりたいのに自信が無くて……
「それにね……きっと前に進むことを望んでいるのは月菜さんだけじゃないわ。」
香津美さんの言葉に私は俯きかけていた顔を上げました。2人の関係を進めたいのは、私だけじゃない……?
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