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契約結婚の先へと進んで…
契約結婚の先へと進んで…4
しおりを挟むリビングのドアを開けると、本を読んでいた柚瑠木さんがゆっくりと顔を上げて私を見て微笑んでくれました。かなり遅くなってしまったのに、彼は気にした様子も見せずソファーから立ち上がりこちらへと歩いてきます。
「僕もお風呂を済ませてきますね、そこに暖かい紅茶を用意しておいたので飲んで待っていてください」
「……は、はい」
緊張で少し上擦った声で返事をすると、柚瑠木さんはそんな私を見て楽しそうに口角を上げて……
「……リラックスしすぎて眠ったりしては許しませんからね?」
私の耳元でそんな風に色っぽく囁くんです、私は今の状況だけでいっぱいいっぱいだと言うのに。顔を真っ赤にしてブンブンと頷くことしか出来ないまま、バスルームへと向かう柚瑠木さんの後姿を見つめます。
結婚したばかりの頃は知らなかった少し意地悪な柚瑠木さん、彼の分かりにくい優しさも……少し幼さのある笑みも全てが愛おしいんです。
私は紅茶のカップを手に取り、ソファーに座ります。ほんのりとアップルの香りが……アップルの香りの紅茶の葉は、うちのキッチンにあったでしょうか?
ですが深く考えるのは止めて、柚瑠木さんの読んでいた本に手を伸ばします。彼はどんな難しい本を読んでいるのでしょう?
「……え、あれ?」
さっきまで柚瑠木さんが読んでいた、カバーの付いた本をそっと開いて驚きます。それは私が隠して愛読している、ちょっとだけ不思議な恋の物語で……
柚瑠木さんが普段読んでいるような経済や経営学の本ではありませんでした。
「どうして、これを柚瑠木さんが……?」
私の本はこっそりクローゼットの中に隠しています、柚瑠木さんがそれを見つけ出して読んでいるとも思えませんし。
栞の挟まれたページは私もお気に入りのシーン、柚瑠木さんが私と同じものを読んでいるなんて不思議な気持ちで……
「月菜さんは悪い妻ですね、勝手に夫の本を盗み見るなんて」
「ゆ、柚瑠木さん!これは、あの……っ」
いつの間にかお風呂を済ませた柚瑠木さんにソファーの後ろから腕を回されて、心臓がバクバクと音を立てています。
背後から抱きしめられるような体勢のまま、持っていた本を柚瑠木さんに奪われて……
「駄目ですよ、今は僕だけを見る時間です。こんな本の中のヒーローにまでヤキモチ妬かせないで」
「柚瑠木さん……」
どうすればいいのでしょうか、甘えてくる柚瑠木さんがとても可愛いです。私は回された腕に自分の手を重ねて、そっと呟きました。
「柚瑠木さんを見てます、ずっと貴方だけ……」
その言葉を聞いた柚瑠木さんは首に外していた腕を外すと、私の脇と膝に手を差し込んでそのまま軽々と抱き上げたんです。
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