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番外編 貴方が選んでくれた物だから
番外編 貴方が選んでくれた物だから3
しおりを挟む「……変では、ないですか?」
私は身長も低く童顔が悩みなのです、ですからこのように大人びた格好をするのは初めてでした。自信が無かったのです。でも柚瑠木さんはそんな私の髪にそっと触れて……
「付けてくれたんですね、髪飾り。今日の月菜さんにとても似合っていますよ」
私を見つめ、優しく微笑んでくれました。たまに見せてくれる柚瑠木さんの笑顔はとても素敵なのですが、胸がドキドキ煩くなってしまうのです。
ほら、他の女性も彼の微笑みをうっとりと見つめていらっしゃいます。この笑顔を独り占めして誰にも見せたくないと思ってしまう私は心が狭いですよね……
「それにしてもどうしてそんなに変だと思ったのですか? 香津美さんも一緒に選んでくれたのでしょう」
「あ、はい。ですが……今日は何故かここに来るまでに、色んな人にジロジロ見られているような気がして」
柚瑠木さんは私が昨日香津美さんと出掛けたことを知っていらっしゃったようです。驚かせようと思って、黙っていたのにバレバレでしたね。
そう思って笑って柚瑠木さんの顔を見ると、なぜか彼はさっきまでの笑顔ではなく無表情で私を見つめていました。
「あの……柚瑠木さん?」
何を考えているのか、彼は私の問いかけにも反応しません。私は何かまずい事を言ってしまったのでしょうか?
黙っている柚瑠木さんに困ってしまい、私はただオロオロする事しか出来ません。さっきまでとてもよく似合うと、微笑んでくれていたのに……
「ここは少し寒くありませんか、月菜さん」
「……え? いえ、そこまでは」
そう言ったのに柚瑠木さんは立ち上がると、自分が着ていたカーディガンを脱いで私に羽織らせました。えっと、本当に私は寒くないのですけど?
不思議に思って柚瑠木さんを見上げると、彼は納得したように頷き私に微笑みます。
「あの……? やっぱり変でしたか」
「いいえ、とてもよく似合ってましたよ。月菜さんの大人っぽさに気付けて良かったと」
柚瑠木さんが嘘をついているようには見えないのです。ならばなぜ私の服を隠すようなことをするのでしょう?せっかく香津美さんと選んだのに隠されてしまい、ガッカリしていると柚瑠木さんは咳払いをして……
「その……嫉妬深い夫ですみません。ですが、今日の月菜さんの服は少し肌の露出が多い様なので」
そう言って困ったように私を見つめる柚瑠木さん。確かにシアーシャツの下にはキャミソールを着ていますが、肌は透けて見えます。だから彼は心配してくれたのでしょうか?
「ふふふ、そんな心配しなくてもいいと思いますけど」
柚瑠木さんみたいに素敵な人なら分かりますが、背の低い童顔の私を見る人なんていないと思うのです。
「月菜さんは自分の事をちゃんと分かっていないから……」
呆れたようにそう言われて、ちょっと戸惑ってしまいました。柚瑠木さんも匡介さんの様に心配性の旦那様なのですね。
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