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番外編 貴方が選んでくれた物だから
番外編 貴方が選んでくれた物だから7
しおりを挟む「……はい、ちょっとだけ」
柚瑠木さんに見つめられると嘘をつくことは出来なくて、私が少し嫉妬してしまったことを正直に伝えました。面倒な妻だと思われたらどうしましょう……
ですがそんな私の心配は杞憂だったようで、柚瑠木さんは嬉しそうに目を細めてこちらを見ていました。
「月菜さんが心配するようなことは何もありませんが、こうやって貴女の拗ねた顔が見れて嬉しいです」
そんな風に言われたら、私はどんな顔をすればいいのでしょうか? 柚瑠木さんの前でどんな表情をしても、こうやって喜ばせてしまうだけなんですから。
『ちょっとー、電話しながら二人の世界作るの止めてくれない? 柚瑠木兄さんのデレデレした顔とか想像したくもないし』
柚瑠木さんのスマホから女性の声が聞こえて、二人がまだ電話の途中だという事を思い出しました。さっきの会話も全部彼女に筒抜けだったようで、笑い声が聞こえてきました。
「彼女は二階堂 千夏、僕の従姉妹です。訳あってあまり人前に顔を出すことはありませんが、信頼できる女性ですよ」
「柚瑠木さんの、従姉妹?」
とても親しそうに話をしていたのは、昔からの付き合いだったからなのでしょうか。私はそんな事も知らずに嫉妬ばかりして……
『はじめまして、月菜さん。私は千夏、こんなんだけど一応二階堂の血を引いてるらしいわ」
「千夏さん、はじめまして! 私は柚瑠木さんの妻の月菜です。あの、もしかしてこのヘアアクセサリーは千夏さんが……?」
ハキハキとした口調の千夏さん、だけど何か引っかかるようなその言い方にもしかして彼女はあまり二階堂の名を好きではないのかと感じました。
『ええ、柚瑠木兄さんから頼まれてね。聞いた話から月菜さんをイメージして作ってみたの、早速付けてくれて嬉しいわ』
「そうだったんですか、柚瑠木さんがわざわざ頼んで……」
思わず柚瑠木さんを見上げると、彼は照れ臭そうに口元を手で隠してました。そんな柚瑠木さんに胸がキュンとしてしまうのは仕方ないですよね?
『そう、こっちはイメージが聞きたいのに柚瑠木兄さんは惚気ばかりで全然話が進まないから困ったのよ? 気に入ってくれたかしら』
「はい! どちらも私は凄く素敵だと思いました。千夏さん、今度私にも作り方を教えてもらえませんか?」
柚瑠木さんが私の為に何がいいのか考えてくれたことも、千夏さんが私を想像して作ってくれたことも嬉しかったんです。
私は千夏さんともっとお話ししたい気持ちもあって、そうお願いしてみたのです。
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