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番外編 貴方が選んでくれた物だから 後編
番外編 貴方が選んでくれた物だから 後編3
しおりを挟む柚瑠木さんと二人で入ったのはレトロな雰囲気の喫茶店、店内はいくつかのテーブル席がありお客さんの姿も。落ち着いた音楽とシンプルな内装が私の好みです。
「ここはモンブラン専門店なんですよ、月菜さんはモンブランは好きですか?」
「はい、私は栗が大好きなんです! モンブランも栗きんとんも栗ご飯も……」
柚瑠木さんに尋ねられて、ついつい聞かれてない事まで答えてしまいます。途中で気付いて言葉を止めましたが、隣を歩く柚瑠木さんにはバッチリ聞かれてしまって。
「そうですね、では今度のデートの予定に和喫茶も予定に入れておきましょうね?」
そう微笑みながら言われては恥ずかしさで俯きながら「はい、お願いします」としか答えようが無くて。彼に似合うような大人の女性になれるのはまだまだ遠そうです。
柚瑠木さんが予約をしてくれていたのですぐに席に案内されましたが、彼はそのままさっさと注文を済ませてしまいます。
「ここでのメニューは僕に選ばせてくださいね? 月菜さんに見せたいものがあったので」
「私に見せたい、ものですか?」
聞き返すと柚瑠木さんは「月菜さんの誕生日ケーキですから、きてからのお楽しみです」なんて、また私の胸をドキドキさせてくれるんです。
ワクワクしながら待っていると、店員の男性がお皿に乗った丸い何かを持ってきて。クリームに包まれたようなその球体は、モンブランには見えないのですが……
「こちらは、このままで少々お待ちください」
にっこりと笑顔の素敵な店員さんに思わず「はい」と微笑み返します。すると目の前に座っている柚瑠木さんから何やら視線を感じて……彼を見ると何故か不機嫌そうで。
「どうかしましたか、柚瑠木さん?」
「今……少しだけ、この店を選んだことを後悔しそうになっただけです」
ふう、とため息をついて困ったようにそう話す柚瑠木さん。さっきまで楽しそうにしていたのに何故そんな急に思ったのかが分かりません。
私が何か柚瑠木さんを不満にさせるような事をしたのでしょうか。
「ええ? せっかく連れて来てくれたのになぜそんな事を?」
「貴女が店員にそんな可愛らしい笑顔をみせるから、ヤキモチ妬いてるんですよ。僕は」
そんな風に拗ねてみせる柚瑠木さんはとても可愛くて、私の胸がキュンキュンしてしまい。思わず口元がふにゃふにゃとニヤついてしまうんです。
「……なにを笑ってるんですか、月菜さんは?」
「だって、嬉しくて。今日は柚瑠木さんが私の事を独占したがるような事ばかり言うから」
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