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深まる謎と聖女の証に
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しおりを挟む手を組む、それはロッテも何かレーヴェの役に立つ必要がある。だが今の自分に何か出来ることがあるのかロッテには分からない。
聖女だと言われても思い通りに力を出すことも出来なければ、追放された令嬢という立場でしかなく利用価値などあるとは思えない。それでもこのまま放っておかれてはそのうち命を落とすのは目に見えている、選ばせてくれるだけ有難いのだと思いロッテは彼の手を取った。
苦労をすることがそんなに辛いとは思わないが、ロッテだってやりたい事も夢もある。今ここで意味もなく死んで一生を終えるより、迷惑をかけると分かっていてもレーヴェの傍にいたいと思った。
「私は……本当に聖女かも怪しいし、役に立つのかも分からないのよ? それでも助けてくれるの?」
「ロッテは聖女だ、俺が言うんだから間違いない。君が聖女でなければ……この国は、ゼーフェリング王国は近いうちに滅びの道を辿るだろうしな」
レーヴェの言葉に意味がロッテには分からない。この国に聖女であるアンネマリーがいる以上、緑は豊かに川は清らかに空気は澄んで人々は穏やかに暮らしていけるはず。
それなのに……
「それは、どういうこと?」
「君はまだ知らない、この国が少しずつ腐敗していることを。王族や貴族も……人間と動物も、そしてこの大地さえもすべて濁り腐り始めてる」
何故ただの傭兵だというレーヴェがそんな事を知っているのか? そういえば彼はロッテが名前を名乗っただけで、彼女の立場を理解していた。次々に疑問が浮かんでしまうが、気になることから聞いていくしかない。全てをはっきりさせるのは現状では難しい。
「聖女のみがこの国の全てを浄化する力を持つのに、歴代の聖女が使用してきた神殿の泉が濁り本来の機能を失い始めていると聞いている。その上、聖女アンネマリーはその神殿に寄り付きもしないそうだ」
「そんな、どうして……」
昔からアンネマリーは気紛れな性格でもある、ただ気が乗らないから……そんな理由で神殿に向かわないのでは、聖女としての自覚があまりにも無いのではないかとロッテは不安になった。
国と民に平和と実り、そして安らぎを与えるのが聖女の役目だというのに。だが、レーヴェの答えはロッテの考えた事とはまるで違ったものだった。
「簡単に考えられることは二つ、聖女アンネマリーには本来の聖女としての力が備わっていないのか」
「そんなはずは……っ!」
ロッテはその目で見たのだ、アンネマリーが聖女の力を顕現するところを。あれが聖女の力でないというのならば一体なんだというのか? そう問いかける前にレーヴェの口から発せられた言葉は、聖女候補として育てられた彼女にとって信じられないほどショックなものだった。
「もしくは彼女はこの国を救うつもりなどなく、このままゆっくり全てを腐敗させ国を滅ぼしていくつもりなのかもしれない」
「…………っ!」
ロッテは声が上手く出ない。聖女として認められ家族や国民に愛される存在である彼女に、そんなことを望む理由があるとは思えない。愛されたがりのアンネマリーが、この国を滅ぼそうなんて。
震えるロッテの肩にレーヴェが心配そうに手を置いたが、彼女は思わずその手を払ってしまう。どんなにアンネマリーが自分を嫌っていてもロッテにとってはたった一人の妹だ、だから彼女が証拠もなく悪く言われ辛くもあったのかもしれない。
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