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真実を見て選ぶべき道
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しおりを挟む「確かに我慢してほしいとは言ったが、ここまで無理する必要はなかったのに……」
大きな木の前で蹲るようにして動けないでいるロッテにレーヴェは申し訳なさそうにそう言って、その華奢な背中をさすっている。少しでも楽になるようにとロッテに着せていた分厚いマントは脱がせ、今はヤックルの背に預けていた。
屋敷を立ったときにはまだ真っ暗だった空には、すでに太陽が眩しく輝いている。
「そんなことはいいから、離れていて欲しいの。こんなみっともない姿、見られたくない」
「まだそんなことを言うのか? 具合が悪いんだから、そんな事を気にしてないで素直にしてほしいことを言ってくれないか」
先程から何度同じやり取りを繰り返しているだろうか? 青白い顔をして吐き気を我慢するロッテはレーヴェにその姿を見ないで欲しいと頼むのだが、彼女が心配な彼はそこから離れようはしない。こんな時くらい頼ってくれてもいいとレーヴェは思うのに、ロッテは一人で耐えようとばかりする。
昔から人一倍頑張り屋な彼女だったが自分が聖女でなかったことで余計に周りに頼ることを申し訳なく感じるようになり、今ではすっかり甘えるのが下手になってしまっていた。
弱い自分を見せれば、やはり聖女でなかったからだと陰口を叩かれることもあった。そんな経験が彼女を頑なにさせてしまったのかもしれない。
「こんなの大した事じゃないわ、それよりもヤックルに水でも飲ませてきてあげて……」
「こんな状態の君を放って水を飲みに連れて行こうとすれば、俺がヤックルに蹴り飛ばされる。ロッテは俺をそんな目に合わせたいのか?」
そう言われてロッテがヤックルを見れば、レーヴェの隣で心配そうに彼女を見つめているではないか。ずっと二人を乗せて走ってきて疲れているはずなのに、ヤックルは休もうともせずずっとロッテの傍から離れなかったのだ。
「私はいいのよ。ヤックル、貴方も今のうちに休んでちょうだい?」
そうロッテが言っても、ヤックルは黙ってその場から動こうとはしない。レーヴェはその様子を眺め眺めながら「ほらな」と言うように肩をすくめて見せるだけだ。どうやらロッテの体調が良くなるまで、レーヴェとヤックルだけで休んでもらうのは無理そうである。
どこまでも優しい一人と一頭に、ロッテはどうしていいのか分からなくなる。冷たくされることに慣れてしまった彼女に。それが当然だと言わんばかりの彼ら行動が嬉しすぎて。
「……ごめんなさい、迷惑ばかりかけて。でも、ありがとう」
申し訳ない気持ちはあるが、それでもきっとレーヴェたちはロッテに謝ってほしいわけではないはず。そう思った彼女は素直に感謝の気持ちを口にした。
とても悪かった体調も、あっという間に良くなっていく気がする。もう大丈夫だと言ってももう少し休んだ方がいいと何度も止めるレーヴェを説得し、ヤックルに水を飲ませるため近くの川へと移動した。
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