【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季

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     ヴァリシュ魔法学院の転落

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舞踏会プロムナードの後、すぐさま事態は動いた。

まず、4人の令嬢の実家─すべて伯爵家以上の高位貴族家である─は、娘たちから舞踏会の顛末を聞くと激怒した。
貴公子たちの家に抗議するのはもちろん、王家に対しては4つの家連名で不服申し立てを奏上した。

慌てたのは貴公子たち側の家だ。
息子からは婚約を考え直したいという旨の言葉があったが、子細については何も聞いておらず、しかも舞踏会を主催した学院側からも何の報告もなかったのだ。
すぐさま他家の子女等に話を聞いて事の次第を明らかにしたのだが、その顛末には呆れ果てるどころか卒倒する親もいたほどだ。

そんな中、真っ先に動いたのは王家だった。
有力な四家連名の申し立てを重く受け止め、すぐさま第三者機関による調査機関を立ち上げ、4人の令嬢にかけられた嫌疑を調べさせた。

しかし、その調べもほとんど建前のようなものだった。
すぐに4人の令嬢にかけられた疑惑は、冤罪であると断じられた。

そして、その結果が出ると同時に、国王は騒動の責任を取らせると王太子を廃嫡したのだ。
その上で、長らく正式な管理者のいなかった離島の領土に、国王陛下の名代として元王太子を派遣するという──実質上の追放を言い渡した。

この動きを受けて、すぐさま他の貴公子たちの家も動いた。
貶めた令嬢たちの家に、正式な謝罪と賠償を申し出たのだ。
対する令嬢方は、婚約者の家にはそれらに加えて婚約の破棄を申し付けた。
貴公子方はそれに抗おうとしたが、ほとんどの家は結局それを飲むことになった。
さらに、子息を廃嫡する家や、親が役職を返上する事態になった家もあった。

唯一婚約者のいなかった男爵子息の家は、すべての令嬢たちの家─言うまでもなく格上の家だ─に多額の賠償金を支払い──マリアナと婚姻を結ぶこととなった。

この決定を知った者は皆首を傾げたが、背後には王命があったと言われる。

事の重さに事態を知る貴族家は口をつぐむことを選んだが、マリアナは平民だ。断罪劇の当事者を市井に放すのは、様々な理由から危険と判断されたのだろう。
貴族家に嫁がせることで監視下に置こうとしたようだった。
こうして、貴公子側の一人であり、家格も低く婚約者のいなかった、平民上がりの男爵の子息に白羽の矢が立ったのだ。

しかし、首謀者とも言うべきマリアナへの処罰がない─むしろ彼女が一人勝ちしている印象を受ける─という結果は、様々な疑惑や憶測を呼んだ。

曰く、そもそもマリアナは貴公子たちを貶めるために雇われた平民だったのだ、と。
曰く、実はすべての糸を引いていたのは令嬢方で、貴公子たちは嵌められたのだ、と。
曰く、元王太子は王座に相応しくないと、周囲の取り巻きもろとも引きずり落とそうとする反王太子派の謀略だったのだ、と。

だが、それらすべてはあくまでも憶測の域を出なかった。
やがて、貴族社会は表向きは平静に戻った。


しかし、平静に戻らないところがあった。
断罪劇の舞台となったヴァリシュ魔法学院である。

貴族間の賠償等の話が落ち着くと、次いで魔法学院の責任を問う声も上がったのだ。
学院主催の舞踏会であれほどの騒ぎが起こっていながら、学院側は止めもせず家に連絡することもなく、すべて無かったことで通そうとしていたからだ。

高位貴族の家からの追及を受け──驚愕の事実が明らかになった。
なんと、元王太子が勝手に国費を投じて、何事にも不干渉を貫くよう、学院側を買収していたというのだ。

しかも話はこれだけでは終わらない。
叩けば叩くほど、次々と学院の不正が出てきたのだ。
裏口入学や単位・成績の操作、不祥事の揉み消し、気に喰わない学院生の追放などなど。
学院は、いずれも金さえ積めば随意に取り計らっていたようだった。

──王家の庇護を受け、貴族に名門と持て囃され、平民の憧れとなった学院の、どうしようもない堕落がそこにあった。

それらの不祥事を調べ上げた王家は、すぐさま学院への支援を打ち切り後ろ盾を止め、学院に通っていた王族関係者を引き上げさせた。
すると、貴族たちも続くように、次々と学院を辞めて去っていった。

学院側は慌てて健全化を図るも、すべては遅すぎた。


──こうして、長らく国随一の教育機関であり続けたヴァリシュ魔法学院は、『ヴァリシュの断罪劇』をきっかけに、僅か数ヶ月足らずで終焉を迎えたのだった。
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