序盤に倒したのが魔王でした!?~世界最強の賢者、王宮から追放されたので旅をしていたら最初に魔王を倒しちゃいました~

暁山桜

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第1章  オーレスト王国編

1章6話  その男、依頼を受ける

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 夕方、俺とリーネは殺人鬼の捕縛するクエストを受けるためにギルドに来ていた。



 「レオールさん、あなたが強いのはさっきわかりましたけど、この依頼はレベルが違います」



 ギルドの職員は俺がこのクエストを受けることに反対のようだった。



 「でも、このクエストってAランクなら受けていいんですよね。なら、俺は受けてもいいじゃねえの?」



 「確かにそうですが、このクエストはレベルが違います。すでにA級冒険者が2、3人ほど受けていますが、消息不明です」



 ギルドの職員は「このクエストが危険だ」といいたいようだが、こっちには魔王もいる。

 万が一、リーネが負けるようなことになっても、俺なら負けない。魔神や古竜すら単独で勝てている。それが人間相手なら負けるはずがない。



 「大丈夫よ。私もついていくんだし、負けることはないわ。私とレオールよ!! 負けるはずがないでしょ!!」



 リーネは自信満々だった。……リーネ、冒険者登録してないけど、参加していいのかな?



 「あのーー、あなた、誰ですか? レオールさんについていくのなら、ランクや名前を教えていただいてもいいですか?」



 やっぱりこうなった。調子乗ってでしゃばるからこうなる。リーネ、諦めろ……



 「アデル。魔族の国の冒険者です。空腹で困っていたところにレオールに助けられました」



 リーネは冒険者カードを見せた。



 「Sランクなんですか!? 魔族の冒険者ギルドは人間のギルドより基準が高いと言われているのに……」



 どうやら、リーネは冒険者カードを持っているようだった。

 魔族と人間はずがや獣人は仲が悪いのだが、冒険者ギルドを仲がいい。

 だから、冒険者には種族の差別がなく、魔族でのランクはそのまま人間のランクになるのだ。

 そして、リーネはアデリーネ=ゴルディノスという魔王の名前は隠しているようだ。



 「だから、私がいれば問題ないのよ!」



 リーネは大きな胸を張って発言したのだった。



 「わかりました。レオールさん、アデルさん気をつけてくださいね。相手は強敵ですので」



 ギルドの職員さんは遂におれた。まあ、Sランク冒険者がいるなら、失敗はしないだろうという算段なんだろう。





 俺とリーネはギルドを出た。



 「それにしても、リーネは冒険者だったんだな、しかもSランクの」



 「そうよ!! 私は魔物の討伐とかは好きだし、冒険者はみんなのためにあるじゃない、私、結構、好きなのよ。冒険者の仕事」



 「じゃあ、何で偽名で登録しているんだ?」



 リーネは冒険者カードの登録者名は本名ではなくアデルという偽名だった。



 「それは魔王だってばれたら、冒険者らしく仕事できないじゃない。だから、偽名を使ってるのよ」



 なんか、リーネらしい。まだ、出会って1週間しか、たってないのにそれだけはわかる気がした。

 ホント、人間の中に広まってた、魔王像と全然違うよな。

 魔族の国が侵略をしなかったのもリーネの意思だったなんて……魔族って全然、恐怖の塊って感じじゃないよな。

 そう考えると、俺は思わず笑ってしまった。



 「何を笑っているのよ!! 私は真剣に話しているのに」



 「そうだね。ごめん、ごめん。でも、リーネは優しいんだなって、思って。俺たちの中では諸悪の根元って感じだったから」



 「確かに、そうね。魔王なんていいイメージを持ってる人なんていないわよね……」



 リーネは落ち込んでしまった。まあ、リーネは平和な世界を望んでいるんだから仕方がないよな。

 そういえば、国王のおっさんも同じようなこと考えてたよな。魔族と仲良くとか俺に言ってた気がする。

 あのおっさんもリーネと同じで取り巻きより強いのに戦うことは人一倍嫌いだったな。

 ……ホント、悪いところが一切ない国王だったな。家臣が家臣だとはおもっちまうけど……



 「そうよ。私は魔王なのに……信頼する家臣たちにも見捨てられて、人間からは悪の象徴にされて、獣人には世界を壊す悪魔と思われて……」



 リーネは相当、落ち込んでるな。俺、何も考えずにあんなこと言わなかったらよかったな。

 よし!!



 「リーネ、俺はお前が平和を願ってることも人間や獣人を侵略しなかったことも知ってる! 

 だから、俺はお前を悪の象徴だなんて思ってねえし、今、思ってる人がいればその場でぶっ飛ばすぐらいの気持ちでもいる。

 さっき、俺が言いたかったのは、何で、こんなバカみたいな種族間の対立があるんだよって思っただけで……とりあえず、俺はお前がすごいと思う。

 逆によく今まで家臣たちを説得させてきたと思う。だから、一緒にその家臣たちに何があったのかを知るために今、旅をしてんだろ!!」



 リーネは目を大きく開けて驚いていた。



 「本当にレオールはそんなことを思ってくれてるのか?」



 「もちろん、そうに決まってるだろ」



 「なら、私がもし人間に捕まった時、貴方は私を助けてくれる?」



 これはどういう意味なんだろうか。もしかしたらリーネはずっと怖かったのかもしれない。

 人間の俺がリーネを裏切らないか? 自分の家臣は何で自分を裏切ったのか? 色々、不安があったに決まってる。

 そりゃ、怖いよな。でも、殺人鬼のクエストをするんなら、こいつと俺は信頼し合わないといけない。

 なら、俺が言うことはひとつしかない。……カッコつけたけどこれが本心だしな。



 「俺はお前を助けるだろうな。 

 俺は、お前に言ったように俺はクソ貴族とクソ同僚に裏切られて王宮を出されたんだぜ。

 それなら、俺を裏切るかもしれない人間よりも信頼できる方を選ぶのは当然だろ!!」



 「そうよね!! 私たち旅の仲間だものね。でも、私は嬉しいわ。私と対等に話してくれた人で私を本当の仲間だと思ってくれてる人は貴方だけだもの」



 リーネは泣いていた。きっと、これまでの恐怖が溢れたんだろうな。

 まさか、ちょっとした一言でこんなことになってしまうとは……でも、殺人鬼と戦う前でよかった。

 これが戦闘中とかだったら、俺たちは少なからずピンチに陥っていただろう。



 「リーネ、怖かったんだろ。まあ、その気持ちはわからなくもねえよ。

 俺も横領の罪を着せられたときは誰も信じられなくなってたからな。

 とりあえず、今日は宿で休もうぜ。殺人鬼探しは明日からでもいいだろ」



 「それなら、大丈夫よ。貴方の言葉のお陰で勇気がわいたもの。それに明日にはここを出るつもりだったんだから」



 「それなら、2、3日ぐらい延びても大丈夫だし、疲れてんだろ、お前」



 慣れない人間の街を1人でまわったんだから疲れて当然である。俺も魔族の街とか疲れそうだし。



 「心配してくれてありがとう。でも、犯人は夜に犯行するんだから、夜の方がいいでしょ。それに私は貴方といれば大丈夫よ、1人じゃないことはわかったし」



 「そっか、なら、夜まで寝ておくか」



 「それがいいですね!! 2人で殺人鬼を捕まえましょう!!」



 夕日のせいかリーネの顔が赤く見えた。  

 俺がリーネになぜあんなことを言えたのかわからないけど、なんか、スッキリしていた。

 会った時から、何かに恐れてるって感じがしてたからな。



 このあと、俺たちは夜に備えて宿で少し睡眠をとった。





 夜になって、昼はとても賑やかな町並みだったのが、とても静かな街並みになっていた。



 「ねえ、レオール。ちょっと静かすぎないかしら?」



 「確かに。みんな、殺人鬼を恐れているんじゃないかな?」



 確かに、いくら夜といっても静かすぎる。

 ここまで静かだと逆に怪しい。だが、こんなに静かなら、殺人鬼がどこを襲っているのかはすぐにわかるな。



 「待ってなさい、殺人鬼!! 私とレオールでやっつけちゃうんだから!! 早く、出てきなさいよ!!」



 「リーネ、流石にそんなんじゃ出てこないよ。でも、あっちから来てくれた方が楽ではあるよな。こっちがいく手間も省けるし」



 まさか、こんなに都合よくは来てくれないだろうな。



 「ねえ、レオール。私たちはその殺人鬼を殺してもいいわけ?」



 「まあ、生死は問わないって書いてあったし、殺しても大丈夫なんじゃないか」



 リーネ、まさか、殺すつもりじゃないだろうな……



 「なら、楽ね。殺しちゃいましょ。私、手加減していい感じに倒すの苦手なのよ。だから、貴方と戦ったときも殺すつもりだったし」



 「リーネ、ちょっと待って!! 俺は殺さないようにしてたのにお前、殺すつもりだったの!?まあ、俺だからいいけど犯人は殺さないようにな。後味悪いから」



 リーネ、やっぱりお前は魔王だよ。……俺、ちょっと弱かったら、死んでたのか……怖!!



 「そこの君たちはその殺人鬼を殺さないように手加減するつもりなのかい?」



 「そうよ、そのつもりよ! 何を聞いているの? でも、私は殺しちゃうかもだけど」



 リーネは誰のものかはわからない声に返事をした。



 「リーネ!! 避けろ!! できないなら、ムーロを使え!!」



 リーネは気付いていない。今、自分が狙われていることを。



 「わかったわよ、『ムーロ』」



 リーネのムーロで張った障壁は突然の襲撃を防いだ。



 「今のを防ぐとは……そこの男性、なかなかやりますね!!」



 俺とリーネの前には禍々しい男が立っていた。それは人間なのか何なのかわからないような"もの”だった。

 だから、男だとわかったのは声音が男だったからで俺に確証はない。

 そして、その男は口を開く。



 「僕を殺すなんて、よく言えたよ。賞賛に値します。だから、今から君たちと踊ってあげましょう」



 そう言って、男はどす黒い魔法を展開していた。
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