まつり

わワ和輪ヮ

文字の大きさ
上 下
1 / 3

茉莉~まつり~

しおりを挟む
今日で私は18歳!

朝一番に起きて湯浴みをした。

今日は私にとって、一生で一番大切な日なのだ!


「おはよう、茉莉。よく眠れた?」

「あ、お母ちゃんおはよー!うん!今日は目の下に隈なんてダメだからね!」


今日は私の誕生日でもあり、村の成人式でもある。

うちの村は過疎化も進み、18歳になったら大概みんな村を出てしまう。

その前に村での成人式をする事が、昔からの習わしだった。


そして…


「茉莉ー!おはよー!もう振袖来たー?」

「さっちゃん、早いよー!私はまだかかるから先行っててー!」

「えー?もう、平助さんもきっと来てるよー!」

「えー!?急ぐからー!」

「わかったー!なら神社の鳥居前で待ってるから!平助さんも足止めしとく!」

「きゃー!ありがとう!」


そう、今日この日は毎年村から出ていった人達が必ず戻って来るのだ。


「……茉莉。これ」


母がこの日のために仕立ててくれた振袖。

白地に赤い絞りが入って、裾には金糸で鶴の刺繍。

本当は、こんな着物を買えるような家じゃないのに……本当に嬉しい。


「ありがとう。お母ちゃん」


目を赤くしながら、着付けてくれる母の手は、少し震えていた。

こんなに長く母と触れ合えるのは、きっと最後になるだろう。


「じゃあ、いくね!」


母は玄関の前で思い切り抱きしめてくれた。


「茉莉……立派に育ってくれて、本当にありがとう。」


私も抱き締め返し、さっちゃんの待つ神社へ向かう。
しおりを挟む

処理中です...