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祭り~神社前~
しおりを挟む少し遅くなっちゃった……。
平助さん、待っててくれるかな。
神社は山の中腹だが、山の麓にある大鳥居前。人影が見えた。
あ、れ……もしかして。
「茉莉ちゃん!」
平助さんだ!
苦しいはずなのに、思わず小走りになってしまう。
「平助さん!わ、どうしよう。嬉しい」
「ははは、昨年のお祭り以来だね。元気だった?」
「はい!平助さんも、元気でした?」
きゃー!わー!どうしようどうしよう!
耳まで赤くなるのが自分でもわかる。
「元気だったよ。皐月(さつき)ちゃんは先に行くって、もう登っていったよ」
「えぇー?待っててくれるのかと思ったのに……」
でもきっと、さっちゃんは気を使ってくれてのだろう。
「実は俺、今年からこっちに戻るんだ」
「え!?本当ですか?」
「あぁ……」
平助さんは18歳になってから、稼業の神社を継ぐために外へ修行に出されていた。
でも、これからは毎日ここにいてくれる。
「嬉しい!」
その時、2人の会話を遮るように神社から太鼓の音が聞こえた。
「あ、私……行かなくちゃ」
「もう、そんな時間か。茉莉ちゃんはこのまま鳥居を潜って上にがって行くんだろ?」
「はい!一般の人は裏からですもんね」
山の神社へは2つの行き方があるが、片方は山道に板を置いて階段状にしたもので、割ときつい。
その為、成人の儀自体は成人者以外参加しない。
しかし、主役である私達は今日だけ正面の鳥居の階段を通してもらえるのである。
「そうだね。ちょっときついけど(笑」
「あの山道急ですよね~、今日は正面の階段使えるから楽チン!」
その瞬間、目の前からあたたかいものに包まれる。
「へ!平助さん!」
「ごめん。俺……」
思わず涙ぐみそうになる。
なんて、あたたかいのだろう。
ずっと、こうしていたい。
でも、もういかなくては……
「えへへ、遅れちゃいます」
「あぁ…」
ゆっくり腕が外される。
「いっておいで」
人生で一番の笑顔を見せる。
「いってきます!」
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