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茉莉~平助の真実~
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そのまま鳥居を潜り、彼女は空へ消えていった。
上からはけたたましい太鼓の音と、少女の叫び声が聞こえる。
「今年の茉莉は、耐えられなかったか」
この村では、10年に一度、とある祭事がとりおこなわれる。
村にはある氏神がいて、10年に一度嫁を取る。
そう、子供たちには教えているが……
それはいわゆる建前の生贄だと、今では考えられている。
その真実は、俺の一族しか知らない。
元々この村は島流しにあった罪人の村だった。
罪人が流される程、ここの土壌は悪く、作物もままならない環境だったそうだ。
ある年、島流しにあった巫女が、ここでお告げを受ける。
翌日巫女の腹はみるみる膨らみ、その翌日には女の赤子が産まれたそうだ。
その子は「茉莉」と名付けられる。
その茉莉が生まれて以来、土は豊かになり、巫女と茉莉は村に歓迎され、敬われた。
巫女は毎年祭事を行い。茉莉の産まれた日を祭日にした。
茉莉が18歳になった時である。
巫女も美しかったが、茉莉はより美しい娘になっていた。
だが、その年に事件が起きる。
茉莉が村の若者に襲われ、自害してしまう。
巫女は嘆き悲しみ、その年の祭日、呪いを言い残し焼身自殺をする。
『この村には10年に一度茉莉が産まれてくるだろう。
お前達のせいで神に使える事が出来なくなった茉莉の魂だ。
18歳になる時、不完全な茉莉の魂は燃えつきる。
私はこれからこの身体を供物に神に願おう。
これから産まれる茉莉の安寧と、この村の衰退を……』
その日産気づいたのが、俺の先祖。
初代茉莉を襲った若者の嫁だったという。
それから何代にも渡って茉莉は産まれる。
そして、18歳になった時、体内から燃えだし焼きつくされる。
それは元々神に使えるために産まれてきた茉莉が、辱められ自害した、神からの罰だろう。
今では、少しでも茉莉の魂を悼むよう、他の子らとも同じような生活を送り、少しでも神聖に扱うようになった。
それからか、死んだはずの先代茉莉が翌祭年日村に現れるようになった。
これから亡くなる茉莉達を悼むように。
まあ、それが見えるのは、先代茉莉を襲った若者の一族だけなのだが……
きっとここにいれば、10年前、一声もあげずに燃えた。あの茉莉ちゃんに会えると思った。
「おーい!平助!」
その時、息も絶え絶えに紺太が駆け寄る。
紺太は染物を稼業にしている家の息子で、茉莉ちゃんの振袖を染め上げたのも紺太だった。
そして、紺太は茉莉ちゃんが好きだった。
「どうした?そんな一目散に……今日は祭日だぞ?」
「お前の所の皐月ちゃん……ハァッ……さっき、産気づいたって……」
この時、俺の娘の名前が決まった。
『茉莉』だ……。
上からはけたたましい太鼓の音と、少女の叫び声が聞こえる。
「今年の茉莉は、耐えられなかったか」
この村では、10年に一度、とある祭事がとりおこなわれる。
村にはある氏神がいて、10年に一度嫁を取る。
そう、子供たちには教えているが……
それはいわゆる建前の生贄だと、今では考えられている。
その真実は、俺の一族しか知らない。
元々この村は島流しにあった罪人の村だった。
罪人が流される程、ここの土壌は悪く、作物もままならない環境だったそうだ。
ある年、島流しにあった巫女が、ここでお告げを受ける。
翌日巫女の腹はみるみる膨らみ、その翌日には女の赤子が産まれたそうだ。
その子は「茉莉」と名付けられる。
その茉莉が生まれて以来、土は豊かになり、巫女と茉莉は村に歓迎され、敬われた。
巫女は毎年祭事を行い。茉莉の産まれた日を祭日にした。
茉莉が18歳になった時である。
巫女も美しかったが、茉莉はより美しい娘になっていた。
だが、その年に事件が起きる。
茉莉が村の若者に襲われ、自害してしまう。
巫女は嘆き悲しみ、その年の祭日、呪いを言い残し焼身自殺をする。
『この村には10年に一度茉莉が産まれてくるだろう。
お前達のせいで神に使える事が出来なくなった茉莉の魂だ。
18歳になる時、不完全な茉莉の魂は燃えつきる。
私はこれからこの身体を供物に神に願おう。
これから産まれる茉莉の安寧と、この村の衰退を……』
その日産気づいたのが、俺の先祖。
初代茉莉を襲った若者の嫁だったという。
それから何代にも渡って茉莉は産まれる。
そして、18歳になった時、体内から燃えだし焼きつくされる。
それは元々神に使えるために産まれてきた茉莉が、辱められ自害した、神からの罰だろう。
今では、少しでも茉莉の魂を悼むよう、他の子らとも同じような生活を送り、少しでも神聖に扱うようになった。
それからか、死んだはずの先代茉莉が翌祭年日村に現れるようになった。
これから亡くなる茉莉達を悼むように。
まあ、それが見えるのは、先代茉莉を襲った若者の一族だけなのだが……
きっとここにいれば、10年前、一声もあげずに燃えた。あの茉莉ちゃんに会えると思った。
「おーい!平助!」
その時、息も絶え絶えに紺太が駆け寄る。
紺太は染物を稼業にしている家の息子で、茉莉ちゃんの振袖を染め上げたのも紺太だった。
そして、紺太は茉莉ちゃんが好きだった。
「どうした?そんな一目散に……今日は祭日だぞ?」
「お前の所の皐月ちゃん……ハァッ……さっき、産気づいたって……」
この時、俺の娘の名前が決まった。
『茉莉』だ……。
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