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驚きと突然引き摺り込まれた官能とで、朦朧となっている私がそう問いかける。
『アーレンはここには来れないよ。兄上に足止めをしてもらった』
『アーレン殿下を?何故ですか、ロイド様?何故…』
『愚かな人間の血は争えないね。私はそうなりたくないとずっと思っていたのに、この有様だ。』
皮肉な笑みを浮かべ自嘲するロイド様。
私を抱きかかえたまま、温室のドアを開ける。
『ライラ、後は頼む』
ドアの前にライラ様が立っていた。ロイド様の腕のなかに居る私に気がつかないはずがないのに、ロイド様の指示に深々と頭を下げた。
『きゃ…っ』
いきなりロイド様の腕の中から乱暴に何処かに降ろされた。柔らかい何か。薄暗い部屋の中で、ロイド様の姿もはっきりは見えない。
周りを見渡すと、自分が今横たわっているのが寝室のベッドの上だと気付く。逃げなければ!頭の中に浮かんだ言葉に身を起こそうとした瞬間、ロイド様が私に覆いかぶさっていた。
『ロイ…様っ』
再び重ねられた唇。貪り尽くされる様な口づけに、息が出来なくなる。
『あっ…』
ロイド様の手が背中に周り、ドレスのボタンを外していく。気がつけば肩が出て胸の頂きが辛うじて隠されてる状況。ロイド様の手が私の胸に触れる。最初は躊躇う様に優しく。そして、強く。
『あ、んっ...』
ロイド様の指が私の胸の頂に触れ、指先で頂を撫で軽く摘まむ。ビクッと私の体が跳ねる。口づけを交わしていたロイド様がうっすら笑った様な気がした。
******************
あれからどの位の時が経ったのだろう。気が付けば部屋の中は真っ暗になっていた。ロイド様とここに着いた時から考えると、多分もう真夜中近くにになったのではないか。
あれから、ロイド様はもう一度わたしの体を開いた。最初の性急さは嘘の様に丁寧に丁寧に私を開いていった。最初の痛みが嘘の様に、2度目は違う涙を流しロイド様に懇願する羽目になった。
2度目にロイド様が果てた時に、私も一緒に果て、そのまま意識を失ってしまったのだと思う。
『ミリア、愛しているんだ.....』
意識が暗闇に飲み込まれる時に、そんなロイド様の声を聞いた様な気がする。
『ロイド様.....』
かすれる声で呟く。返事はなく、部屋の中には私一人だけの気配しかない。
一瞬部屋の中に光が差し込んだような気がする。そちらに目を向けると、カーテンがかすかに揺れていた。
力の入らない体を起こして床に足をつける。何も身に着けていない身体にシーツを巻きつけて、揺れるカーテンの向こうに出る。月の光に照らされたテラスデッキに、ロイド様が項垂れて座っていた。
『ミリア!』
私の気配に気づき、ロイド様が振り向いた。立ち上がって私に走り寄ってこようとしたものの、急に青ざめ足を止めた。
『ロイド様.......』
『すまない、ミリア』
それでも私に触れようとぎこちなく手を伸ばす。
私の頬に優しく触れるロイド様の手。
『ミリア、すまない。愛しい君を傷つけたくはなかった。アーレンが君を王太子妃として迎えたいと望んでいたのも知っていたのに、君もアーレンを好いている様子だったし、2人が互いに望むのならばと、叔父として二人の幸せを見守らなければとずっと思っていたのに。アーレンがリアナカル離宮に君を呼び出したと聞いて、まさかと思って同行すればライラがいて。ライラが離宮にいるという事は、アーレンが業を煮やして君を手に入れようとしているのだと、そう思ったらもう止められなかった.......』
震える手でロイド様は私を抱きしめる。息が出来なくなるくらい強く。
ポタりと滴が私の額に落ちた。上を見上げると、ロイド様の目から涙が・・・。
ロイド様の背に腕を回して、私もロイド様を抱きしめる。
『ミリア......?』
『ロイド様、初めてお会いした時の事を覚えていらっしゃいますか?』
『........』
『父上様と一緒にダレル庭園のバラを見に行った際にでした。少し風の強い日で、バラは満開で。美しいバラの群生の中に、美しい人が立っていたんです。その時に強い風が吹き抜け、バラの花びらが舞い散って。バラの花びらが舞う中、金の髪をたなびかせ佇む美しい姿を、私、バラの精が現れたと父上様に話したのです』
少し顔を赤らめるロイド様。私もなんだかドキドキしてきました。
『父上様は、あれはバラの精ではなくて、父様のお友達だよと。ミリアは彼が気に入ったのかい?と』
『はいと。あんなにきれいな方、見た事がないから、父上様が違うというけど、やっぱりバラの精だと思う。もし父上様のいう事が本当だったとしたら、わたし、あの方の妻となりたいと』
『....。ミリア、あの時は確か君が5歳になったお祝いに、バラの苗を求めてダレルへ来た時の事ではなかったかい?』
『そうです。私の庭に記念のつるばらを植えようと、父上様と一緒に』
ロイド様のお顔がもうこれ以上染まらないという位赤くなる。
『覚えているよ。親友のグイードの娘の5歳の誕生日。王室直下の庭園の新しく改良されたつるばらがどうしても欲しいとグイードに頼まれて。兄に許可をもらって受け渡しに赴いたんだ。グイードに手を引かれた小さな女の子。キラキラとしたエメラルドグリーンの瞳。シルバーの髪が陽に光って。私を熱心に見つめているなぁと想ってはいたが、妖精と思われていたのか』
『おっしゃらないでください。まだ5歳の子供だったのです。あの時は本当にそうおもったのですから』
私まで真っ赤になってしまった。子供だったとはいえ、バラの精と思っただなんて、恥ずかしい。
『父上様は、彼は父様の友達だから、ミリアが大人になるまでに誰かを妻に迎えてしまうかもしれないよ、ミリアよりもずっと大人だから、ミリアが大人になった時にはおじいさんになってしまっているかもだよ、と』
少しむっとするロイド様。あいつ、と小さく呟く。
『ミリアの父様のお友達なら、きっとおじいさんになる事はないです、父様もそうだもの。いつまでもカッコいいと思います、もし誰か別の方を妻に迎えていたら、そしたら先にみつけたのはミリアだから返してくださいって言います、と』
目をみひらいて驚くロイド様。それから大輪のひまわりの様な笑顔で嬉しそうに笑って私にくちづけをしてくれた。
『アーレンはここには来れないよ。兄上に足止めをしてもらった』
『アーレン殿下を?何故ですか、ロイド様?何故…』
『愚かな人間の血は争えないね。私はそうなりたくないとずっと思っていたのに、この有様だ。』
皮肉な笑みを浮かべ自嘲するロイド様。
私を抱きかかえたまま、温室のドアを開ける。
『ライラ、後は頼む』
ドアの前にライラ様が立っていた。ロイド様の腕のなかに居る私に気がつかないはずがないのに、ロイド様の指示に深々と頭を下げた。
『きゃ…っ』
いきなりロイド様の腕の中から乱暴に何処かに降ろされた。柔らかい何か。薄暗い部屋の中で、ロイド様の姿もはっきりは見えない。
周りを見渡すと、自分が今横たわっているのが寝室のベッドの上だと気付く。逃げなければ!頭の中に浮かんだ言葉に身を起こそうとした瞬間、ロイド様が私に覆いかぶさっていた。
『ロイ…様っ』
再び重ねられた唇。貪り尽くされる様な口づけに、息が出来なくなる。
『あっ…』
ロイド様の手が背中に周り、ドレスのボタンを外していく。気がつけば肩が出て胸の頂きが辛うじて隠されてる状況。ロイド様の手が私の胸に触れる。最初は躊躇う様に優しく。そして、強く。
『あ、んっ...』
ロイド様の指が私の胸の頂に触れ、指先で頂を撫で軽く摘まむ。ビクッと私の体が跳ねる。口づけを交わしていたロイド様がうっすら笑った様な気がした。
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あれからどの位の時が経ったのだろう。気が付けば部屋の中は真っ暗になっていた。ロイド様とここに着いた時から考えると、多分もう真夜中近くにになったのではないか。
あれから、ロイド様はもう一度わたしの体を開いた。最初の性急さは嘘の様に丁寧に丁寧に私を開いていった。最初の痛みが嘘の様に、2度目は違う涙を流しロイド様に懇願する羽目になった。
2度目にロイド様が果てた時に、私も一緒に果て、そのまま意識を失ってしまったのだと思う。
『ミリア、愛しているんだ.....』
意識が暗闇に飲み込まれる時に、そんなロイド様の声を聞いた様な気がする。
『ロイド様.....』
かすれる声で呟く。返事はなく、部屋の中には私一人だけの気配しかない。
一瞬部屋の中に光が差し込んだような気がする。そちらに目を向けると、カーテンがかすかに揺れていた。
力の入らない体を起こして床に足をつける。何も身に着けていない身体にシーツを巻きつけて、揺れるカーテンの向こうに出る。月の光に照らされたテラスデッキに、ロイド様が項垂れて座っていた。
『ミリア!』
私の気配に気づき、ロイド様が振り向いた。立ち上がって私に走り寄ってこようとしたものの、急に青ざめ足を止めた。
『ロイド様.......』
『すまない、ミリア』
それでも私に触れようとぎこちなく手を伸ばす。
私の頬に優しく触れるロイド様の手。
『ミリア、すまない。愛しい君を傷つけたくはなかった。アーレンが君を王太子妃として迎えたいと望んでいたのも知っていたのに、君もアーレンを好いている様子だったし、2人が互いに望むのならばと、叔父として二人の幸せを見守らなければとずっと思っていたのに。アーレンがリアナカル離宮に君を呼び出したと聞いて、まさかと思って同行すればライラがいて。ライラが離宮にいるという事は、アーレンが業を煮やして君を手に入れようとしているのだと、そう思ったらもう止められなかった.......』
震える手でロイド様は私を抱きしめる。息が出来なくなるくらい強く。
ポタりと滴が私の額に落ちた。上を見上げると、ロイド様の目から涙が・・・。
ロイド様の背に腕を回して、私もロイド様を抱きしめる。
『ミリア......?』
『ロイド様、初めてお会いした時の事を覚えていらっしゃいますか?』
『........』
『父上様と一緒にダレル庭園のバラを見に行った際にでした。少し風の強い日で、バラは満開で。美しいバラの群生の中に、美しい人が立っていたんです。その時に強い風が吹き抜け、バラの花びらが舞い散って。バラの花びらが舞う中、金の髪をたなびかせ佇む美しい姿を、私、バラの精が現れたと父上様に話したのです』
少し顔を赤らめるロイド様。私もなんだかドキドキしてきました。
『父上様は、あれはバラの精ではなくて、父様のお友達だよと。ミリアは彼が気に入ったのかい?と』
『はいと。あんなにきれいな方、見た事がないから、父上様が違うというけど、やっぱりバラの精だと思う。もし父上様のいう事が本当だったとしたら、わたし、あの方の妻となりたいと』
『....。ミリア、あの時は確か君が5歳になったお祝いに、バラの苗を求めてダレルへ来た時の事ではなかったかい?』
『そうです。私の庭に記念のつるばらを植えようと、父上様と一緒に』
ロイド様のお顔がもうこれ以上染まらないという位赤くなる。
『覚えているよ。親友のグイードの娘の5歳の誕生日。王室直下の庭園の新しく改良されたつるばらがどうしても欲しいとグイードに頼まれて。兄に許可をもらって受け渡しに赴いたんだ。グイードに手を引かれた小さな女の子。キラキラとしたエメラルドグリーンの瞳。シルバーの髪が陽に光って。私を熱心に見つめているなぁと想ってはいたが、妖精と思われていたのか』
『おっしゃらないでください。まだ5歳の子供だったのです。あの時は本当にそうおもったのですから』
私まで真っ赤になってしまった。子供だったとはいえ、バラの精と思っただなんて、恥ずかしい。
『父上様は、彼は父様の友達だから、ミリアが大人になるまでに誰かを妻に迎えてしまうかもしれないよ、ミリアよりもずっと大人だから、ミリアが大人になった時にはおじいさんになってしまっているかもだよ、と』
少しむっとするロイド様。あいつ、と小さく呟く。
『ミリアの父様のお友達なら、きっとおじいさんになる事はないです、父様もそうだもの。いつまでもカッコいいと思います、もし誰か別の方を妻に迎えていたら、そしたら先にみつけたのはミリアだから返してくださいって言います、と』
目をみひらいて驚くロイド様。それから大輪のひまわりの様な笑顔で嬉しそうに笑って私にくちづけをしてくれた。
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