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『ラインハルト様、体調は如何ですか?』
『カイン、大丈夫だ。少し疲れただけだ』
雪の舞う空を、ラインハルトはぼんやり眺めていた。
新年を迎えてすぐ、エリアーヌが王子を出産したと、母子共に健やかとバッハツアルトから書簡が届いた。バッハツアルトでは国をあげて王子誕生を祝ったが、エリアーヌの故郷であるナレントは、カトリーヌ王女の容態がまだまだ油断できない状態である為、祝いは控えたいとの内容の書簡を送った。
国同士の争いを避けるためにエリアーヌを嫁がせた形をとったものの、バッハツアルトの強引な行いをナレントが許した訳ではなく、2国間の関係は断絶したと同じ状態だった。
バッハツアルトから知らせが届いた時、張り詰めっていた糸が切れてしまったかのように、ラインハルトは倒れた。そして、目覚めることを拒否するかの様にこんこんと眠り続けた。
それから10日経った頃、ようやく目覚めたラインハルトの目の前に、カトリーヌ王女の姿があった。
以前会った時から比べれば大分顔色も良くなり、生きる力を取り戻しつつある様に見えた。ただ、一人で歩けるまでの回復までには至っていないのか、車いすに座った姿だった。
『よかった、ラインハルト様、目が覚めたのですね』
『ラインハルト様!あぁ、神様ありがとうございます』
カトリーヌの傍にカインが立っており、ラインハルトを見て号泣していた。
『カイン、なぜそんなに泣いているんだ?それにカトリーヌ様まで』
『なにをおっしゃっているんですか!ラインハルト様がお倒れになって、もう10日も経つんですよ?医師に診ていただいても、本人の精神力次第と。このまま目覚めないのではないかと.......』
泣きながらラインハルトにカインが眠っていた間の事を説明する。ラインハルト自体も10日間も眠っていた事に驚いた。
『キルハイト様も何度かいらっしゃっていただいて。呼びかけても目を覚まされないラインハルト様を見て、どれだけの心労を与えてしまったのかと、キルハイト様まで倒れかねない状況で』
『キルハイト様の代わりに、カトリーヌ様がずっと付き添ってくださってたんですよ。本当にありがとううございました、カトリーヌ様』
カインが深々とカトリーヌに頭を下げる。
『そんな事はありません。ただ、わたくしは傍にいただけで何をした訳ではありません。カイン様のラインハルト様を思う気持ちが通じたのでしょう』
カインに向かってほほ笑むカトリーヌを見て、ラインハルトが声をかけた。
『カトリーヌ様。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。いつぞやは、感情を押さえられずにカトリーヌ様に酷い言葉を投げつけてしまい、紳士の行いではありませんでした。本当に申し訳ありませんでした』
まだ体を自由に起こす事が出来ないので、ベッドに横になったまま、ラインハルトはカトリーヌに謝罪する。
『いえ、あれはわたくしが悪かったのです。自分のせいで姉様が攫われて。自分だけが辛い、そんな風に思って、周りが何も見えていなかったのです。わたくしだけが辛いのではなく、父上も母上も、兄様もラインハルト様も、そしてなによりも姉様が一番.....』
目を潤ませてカトリーヌが答える。
『あの時、ラインハルト様の言葉で、ようやく目が覚めました。今はまだ自分で自由に動く事も出来ません。でも、頑張って、わたくしに出来る事をやろうと思っています』
『カトリーヌ様.....』
『どうぞ、カトリーヌとお呼び下さい。義兄様とお呼びする事はかないませんでしたが、でもわたくしの胸の中ではいつまでもラインハルト様は義兄様と思っております』
カトリーヌの目から一筋の涙が零れ落ちる。
『ありがとう、カトリーヌ…』
目が覚めたものの、10日間も眠っていた事と、これまでの心労が一気に出たのか、なかなかラインハルトの体調は元に戻らなかった。
領地の実務をこなすとなるとしっかり休めないだろうとの事で、半強制的にカトリーヌが過ごす療養所にラインハルトも移された。
勿論、男女が棲み分けられている療養所なので、2人が直接会う事はなかった。ただ、窓越しにリハビリしている姿を互いが見かけていた為、侍女と侍従を介して手紙のやりとりを始めた。
手紙は身の回りの事。リハビリではどんな事に取り組んだなど、たわいもない内容だった。ただ、それでも、互いに励まされリハビリに取り組み、どんどん回復していった。
車椅子でしか移動できなかったカトリーヌが杖で歩ける様になり、次には杖なしで短距離をあるいて、最後には何にもつかまらずに、長い距離を歩ける様になっていた。
『カイン、大丈夫だ。少し疲れただけだ』
雪の舞う空を、ラインハルトはぼんやり眺めていた。
新年を迎えてすぐ、エリアーヌが王子を出産したと、母子共に健やかとバッハツアルトから書簡が届いた。バッハツアルトでは国をあげて王子誕生を祝ったが、エリアーヌの故郷であるナレントは、カトリーヌ王女の容態がまだまだ油断できない状態である為、祝いは控えたいとの内容の書簡を送った。
国同士の争いを避けるためにエリアーヌを嫁がせた形をとったものの、バッハツアルトの強引な行いをナレントが許した訳ではなく、2国間の関係は断絶したと同じ状態だった。
バッハツアルトから知らせが届いた時、張り詰めっていた糸が切れてしまったかのように、ラインハルトは倒れた。そして、目覚めることを拒否するかの様にこんこんと眠り続けた。
それから10日経った頃、ようやく目覚めたラインハルトの目の前に、カトリーヌ王女の姿があった。
以前会った時から比べれば大分顔色も良くなり、生きる力を取り戻しつつある様に見えた。ただ、一人で歩けるまでの回復までには至っていないのか、車いすに座った姿だった。
『よかった、ラインハルト様、目が覚めたのですね』
『ラインハルト様!あぁ、神様ありがとうございます』
カトリーヌの傍にカインが立っており、ラインハルトを見て号泣していた。
『カイン、なぜそんなに泣いているんだ?それにカトリーヌ様まで』
『なにをおっしゃっているんですか!ラインハルト様がお倒れになって、もう10日も経つんですよ?医師に診ていただいても、本人の精神力次第と。このまま目覚めないのではないかと.......』
泣きながらラインハルトにカインが眠っていた間の事を説明する。ラインハルト自体も10日間も眠っていた事に驚いた。
『キルハイト様も何度かいらっしゃっていただいて。呼びかけても目を覚まされないラインハルト様を見て、どれだけの心労を与えてしまったのかと、キルハイト様まで倒れかねない状況で』
『キルハイト様の代わりに、カトリーヌ様がずっと付き添ってくださってたんですよ。本当にありがとううございました、カトリーヌ様』
カインが深々とカトリーヌに頭を下げる。
『そんな事はありません。ただ、わたくしは傍にいただけで何をした訳ではありません。カイン様のラインハルト様を思う気持ちが通じたのでしょう』
カインに向かってほほ笑むカトリーヌを見て、ラインハルトが声をかけた。
『カトリーヌ様。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。いつぞやは、感情を押さえられずにカトリーヌ様に酷い言葉を投げつけてしまい、紳士の行いではありませんでした。本当に申し訳ありませんでした』
まだ体を自由に起こす事が出来ないので、ベッドに横になったまま、ラインハルトはカトリーヌに謝罪する。
『いえ、あれはわたくしが悪かったのです。自分のせいで姉様が攫われて。自分だけが辛い、そんな風に思って、周りが何も見えていなかったのです。わたくしだけが辛いのではなく、父上も母上も、兄様もラインハルト様も、そしてなによりも姉様が一番.....』
目を潤ませてカトリーヌが答える。
『あの時、ラインハルト様の言葉で、ようやく目が覚めました。今はまだ自分で自由に動く事も出来ません。でも、頑張って、わたくしに出来る事をやろうと思っています』
『カトリーヌ様.....』
『どうぞ、カトリーヌとお呼び下さい。義兄様とお呼びする事はかないませんでしたが、でもわたくしの胸の中ではいつまでもラインハルト様は義兄様と思っております』
カトリーヌの目から一筋の涙が零れ落ちる。
『ありがとう、カトリーヌ…』
目が覚めたものの、10日間も眠っていた事と、これまでの心労が一気に出たのか、なかなかラインハルトの体調は元に戻らなかった。
領地の実務をこなすとなるとしっかり休めないだろうとの事で、半強制的にカトリーヌが過ごす療養所にラインハルトも移された。
勿論、男女が棲み分けられている療養所なので、2人が直接会う事はなかった。ただ、窓越しにリハビリしている姿を互いが見かけていた為、侍女と侍従を介して手紙のやりとりを始めた。
手紙は身の回りの事。リハビリではどんな事に取り組んだなど、たわいもない内容だった。ただ、それでも、互いに励まされリハビリに取り組み、どんどん回復していった。
車椅子でしか移動できなかったカトリーヌが杖で歩ける様になり、次には杖なしで短距離をあるいて、最後には何にもつかまらずに、長い距離を歩ける様になっていた。
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