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21 キルハイトの想い
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国外に出掛けると手紙に記していたカトリーヌの行き先は、バッハツアルトだった。エリアーヌの事があって、表立ってにはしてはいないが、事実上の断交状態のバッハツアルトに、内密にカトリーヌが出国したとラインハルトが知ったのは、春もそろそろ終わり、初夏に差し掛かろる季節だった。
『キルハイト、一体どういう事なんだ?カトリーヌが何故?』
『…早いな、ラインハルト』
執務室に飛び込んできたラインハルトに、キルハイトが驚いた目を向ける。
カトリーヌの出国の噂を耳にして、その足でラインハルトは領地から王宮に出仕してきた。ラインハルトのいる領地は王都から比較的近い場所だが、それでも馬車で1日はかかる。
カトリーヌが出国したのは、一昨日。その話がラインハルトの領地まで伝わるのに、2~3日はかかると踏んでいたのに、今日来たとなると。
『一体その話はどこから聞き及んだのだ?』
『……父上から早馬が来た』
(宰相か。全く、食えないお人だ)
『カトリーヌの希望だ。エリアーヌに会いに行きたいと』
『カトリーヌが?』
『そうだ。我々は表立って会いに行く事は出来ない。しかし、異国で1人子供を産み育てている娘や妹に会いたいと、私達が思わない訳ではなかったのは、ラインハルトも分かってくれるだろう?』
『そうだな』
『カトリーヌも短期間であれば国外に出掛けられる程度に体力も回復した。カトリーヌであれば、向こうも警戒せずに受け入れてくれるだろうからな』
『それにしても、カトリーヌ一人で大丈夫なのか?侍女達や近衛騎士達も同道するとは言え』
『非公式にカトリーヌが来訪したい事は打診し、受け入れするの返答もあっての事だ。カトリーヌに、ラインハルトには伝えないで欲しいと釘を刺されていたしなぁ』
『⁈』
カトリーヌに内緒にして欲しいと言われたとキルハイトが伝えると、ラインハルトは目を見開いた。若干青ざめた様子に、キルハイトは苦笑した。
『いや、カトリーヌがラインハルトに内緒にと言ったのは、心配させたくないからと話していたぞ。短期間とは言え、初めて国外。帰って来てから報告してすると、そう話していた。手紙にもそう書いたと話していたが』
『あぁ、確かに。帰ってきたら、会いに行きたいと記してあったが』
幾分かホッとした様子のラインハルトを見て、キルハイトは笑った。
『言葉足らずの妹で申し訳ない。ただ、待っていてやってくれないか?あいつにも譲れないものがあるんだそうだ』
『?わかった』
納得しかねる様子を見せながらも、ラインハルトは頷いた。
いつからだろう。いつをもしれないと将来を悲観されていた虚弱な末の妹の目に諦めないと決意が浮かぶ様になったのは。
エリアーヌが攫われたと分かってから、二度と祖国には戻れないと決まった時には、もう生きる気力もなくなり、ただただ死が訪れるのを待つ、虚な目をしていた末の妹。
ラインハルトの慟哭を目の前にしてから、少しずつカトリーヌは変わっていった。虚弱な体質もあって、なかなか身体が食べるという事を受け付けず、食べても嘔吐してしまい、なかなか口に食べる物をいれる事もしなかったあの娘が、嘔吐しても嘔吐しても、死に物狂いで食べようとする姿は、鬼気迫るものがあった。
長年の療養生活で病み衰えた両下肢を、自由に動かせる様にする為のリハビリは、激痛が伴うものだった。固くなってしまった関節や筋肉を滑らかにする為のリハビリ時間は、カトリーヌは口にハンカチを咥えて行なっていた。大の大人の男でも泣き叫ぶリハビリに、カトリーヌは嫌とも言わず、毎日毎日取り組んだ。病み衰えた体には、リハビリをするだけでも負担になり、夜な夜な熱を出していたが、それでもカトリーヌは毎日リハビリに取り組んだ。1か月、3か月と月日を重ねるうちに、見違える様に動ける様になっていくカトリーヌ。
そんな中、ラインハルトが倒れた。自分のリハビリ時間以外はラインハルトの側に付き添うカトリーヌの姿に、義兄として思う以上の気持ちをラインハルトに抱いていると気がついた時には、兄として友として、この恋だけは引き裂かれる事なく成就して欲しいと強く強く神に祈った。
『キルハイト、一体どういう事なんだ?カトリーヌが何故?』
『…早いな、ラインハルト』
執務室に飛び込んできたラインハルトに、キルハイトが驚いた目を向ける。
カトリーヌの出国の噂を耳にして、その足でラインハルトは領地から王宮に出仕してきた。ラインハルトのいる領地は王都から比較的近い場所だが、それでも馬車で1日はかかる。
カトリーヌが出国したのは、一昨日。その話がラインハルトの領地まで伝わるのに、2~3日はかかると踏んでいたのに、今日来たとなると。
『一体その話はどこから聞き及んだのだ?』
『……父上から早馬が来た』
(宰相か。全く、食えないお人だ)
『カトリーヌの希望だ。エリアーヌに会いに行きたいと』
『カトリーヌが?』
『そうだ。我々は表立って会いに行く事は出来ない。しかし、異国で1人子供を産み育てている娘や妹に会いたいと、私達が思わない訳ではなかったのは、ラインハルトも分かってくれるだろう?』
『そうだな』
『カトリーヌも短期間であれば国外に出掛けられる程度に体力も回復した。カトリーヌであれば、向こうも警戒せずに受け入れてくれるだろうからな』
『それにしても、カトリーヌ一人で大丈夫なのか?侍女達や近衛騎士達も同道するとは言え』
『非公式にカトリーヌが来訪したい事は打診し、受け入れするの返答もあっての事だ。カトリーヌに、ラインハルトには伝えないで欲しいと釘を刺されていたしなぁ』
『⁈』
カトリーヌに内緒にして欲しいと言われたとキルハイトが伝えると、ラインハルトは目を見開いた。若干青ざめた様子に、キルハイトは苦笑した。
『いや、カトリーヌがラインハルトに内緒にと言ったのは、心配させたくないからと話していたぞ。短期間とは言え、初めて国外。帰って来てから報告してすると、そう話していた。手紙にもそう書いたと話していたが』
『あぁ、確かに。帰ってきたら、会いに行きたいと記してあったが』
幾分かホッとした様子のラインハルトを見て、キルハイトは笑った。
『言葉足らずの妹で申し訳ない。ただ、待っていてやってくれないか?あいつにも譲れないものがあるんだそうだ』
『?わかった』
納得しかねる様子を見せながらも、ラインハルトは頷いた。
いつからだろう。いつをもしれないと将来を悲観されていた虚弱な末の妹の目に諦めないと決意が浮かぶ様になったのは。
エリアーヌが攫われたと分かってから、二度と祖国には戻れないと決まった時には、もう生きる気力もなくなり、ただただ死が訪れるのを待つ、虚な目をしていた末の妹。
ラインハルトの慟哭を目の前にしてから、少しずつカトリーヌは変わっていった。虚弱な体質もあって、なかなか身体が食べるという事を受け付けず、食べても嘔吐してしまい、なかなか口に食べる物をいれる事もしなかったあの娘が、嘔吐しても嘔吐しても、死に物狂いで食べようとする姿は、鬼気迫るものがあった。
長年の療養生活で病み衰えた両下肢を、自由に動かせる様にする為のリハビリは、激痛が伴うものだった。固くなってしまった関節や筋肉を滑らかにする為のリハビリ時間は、カトリーヌは口にハンカチを咥えて行なっていた。大の大人の男でも泣き叫ぶリハビリに、カトリーヌは嫌とも言わず、毎日毎日取り組んだ。病み衰えた体には、リハビリをするだけでも負担になり、夜な夜な熱を出していたが、それでもカトリーヌは毎日リハビリに取り組んだ。1か月、3か月と月日を重ねるうちに、見違える様に動ける様になっていくカトリーヌ。
そんな中、ラインハルトが倒れた。自分のリハビリ時間以外はラインハルトの側に付き添うカトリーヌの姿に、義兄として思う以上の気持ちをラインハルトに抱いていると気がついた時には、兄として友として、この恋だけは引き裂かれる事なく成就して欲しいと強く強く神に祈った。
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