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予定では1週間のバッハツアルトの滞在予定を、エリアーヌの体調不良という事で、急遽ナレントに帰国した。エリアーヌは感じた言いようのない不安と、ラインハルトはバッハツアルトの王太子がエリアーヌに向けた視線に、何とも言えない不快感を感じていた。
『ゆっくり海を見てみたかったのに』
ナレントに無事戻ってきてから、1週間。ラインハルトと共にエリアーヌは領地に来ていた。溜まっていた仕事を片付け、二人でガゼボでお茶をしていると、ホッとした事もあって、エリアーヌがラインハルトにつぶやく。
『あぁ、帰りにと思っていたからね。バッハツアルトだけにしか海がない訳じゃないし、いつか行こう。エリアーヌに見せてあげるよ』
『ハルト本当?絶対よ、約束』
『あぁ、約束だ』
エリアーヌが右手の小指をラインハルトの右手の小指に絡めて微笑む。子供の様に無邪気に笑うエリアーヌにラインハルトが目を奪われていると、息を切らして家令がガゼボにやってきた。
『ラインハルト様、王都から早馬が....』
『王都から?』
ラインハルトが立ち上がる。
『エリアーヌ、行ってくる。待っていてくれ』
家令を伴って、邸に戻っていくラインハルトの後姿を見送りつつ、エリアーヌは冷めたティーカップを両手で包み、嫌な予感に胸が騒めいた。
暫くのち、ラインハルト一人でガゼボに戻ってきた。表情は少し硬く、早馬の知らせがあまりよくない事だと察した。
『ハルト、一体なにが.....』
『バッハツアルトから、エリアーヌを王太子妃として迎えたいとの親書が届いたそうだ』
『バッハツアルトから?王太子妃?え?一体何を言っているの?私、あの時、ハルトを婚約者として挨拶をしたのに?』
『勿論、エリアーヌには私という婚約者がいて、近々降嫁する事になっているので、そレには応じられないと返書したそうだ』
『当然よ。父上はそんな申し出を受ける方じゃないもの』
『しかし、バッハツアルトも何を考えているのか。国王陛下はそんな事をおっしゃるような方ではなかった様に思うのだけどね』
あの時、絡みつくような視線でエリアーヌを見つめていた王太子。彼だったら、今回の事も納得できる。エリアーヌの隣にいた私の向けた視線。あれは嫉妬に狂った男の視線だったとラインハルトは思った。
身分も容姿も実力さえもエリアーヌに劣らないだろうバッハツアルトの王太子。もし出会いがもっと違った形であったなら、もしかしたらエリアーヌの隣にいたのは彼だったかもしれないと、そんなことも思った。
『そうよね。あの時に失礼な事を言った王太子を諌めて下さったのは陛下でしたもの。何かの手違いとか、そういう事かもきっと』
ホッとした表情を見せるエリアーヌ。
『父上は国益を考えなければならない立場だけど、大事な子供達を政略の駒になどする気は一切ないっていつも言って下さっているから。変に不安になってしまって、わたしったら』
早くハルトのお嫁さんになりたいわと、頬を染めながらラインハルトの胸に持たれるエリアーヌ。そんなエリアーヌをラインハルトは心から愛おしく感じ、見えない誰から奪われる事のない様にと強く腕の中に掻き抱いた。
『またですか?何度も断っているのに、バッハツアルトも一体何を考えているんですか?』
バッハツアルトから届いた親書キルハイトが握りつぶす。執務室で返書を認めながら、国王も深いため息をついた。
『我にもわからん。エリアーヌには婚約者がいるし、婚約解消をさせるつもりもないし、ましてやバッハツアルトに嫁がせる気も毛頭ないと、少々言葉を選ばすに出してはみたものの、凝りもせずまただ。こんな不毛な事をする奴ではいと思っていたのだが、どうも、予想は当たっていたらしい』
『予想とは?父上は一体何をご存じなのですか?』
矢継ぎ早に尋ねるキルハイトに、落ち着くようにと声をかけて、国王は答えた。
『「影」をバッハツアルトに向かわせたのだ』
『国王直属の「影」をですか?』
「影」とは国王直属の諜報部隊で、時刻内の貴族の動向や他国の動向などを主に調査する諜報部隊の事だ。舞台の詳しい事は国王から国王へのみ受け継がれる重要な情報なので、キルハイトは詳しい事は知らない。
『「影」の調べによると、バッハツアルトの国王が病に倒れ、内政は実質王太子が取り仕切っている様なのだ』
『ディラン王太子がですか?まぁ、確かに立太子の儀は済んでいますし、十分すぎる能力もあるを聞いておりますし、このまま国王になったとしても支障はないでしょう』
『バッハツアルトでは、立太子の儀には婚約者も帯同せねばらない慣例があってな、今回は国王の病という事もあり立太子の儀は婚約者を帯同せずに済ませたようだが、国王の戴冠式となるとそうはいかぬ。ならば、その時点で王太子妃と娶っていなければらないのだ。せめて婚約者だけでも』
『そうなのですか?それならば何もエリアーヌに拘わっている場合はでないでしょう。以前からディラン王太子には国内ならず、他国の高位令嬢や王族からも婚礼について降るような打診があったはずです。その中から選べばよいのでは?』
『ゆっくり海を見てみたかったのに』
ナレントに無事戻ってきてから、1週間。ラインハルトと共にエリアーヌは領地に来ていた。溜まっていた仕事を片付け、二人でガゼボでお茶をしていると、ホッとした事もあって、エリアーヌがラインハルトにつぶやく。
『あぁ、帰りにと思っていたからね。バッハツアルトだけにしか海がない訳じゃないし、いつか行こう。エリアーヌに見せてあげるよ』
『ハルト本当?絶対よ、約束』
『あぁ、約束だ』
エリアーヌが右手の小指をラインハルトの右手の小指に絡めて微笑む。子供の様に無邪気に笑うエリアーヌにラインハルトが目を奪われていると、息を切らして家令がガゼボにやってきた。
『ラインハルト様、王都から早馬が....』
『王都から?』
ラインハルトが立ち上がる。
『エリアーヌ、行ってくる。待っていてくれ』
家令を伴って、邸に戻っていくラインハルトの後姿を見送りつつ、エリアーヌは冷めたティーカップを両手で包み、嫌な予感に胸が騒めいた。
暫くのち、ラインハルト一人でガゼボに戻ってきた。表情は少し硬く、早馬の知らせがあまりよくない事だと察した。
『ハルト、一体なにが.....』
『バッハツアルトから、エリアーヌを王太子妃として迎えたいとの親書が届いたそうだ』
『バッハツアルトから?王太子妃?え?一体何を言っているの?私、あの時、ハルトを婚約者として挨拶をしたのに?』
『勿論、エリアーヌには私という婚約者がいて、近々降嫁する事になっているので、そレには応じられないと返書したそうだ』
『当然よ。父上はそんな申し出を受ける方じゃないもの』
『しかし、バッハツアルトも何を考えているのか。国王陛下はそんな事をおっしゃるような方ではなかった様に思うのだけどね』
あの時、絡みつくような視線でエリアーヌを見つめていた王太子。彼だったら、今回の事も納得できる。エリアーヌの隣にいた私の向けた視線。あれは嫉妬に狂った男の視線だったとラインハルトは思った。
身分も容姿も実力さえもエリアーヌに劣らないだろうバッハツアルトの王太子。もし出会いがもっと違った形であったなら、もしかしたらエリアーヌの隣にいたのは彼だったかもしれないと、そんなことも思った。
『そうよね。あの時に失礼な事を言った王太子を諌めて下さったのは陛下でしたもの。何かの手違いとか、そういう事かもきっと』
ホッとした表情を見せるエリアーヌ。
『父上は国益を考えなければならない立場だけど、大事な子供達を政略の駒になどする気は一切ないっていつも言って下さっているから。変に不安になってしまって、わたしったら』
早くハルトのお嫁さんになりたいわと、頬を染めながらラインハルトの胸に持たれるエリアーヌ。そんなエリアーヌをラインハルトは心から愛おしく感じ、見えない誰から奪われる事のない様にと強く腕の中に掻き抱いた。
『またですか?何度も断っているのに、バッハツアルトも一体何を考えているんですか?』
バッハツアルトから届いた親書キルハイトが握りつぶす。執務室で返書を認めながら、国王も深いため息をついた。
『我にもわからん。エリアーヌには婚約者がいるし、婚約解消をさせるつもりもないし、ましてやバッハツアルトに嫁がせる気も毛頭ないと、少々言葉を選ばすに出してはみたものの、凝りもせずまただ。こんな不毛な事をする奴ではいと思っていたのだが、どうも、予想は当たっていたらしい』
『予想とは?父上は一体何をご存じなのですか?』
矢継ぎ早に尋ねるキルハイトに、落ち着くようにと声をかけて、国王は答えた。
『「影」をバッハツアルトに向かわせたのだ』
『国王直属の「影」をですか?』
「影」とは国王直属の諜報部隊で、時刻内の貴族の動向や他国の動向などを主に調査する諜報部隊の事だ。舞台の詳しい事は国王から国王へのみ受け継がれる重要な情報なので、キルハイトは詳しい事は知らない。
『「影」の調べによると、バッハツアルトの国王が病に倒れ、内政は実質王太子が取り仕切っている様なのだ』
『ディラン王太子がですか?まぁ、確かに立太子の儀は済んでいますし、十分すぎる能力もあるを聞いておりますし、このまま国王になったとしても支障はないでしょう』
『バッハツアルトでは、立太子の儀には婚約者も帯同せねばらない慣例があってな、今回は国王の病という事もあり立太子の儀は婚約者を帯同せずに済ませたようだが、国王の戴冠式となるとそうはいかぬ。ならば、その時点で王太子妃と娶っていなければらないのだ。せめて婚約者だけでも』
『そうなのですか?それならば何もエリアーヌに拘わっている場合はでないでしょう。以前からディラン王太子には国内ならず、他国の高位令嬢や王族からも婚礼について降るような打診があったはずです。その中から選べばよいのでは?』
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