公爵令嬢は豹変しました 〜走馬灯を見る過程で、前世の記憶を思い出したので悪役令嬢にはなりません〜

mimiaizu

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第29話 朝から騒がしい

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ミロアが目覚めてから十二日目、レトスノム家の屋敷は朝から騒がしかった。


「旦那様、準備は万全であります」

「うむ、ミロア……じゃなくて私の要求したこと全て整っておるな?」

「はい、仰せのとおりに」

「そうか、よくやった。これで王宮に向かう事ができる!」


バーグ・レトスノム公爵はしっかり準備を整えて再び王宮に向かう。ただその前に、ダスターとスタードをはじめとする屋敷に残る家臣たちに命じておいたのだ。たとえ王族が相手だろうとミロアを守れと。


「皆もすでに分かっているだろうが、昨日のガンマ殿下の暴挙はもう看過できん! 向こうに非があるくせにわざわざ文句を言うためにミロアに会いに来るなど非常識極まりない! 今度こそ婚約解消、いや婚約破棄してくれる! 私が王宮に向かう間に屋敷にいるミロアのことを頼むぞ!」

「「はっ! かしこまりました!」」

「「「「「かしこまりました!」」」」」

(お父様ったらやる気満々ね……。家臣の皆も……。まるで戦場に行くような雰囲気じゃない。これを義母様の屋敷でもやるのかしらね)


昨日のガンマの突撃訪問の話を聞いたバーグは激怒し、今度こそ婚約を解消か破棄すべく王宮に向かうことになり、その間にガンマ殿下が何かしでかす可能性も考えて、昨日のうちにミロアと話し合って自他共に周りのことも考えて対策を準備したのだ。


「お父様、王宮への道中どうかお気をつけてください。ガンマ殿下がお父様にも害をなすことも――」

「安心せよミロア。私の護衛も腕の立つ者ばかり。そして私自身も剣には自信があるのだ。若い者にまだ負けないくらいにはな」

「戦争の頃に活躍した腕は鈍っていないということですね」

「そうだ。いざという時は目にものを見せてくれる」


若かりし頃のバーグ・レトスノムの活躍は、ミロアも耳にしている。父バーグは剣士としても大変な強さを誇っていたと古株の家臣たちから何度も聞かされた。学園や社交界でもその話は結構有名なので、ミロアも誇りを感じている。


(お父様も見た目は逞しいし、いかつい感じがするから実は武勇伝が嘘でしたなんてことは無さそうね。こういうのを『イケオジ』っていうのかしらね)


父バーグを眺めるミロアは前世の知識で渋い評価をする。口に出さないのは『イケオジ』などミロア以外理解できないからだ。


(私以外の転生者がいれば……いや、面倒なことになるだけか)


一瞬、自分以外に転生者がいればいいなと思いかけたが、敵対する可能性もありうるのでそれはなくていいと考え直すミロア。もし転生者がいるのだとすれば、対極にいるのが定番だからだ。
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