96 / 248
第61話 過去を振り返る
しおりを挟む
国王と王妃が揃って暗い顔でため息を吐いたり新たな王太子のことを話している頃、王太子の座を失った第一王子ガンマは自室で軟禁されていた。
「くそ! くそ! くそっ! 何でこんなことになるんだよ! 畜生!」
軟禁された自室でガンマはヤケを起こして暴れまわっていた。何しろ、両親である国王と王妃から『卒業したら王籍から排除のち男爵になる』と聞かされて納得できずにその場で喚きながら暴れまわったのだ。衛兵に羽交い締めにされて、止められて軟禁されても仕方がない。自室だというだけでもありがたいことだが、ガンマはそんな事を気にすることはない。
「どうしてこんなことに、畜生!」
己の部屋がボロボロになるのも構わず、ガンマは暴れ続けた。やがて落ち着いて動きを止めるが、今度はうなだれ続けるのであった。
「……どうして、どうしてこの僕が……こんな……」
ガンマは涙さえ浮かべた。そして、何故こんな事になったのかと己の過去を振り返る。
幼い頃に王太子になると言われて公爵令嬢ミロア・レトスノムと婚約させられた。その際は強制的で反論を許されなかったために強い不満をいだいた。しかも、婚約者となったミロアの方はガンマの好きなタイプの少女ではなかったのに、ミロアの方は目に見えるくらいに恋愛感情を抱いてきたのだからたまったものではなかった。
自分は反感を抱いているのに周囲だけが満足している。それが気に入らなかったガンマは、せめてもの抵抗として少しばかり無茶な要求をミロアに突きつけたりもした。勉学の宿題を代わりにさせたり、自分が遊ぶ時間を作るため彼女に周囲の大人を引きつけさせたり、欲しい玩具や本の代金を支払わさせたり、自分の代わりに叱られるように仕向けたりと嫌がらせに近い要求を数多く。
それでも好意を向けてくるミロアにガンマは気味の悪さを覚え始め、やがて要求するのを止めてできる限り近寄らないようにするのだった。ミロアと顔を合わせないように王宮に留まることが多くなったのだが、それだと自身の行動が制限されるため、暇つぶしも兼ねてメイドに関係を求め始めた。だが国王にバレて厳しく咎められて未遂に終わった。
そして、学園で運命の出会いではないかと思うほどの女性に出会って仲良くなった。それがミーヤ・ウォーム男爵令嬢であり、彼女と一緒にいるだけで心が癒やされる思いだった。それは二人の側近たちも同じ思いであったと信じている。
しかし、その癒やされる日常は長くは続かなかった。ミロアが嫉妬してミーヤに絡んで来たと知ってすぐさま駆けつけて、その際に怒りに任せてミロアに長年の鬱憤を込めて暴言を吐き捨てた挙げ句に突き飛ばして床に転がしてしまったのだ。
「くそ! くそ! くそっ! 何でこんなことになるんだよ! 畜生!」
軟禁された自室でガンマはヤケを起こして暴れまわっていた。何しろ、両親である国王と王妃から『卒業したら王籍から排除のち男爵になる』と聞かされて納得できずにその場で喚きながら暴れまわったのだ。衛兵に羽交い締めにされて、止められて軟禁されても仕方がない。自室だというだけでもありがたいことだが、ガンマはそんな事を気にすることはない。
「どうしてこんなことに、畜生!」
己の部屋がボロボロになるのも構わず、ガンマは暴れ続けた。やがて落ち着いて動きを止めるが、今度はうなだれ続けるのであった。
「……どうして、どうしてこの僕が……こんな……」
ガンマは涙さえ浮かべた。そして、何故こんな事になったのかと己の過去を振り返る。
幼い頃に王太子になると言われて公爵令嬢ミロア・レトスノムと婚約させられた。その際は強制的で反論を許されなかったために強い不満をいだいた。しかも、婚約者となったミロアの方はガンマの好きなタイプの少女ではなかったのに、ミロアの方は目に見えるくらいに恋愛感情を抱いてきたのだからたまったものではなかった。
自分は反感を抱いているのに周囲だけが満足している。それが気に入らなかったガンマは、せめてもの抵抗として少しばかり無茶な要求をミロアに突きつけたりもした。勉学の宿題を代わりにさせたり、自分が遊ぶ時間を作るため彼女に周囲の大人を引きつけさせたり、欲しい玩具や本の代金を支払わさせたり、自分の代わりに叱られるように仕向けたりと嫌がらせに近い要求を数多く。
それでも好意を向けてくるミロアにガンマは気味の悪さを覚え始め、やがて要求するのを止めてできる限り近寄らないようにするのだった。ミロアと顔を合わせないように王宮に留まることが多くなったのだが、それだと自身の行動が制限されるため、暇つぶしも兼ねてメイドに関係を求め始めた。だが国王にバレて厳しく咎められて未遂に終わった。
そして、学園で運命の出会いではないかと思うほどの女性に出会って仲良くなった。それがミーヤ・ウォーム男爵令嬢であり、彼女と一緒にいるだけで心が癒やされる思いだった。それは二人の側近たちも同じ思いであったと信じている。
しかし、その癒やされる日常は長くは続かなかった。ミロアが嫉妬してミーヤに絡んで来たと知ってすぐさま駆けつけて、その際に怒りに任せてミロアに長年の鬱憤を込めて暴言を吐き捨てた挙げ句に突き飛ばして床に転がしてしまったのだ。
50
あなたにおすすめの小説
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる