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第123話 学園の状況
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朝からスマートブレイブ学園は大騒ぎとなった。
朝早く元王太子の第一王子ガンマ・ドープアントが、公爵令嬢ミロア・レトスノムと侯爵令息オルフェ・イーノックが婚約したと叫び、オルフェ・イーノックに出てくるように命じたのだ。教室にいないことも気づかずに。
ガンマの尋常じゃない様子に気づいた側近のマーク・アモウも婚約のことを聞いて動揺し、更にそこに元側近のローイ・ミュドも鬼気迫る勢いで駆けつけて状況は大きく混乱することになった。ただ、マーク・アモウはすきを突いて逃げてしまったが。
ガンマの叫びと言動から、多くの生徒が『ミロアとオルフェが婚約』『二人の婚約にガンマ殿下が憤り』『ミロアに恋慕するローイが二人の婚約を猛反対』と思った。というか、殆どが事実なので知れ渡ったという方が正しいだろう。仮にも王族であるガンマの言葉なのだ。嫌でも確かな話と思うことだろう。
この話は、直接見て聞いていない生徒たちにもあっという間に伝わってしまった。生徒の誰もが王子と公爵令嬢のことを気にしていたのだから当然のことでもある。
ほぼ全校生徒が知っている状況であり、教師たちもまたどう対応すべきか判断に迷うほどの状況下にあった。話の拡散を止めようにも手遅れだし、王家が何も言ってこないので事実と正式に公表することもできない。下手なことを言えば、状況は更に悪くなるか大きな勘違いを生んでしまう。かといって、このまま放置というのも違う気がする。
教師たちは上の立場の者から指示を仰ぐしかなかった。それが学園の実質トップに居るハゲ頭の老人だった。
「……くふふふふ、まったく滑稽なものだ。王族とは言え、生徒一人の言動で学園がこんなにも騒がしくなるとは」
このハゲ頭の老人の名はヤミズーク・マスカレード。スマートブレイブ学園の学園長であり、教師たちが指示を待っているトップの男だ。
「近年極稀に見る大馬鹿者が現れたものだ。非常に面白い。国王陛下もさぞユニークな育て方をされたのだな。この状況をしれば笑いがこみ上げて胃痛を起こすこと間違いなしだ」
「学園長……笑いではなく怒りがこみ上げるのです」
「はて? そうかね? 最近はボケてしまいがちでかなわんねぇ」
教頭の男がため息を付きながら、そんなことないでしょうと思う。学園長の裏の経歴を知るだけに、楽しんでいるようなことを口にしつつも嘆かわしく思っていると分かるのだ。少しでも緊張をほぐそうと思ってボケたなどと口にすることも。
「……まあ、今は放置でいいだろう。他の生徒ならともかく王族のバカ王子が首謀者なら、これは王家の責任だ。後でワシが文句を言ってやるから責任とかは何も考えんで良い」
「承知しました。……皆、聞いてのとおりだ。話題のことは放置して今は授業を優先してくれ」
「「「「「はい!」」」」」
教師たちはホッと安心するものやまだ疑念を抱くものがいる。だが、トップに『話題は放置』といわれればそうするのだ。もし、それで何があっても『学園長』のせいにすればいいのだから。
朝早く元王太子の第一王子ガンマ・ドープアントが、公爵令嬢ミロア・レトスノムと侯爵令息オルフェ・イーノックが婚約したと叫び、オルフェ・イーノックに出てくるように命じたのだ。教室にいないことも気づかずに。
ガンマの尋常じゃない様子に気づいた側近のマーク・アモウも婚約のことを聞いて動揺し、更にそこに元側近のローイ・ミュドも鬼気迫る勢いで駆けつけて状況は大きく混乱することになった。ただ、マーク・アモウはすきを突いて逃げてしまったが。
ガンマの叫びと言動から、多くの生徒が『ミロアとオルフェが婚約』『二人の婚約にガンマ殿下が憤り』『ミロアに恋慕するローイが二人の婚約を猛反対』と思った。というか、殆どが事実なので知れ渡ったという方が正しいだろう。仮にも王族であるガンマの言葉なのだ。嫌でも確かな話と思うことだろう。
この話は、直接見て聞いていない生徒たちにもあっという間に伝わってしまった。生徒の誰もが王子と公爵令嬢のことを気にしていたのだから当然のことでもある。
ほぼ全校生徒が知っている状況であり、教師たちもまたどう対応すべきか判断に迷うほどの状況下にあった。話の拡散を止めようにも手遅れだし、王家が何も言ってこないので事実と正式に公表することもできない。下手なことを言えば、状況は更に悪くなるか大きな勘違いを生んでしまう。かといって、このまま放置というのも違う気がする。
教師たちは上の立場の者から指示を仰ぐしかなかった。それが学園の実質トップに居るハゲ頭の老人だった。
「……くふふふふ、まったく滑稽なものだ。王族とは言え、生徒一人の言動で学園がこんなにも騒がしくなるとは」
このハゲ頭の老人の名はヤミズーク・マスカレード。スマートブレイブ学園の学園長であり、教師たちが指示を待っているトップの男だ。
「近年極稀に見る大馬鹿者が現れたものだ。非常に面白い。国王陛下もさぞユニークな育て方をされたのだな。この状況をしれば笑いがこみ上げて胃痛を起こすこと間違いなしだ」
「学園長……笑いではなく怒りがこみ上げるのです」
「はて? そうかね? 最近はボケてしまいがちでかなわんねぇ」
教頭の男がため息を付きながら、そんなことないでしょうと思う。学園長の裏の経歴を知るだけに、楽しんでいるようなことを口にしつつも嘆かわしく思っていると分かるのだ。少しでも緊張をほぐそうと思ってボケたなどと口にすることも。
「……まあ、今は放置でいいだろう。他の生徒ならともかく王族のバカ王子が首謀者なら、これは王家の責任だ。後でワシが文句を言ってやるから責任とかは何も考えんで良い」
「承知しました。……皆、聞いてのとおりだ。話題のことは放置して今は授業を優先してくれ」
「「「「「はい!」」」」」
教師たちはホッと安心するものやまだ疑念を抱くものがいる。だが、トップに『話題は放置』といわれればそうするのだ。もし、それで何があっても『学園長』のせいにすればいいのだから。
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