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第4章 因縁編
改める決意
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ミーラからの知らせを聞いたローグは絶句した。
(嘘だろ!? レオンと同レベルの敵が増えるのかよ!? レオンだけでも苦戦するってのに!)
「あれ? もうみんな来るの? これは早く終わっちゃうね」
「…………!」
「ローグ、どうしよう!」
「どうする? ローグ」
「くぅ…………」
レオンにも同情するような目で見られて、ローグは歯噛みするしかなかった。想定以上の力を持ったレオンだけでも苦戦するのに更なる敵が現れるなど対応できない。ミーラを囮にしたとしても逃げきれる可能性はかなり薄い。「どうする?」と聞かれても正直困る。ローグのほうが聞きたいくらいだった。
「ふう、仕方ないな。見逃しちゃうか」
「は?」
「え?」
「聞こえなかった? 君たち二人を見逃すって言ったんだよ」
「「ええ!?」」
悩むローグにレオンが信じられないことを言いだした。レオンが二人を見逃す。それは騎士団から逃がしてくれるということだった。実際にレオンは剣の構えを解いた。二人にとっては好都合だが……
「み、見逃すって、見逃してくれるの!?」
「うん、そうだよ。さっさと逃げなよ」
「何言ってんだ、お前は! どういうつもりだ!」
(こいつが見逃すだって、今更、こんなタイミングで? そんなはずはない! こいつはそんな優しい奴じゃない! おそらくは……)
好都合なのだが、それをすぐに信じられるほどローグは単純じゃない。レオンのことを知っていれば、誰でも疑うはずなのだ(ミーラでない限り)。レオンを信じることができないローグは結界を維持し続ける。
(何か企みがある。そうに違いない。あいつの性格からして、こんなことを言いだす理由があるとすれば……)
「見逃すのは嘘で後ですぐに追ってくるつもりだろ」
「え!?」
「…………」
「いや、先回りして待ち構えて捕らえるつもりか? もしかして、俺達を油断させて……」
「やめてよ、もう! 僕ってそんなに信用できない?」
「今まで猫を被ってきたやつの言葉だぞ、それも自分のことしか考えない男だ。信じるほうがおかしいだろ……!」
「あっ!」
「はは、確かにそれは言えてるね。君が僕の言うことを疑うのは仕方がないね」
「当たり前だ!」
「でもね、今度ばかりは本当に見逃すつもりだよ。理由もあるしね」
「理由だと?」
ローグは眉をひそめる。レオン自身が信用できないことを肯定してきたのだ。しかも、そのうえで見逃す理由があるという。
「言ったでしょ、戦いを望んでるってね」
「……このまま続ければいいだけじゃないのか?」
「そうしたら、先輩たちが混じっちゃってあまり楽しめないでしょ? それにローグは万全じゃなかった、違う?」
「っ! それは……」
「万全だったら、もっと強いでしょ。今見逃せばローグはいつか再び戻ってきて王国に牙をむく。そうなったら、その時こそ本当の君と戦えると思ったんだ」
「……そんな、ことのために?」
「激しい戦いができる機会に恵まれるんだ、そんなこととはひどいね」
「……自分の楽しみのために見逃すというのか、お前らしいと言えばお前らしいが……」
「そういうことなんだけど、納得してもらえたかい?」
「「……」」
ローグもミーラも複雑な気分になった。レオンの言うことは分かったが気乗りがしないのだ。レオンの楽しみのために見逃される、それがどうにも癪に障る。だが、他に選択肢はない。
(……会話してみて今のこいつなら本当に見逃すつもりかもしれないが……それに今の状態だと逃げたほうが得策、騎士団全員を相手するわけにはいかない……信用したわけではないが、やむを得んな)
「いいだろう。見逃されておくとしよう」
「ローグ!?」
「本当かい!? よかった、信用してもらって嬉しいよ!」
「信用したわけではない。他に選択肢が無かっただけだ。そして覚えていろ」
「へ? 何を?」
「お前の言う通り、俺は必ず王国に牙をむくだろう。その時は望み通り俺がお前の相手をしてやる」
「っ! ……分かった。覚えておくよ」
「ふん! 行くぞミーラ!」
「う、うん……!」
ローグは結界を解き、レオンのほうを向きながら後ろに下がって、十分距離を開けてから王国とは逆の方向に走り出した。ミーラは荷物をもってローグの後に従う。そんな二人をレオンは黙ってみているだけだった。追ってくるような気配はない。
(本当に逃がしてくれるとはな……いや、まだ分からないぞ。さっき見た魔法みたいに一気に距離を詰めてくるかもしれない。まだ警戒したほうがいいな)
「ミーラ、騎士団の気配はどうだ?」
「レオンのほうに集まってる。そこで止まってるみたい」
「止まってるだと?」
「うん。レオンも動かないし、そこで話でもしてるのかな?」
「…………そうか」
ローグはミーラの言葉を聞いても警戒を緩めない。この先に待ち構えている可能性も少なくない。もしくは、自分たちの行動を予測して他国に連絡していてもおかしくはない。どうしてもそう考えてしまう。だが、本当にローグの頭の中にあるのは警戒心だけではなかった。
それは屈辱だった。
(この俺が、見逃される? あいつに、復讐の対象に? ふざけるな! こんな屈辱は生まれて初めてだ! 今も昔もな!)
復讐の対象に助けられたという事実が頭にくる。怒りがこみ上げる。【外道魔法】の副作用だけではない。
(レオン、いつか後悔させてやる! 俺達を逃がしたことを! そして思い知らせてやる! 俺の憎しみをな!)
ミーラを従えて、ローグは改めて復讐を決意した。今度はこの怒りも含めて晴らすために。今は悔しさも胸に秘めて走り続けた。
(嘘だろ!? レオンと同レベルの敵が増えるのかよ!? レオンだけでも苦戦するってのに!)
「あれ? もうみんな来るの? これは早く終わっちゃうね」
「…………!」
「ローグ、どうしよう!」
「どうする? ローグ」
「くぅ…………」
レオンにも同情するような目で見られて、ローグは歯噛みするしかなかった。想定以上の力を持ったレオンだけでも苦戦するのに更なる敵が現れるなど対応できない。ミーラを囮にしたとしても逃げきれる可能性はかなり薄い。「どうする?」と聞かれても正直困る。ローグのほうが聞きたいくらいだった。
「ふう、仕方ないな。見逃しちゃうか」
「は?」
「え?」
「聞こえなかった? 君たち二人を見逃すって言ったんだよ」
「「ええ!?」」
悩むローグにレオンが信じられないことを言いだした。レオンが二人を見逃す。それは騎士団から逃がしてくれるということだった。実際にレオンは剣の構えを解いた。二人にとっては好都合だが……
「み、見逃すって、見逃してくれるの!?」
「うん、そうだよ。さっさと逃げなよ」
「何言ってんだ、お前は! どういうつもりだ!」
(こいつが見逃すだって、今更、こんなタイミングで? そんなはずはない! こいつはそんな優しい奴じゃない! おそらくは……)
好都合なのだが、それをすぐに信じられるほどローグは単純じゃない。レオンのことを知っていれば、誰でも疑うはずなのだ(ミーラでない限り)。レオンを信じることができないローグは結界を維持し続ける。
(何か企みがある。そうに違いない。あいつの性格からして、こんなことを言いだす理由があるとすれば……)
「見逃すのは嘘で後ですぐに追ってくるつもりだろ」
「え!?」
「…………」
「いや、先回りして待ち構えて捕らえるつもりか? もしかして、俺達を油断させて……」
「やめてよ、もう! 僕ってそんなに信用できない?」
「今まで猫を被ってきたやつの言葉だぞ、それも自分のことしか考えない男だ。信じるほうがおかしいだろ……!」
「あっ!」
「はは、確かにそれは言えてるね。君が僕の言うことを疑うのは仕方がないね」
「当たり前だ!」
「でもね、今度ばかりは本当に見逃すつもりだよ。理由もあるしね」
「理由だと?」
ローグは眉をひそめる。レオン自身が信用できないことを肯定してきたのだ。しかも、そのうえで見逃す理由があるという。
「言ったでしょ、戦いを望んでるってね」
「……このまま続ければいいだけじゃないのか?」
「そうしたら、先輩たちが混じっちゃってあまり楽しめないでしょ? それにローグは万全じゃなかった、違う?」
「っ! それは……」
「万全だったら、もっと強いでしょ。今見逃せばローグはいつか再び戻ってきて王国に牙をむく。そうなったら、その時こそ本当の君と戦えると思ったんだ」
「……そんな、ことのために?」
「激しい戦いができる機会に恵まれるんだ、そんなこととはひどいね」
「……自分の楽しみのために見逃すというのか、お前らしいと言えばお前らしいが……」
「そういうことなんだけど、納得してもらえたかい?」
「「……」」
ローグもミーラも複雑な気分になった。レオンの言うことは分かったが気乗りがしないのだ。レオンの楽しみのために見逃される、それがどうにも癪に障る。だが、他に選択肢はない。
(……会話してみて今のこいつなら本当に見逃すつもりかもしれないが……それに今の状態だと逃げたほうが得策、騎士団全員を相手するわけにはいかない……信用したわけではないが、やむを得んな)
「いいだろう。見逃されておくとしよう」
「ローグ!?」
「本当かい!? よかった、信用してもらって嬉しいよ!」
「信用したわけではない。他に選択肢が無かっただけだ。そして覚えていろ」
「へ? 何を?」
「お前の言う通り、俺は必ず王国に牙をむくだろう。その時は望み通り俺がお前の相手をしてやる」
「っ! ……分かった。覚えておくよ」
「ふん! 行くぞミーラ!」
「う、うん……!」
ローグは結界を解き、レオンのほうを向きながら後ろに下がって、十分距離を開けてから王国とは逆の方向に走り出した。ミーラは荷物をもってローグの後に従う。そんな二人をレオンは黙ってみているだけだった。追ってくるような気配はない。
(本当に逃がしてくれるとはな……いや、まだ分からないぞ。さっき見た魔法みたいに一気に距離を詰めてくるかもしれない。まだ警戒したほうがいいな)
「ミーラ、騎士団の気配はどうだ?」
「レオンのほうに集まってる。そこで止まってるみたい」
「止まってるだと?」
「うん。レオンも動かないし、そこで話でもしてるのかな?」
「…………そうか」
ローグはミーラの言葉を聞いても警戒を緩めない。この先に待ち構えている可能性も少なくない。もしくは、自分たちの行動を予測して他国に連絡していてもおかしくはない。どうしてもそう考えてしまう。だが、本当にローグの頭の中にあるのは警戒心だけではなかった。
それは屈辱だった。
(この俺が、見逃される? あいつに、復讐の対象に? ふざけるな! こんな屈辱は生まれて初めてだ! 今も昔もな!)
復讐の対象に助けられたという事実が頭にくる。怒りがこみ上げる。【外道魔法】の副作用だけではない。
(レオン、いつか後悔させてやる! 俺達を逃がしたことを! そして思い知らせてやる! 俺の憎しみをな!)
ミーラを従えて、ローグは改めて復讐を決意した。今度はこの怒りも含めて晴らすために。今は悔しさも胸に秘めて走り続けた。
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