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第5章 外国編
謝罪
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「兄上、大丈夫か!?」
「……リオル」
寄生生物が離れて、解放されたアゼルはその場に倒れてしまった。リオルはそんな兄の傍に寄り添う。逃げた寄生生物は後回しと言った感じだ。
「やっぱりすごいよ、お前は……。僕は何一つ敵いそうにないや」
「こんな時に何を……。今は自分の心配をしてくれ」
「そんなことできないさ。分からないか?」
「…………」
倒れているアゼルを心配するリオルは、彼の言葉の意味を理解して俯く。今のリオルにも分かってしまうのだ。
「こんなことになるぐらいだったら、僕はもっと素直になるべきだった。自分のことも、母上のことも、お前たちのことも。本当にバカだったよ僕は。愚かにも傲慢になって威張り散らして他の人を傷つけるばかりで、どうしようもない奴だったな」
「兄上だけじゃない、私もある意味同罪だ。兄上を、周りを見返すと決めたのに、兄上に向き合うことをいつしかしなくなっていた。見向きもしなくなった。血のつながった家族なのに、無自覚に見下してしまっていた。私だって傲慢だった」
「それは――」
「……ごめんなさい」
――リオルは、アゼルに謝った。
第三者からみれば、アゼルこそがリオルを含む多くの人々に謝罪すべきはずだと思うだろう。冷静に考えれば、当事者のリオルとアゼルもそう考えるはずだった。それにもかかわらず、リオルのほうから謝ってしまった。……それほどまでに、彼女は打ちのめされた証拠でもあり、彼女が根はやさしい女性であることを示していた。
それが分かってしまう者は少ない。tだ、その一人は、皮肉にも他国の人間なのだ。
「リオル、お前が先に謝ってどうする……。僕のほうが、その、先に謝るほうだろ……」
「兄上……」
「……お前には、今まで多くの迷惑をかけてきた。兄らしいことを何一つしたこともないのに、つらい思いをさせてきた。今更許されるとは思わない。だけど、言葉にしたい」
アゼルは、何とか起き上がろうとする。だが、寄生された副作用と体を酷使され続けたせいでうまく起き上がることができない。
「くっ……」
「兄上! ……無理をしないでくれ、こんな体なんだぞ」
「自分の体のことは分かってるさ。立ち上がれないなら、這いつくばってでも……」
「え?」
アゼルは立ち上がるのを止めて、腰を下ろしたまま両手を地につけて、リオルに向き直る姿勢になった。
「……リオル、許してくれなくていい、それでも心から詫びたい。今まで本当にすまなかった。こんなどうしようもない兄で申し訳ない……ごめんな」
「…………」
アゼルは頭を下げて謝った。おそらく貴族としては、もっとも惨めな姿勢での謝罪の仕方だったと思われる。アゼルのことを知るものからすれば、無駄にプライドが高くて傲慢な男だった彼がこんな謝罪を行うとは思えないことだっただろう。……アゼルもそこまで追い詰められたのだ。
(……こうなったか)
リオルとアゼルのやり取りを見て、ローグは一安心――とはしなかった。まだ、やることが山のようにあるように思えたのだ。
(後はアゼルの体を回復して詳しい話を聞き出す。クロズクの拠点を徹底的に調査して裏付けを取る。それで、真相を解明したら国民に伝える。最後は断罪だな)
アゼルのこの先の未来は決していいものではないだろう。クロズクに利用され続けただけだろうが、それにしてもしでかしたことが大きすぎる。良くて一生城に軟禁、最悪で死刑だ。
(せっかく生きてもらったんだ。残りの人生は短いかもしれないが、大事なことはしゃべってもらおう)
「アゼル、その体では何かと不自由だろう。今、回復してやるよ」
「魔法使いか。お前にも礼を言おう。よくぞ俺を救ってくれた」
「ローグ……ありがとう」
リオルとアゼルはそろって礼を言ってくれる。全くだ――と言う前に、二人の少女がこちらに駆け寄ってきた。
「お姉さま、お兄様、大丈夫ですか!?」
「ローグ、無事!?」
ミーラとサーラだ。この二人は非戦闘員のため、遠巻きに見ていたが今なら大丈夫だと判断して駆け寄ってきたのだ。
「サーラか……」
「二人とも、もう大丈夫だ。兄上は生きてる。ローグのおかげだ」
二人は、リオルの説明を聞いて、ローグ達が健在なのを確認して安心した。この後、ローグの魔法でアゼルが歩けるまで回復したため、この5人と兵士たちで、そろってクロズクの拠点を後にして今後の方針を決めた。
「……リオル」
寄生生物が離れて、解放されたアゼルはその場に倒れてしまった。リオルはそんな兄の傍に寄り添う。逃げた寄生生物は後回しと言った感じだ。
「やっぱりすごいよ、お前は……。僕は何一つ敵いそうにないや」
「こんな時に何を……。今は自分の心配をしてくれ」
「そんなことできないさ。分からないか?」
「…………」
倒れているアゼルを心配するリオルは、彼の言葉の意味を理解して俯く。今のリオルにも分かってしまうのだ。
「こんなことになるぐらいだったら、僕はもっと素直になるべきだった。自分のことも、母上のことも、お前たちのことも。本当にバカだったよ僕は。愚かにも傲慢になって威張り散らして他の人を傷つけるばかりで、どうしようもない奴だったな」
「兄上だけじゃない、私もある意味同罪だ。兄上を、周りを見返すと決めたのに、兄上に向き合うことをいつしかしなくなっていた。見向きもしなくなった。血のつながった家族なのに、無自覚に見下してしまっていた。私だって傲慢だった」
「それは――」
「……ごめんなさい」
――リオルは、アゼルに謝った。
第三者からみれば、アゼルこそがリオルを含む多くの人々に謝罪すべきはずだと思うだろう。冷静に考えれば、当事者のリオルとアゼルもそう考えるはずだった。それにもかかわらず、リオルのほうから謝ってしまった。……それほどまでに、彼女は打ちのめされた証拠でもあり、彼女が根はやさしい女性であることを示していた。
それが分かってしまう者は少ない。tだ、その一人は、皮肉にも他国の人間なのだ。
「リオル、お前が先に謝ってどうする……。僕のほうが、その、先に謝るほうだろ……」
「兄上……」
「……お前には、今まで多くの迷惑をかけてきた。兄らしいことを何一つしたこともないのに、つらい思いをさせてきた。今更許されるとは思わない。だけど、言葉にしたい」
アゼルは、何とか起き上がろうとする。だが、寄生された副作用と体を酷使され続けたせいでうまく起き上がることができない。
「くっ……」
「兄上! ……無理をしないでくれ、こんな体なんだぞ」
「自分の体のことは分かってるさ。立ち上がれないなら、這いつくばってでも……」
「え?」
アゼルは立ち上がるのを止めて、腰を下ろしたまま両手を地につけて、リオルに向き直る姿勢になった。
「……リオル、許してくれなくていい、それでも心から詫びたい。今まで本当にすまなかった。こんなどうしようもない兄で申し訳ない……ごめんな」
「…………」
アゼルは頭を下げて謝った。おそらく貴族としては、もっとも惨めな姿勢での謝罪の仕方だったと思われる。アゼルのことを知るものからすれば、無駄にプライドが高くて傲慢な男だった彼がこんな謝罪を行うとは思えないことだっただろう。……アゼルもそこまで追い詰められたのだ。
(……こうなったか)
リオルとアゼルのやり取りを見て、ローグは一安心――とはしなかった。まだ、やることが山のようにあるように思えたのだ。
(後はアゼルの体を回復して詳しい話を聞き出す。クロズクの拠点を徹底的に調査して裏付けを取る。それで、真相を解明したら国民に伝える。最後は断罪だな)
アゼルのこの先の未来は決していいものではないだろう。クロズクに利用され続けただけだろうが、それにしてもしでかしたことが大きすぎる。良くて一生城に軟禁、最悪で死刑だ。
(せっかく生きてもらったんだ。残りの人生は短いかもしれないが、大事なことはしゃべってもらおう)
「アゼル、その体では何かと不自由だろう。今、回復してやるよ」
「魔法使いか。お前にも礼を言おう。よくぞ俺を救ってくれた」
「ローグ……ありがとう」
リオルとアゼルはそろって礼を言ってくれる。全くだ――と言う前に、二人の少女がこちらに駆け寄ってきた。
「お姉さま、お兄様、大丈夫ですか!?」
「ローグ、無事!?」
ミーラとサーラだ。この二人は非戦闘員のため、遠巻きに見ていたが今なら大丈夫だと判断して駆け寄ってきたのだ。
「サーラか……」
「二人とも、もう大丈夫だ。兄上は生きてる。ローグのおかげだ」
二人は、リオルの説明を聞いて、ローグ達が健在なのを確認して安心した。この後、ローグの魔法でアゼルが歩けるまで回復したため、この5人と兵士たちで、そろってクロズクの拠点を後にして今後の方針を決めた。
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