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第20話 婚約の重み
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「我が娘に以前から好意を持っていたと?」
「そうですね。あのカリブラと婚約していたので言えなかったのですが、貴族令嬢の模範と言われるアスーナ嬢には以前から関心を抱いていたのです。婚約者がいる女性に婚約目的で声をかけるわけにはいきませんでしたが、今日絶好のチャンスを取ったわけです」
「ふむ……」
ノゲムスの目線ではハラドが嘘をついているようには見えない。アスーナに好意を抱いているという熱意も確かに伝わってくる。父親としては娘が正当な評価をされるのは嬉しいし、何よりもカリブラとは違って婚約の重みを理解しているようだ。
(……カリブラよりはずっとマシだな。あの男とはもう少し早く婚約解消するべきだった。ただ、今度は公爵家ともなるとかえってアスーナに負担になるやもしれんが……)
グラファイト公爵家に悪い噂は聞いたこともない。だが、公爵家とは王家に次ぐ上級貴族だ。強い立場というだけで敵を作るのが貴族社会。婚約破棄した伯爵令嬢のアスーナが公爵家に嫁ぐ身としてはギリギリ及第点というところだろう。つまり、それだけでアスーナの敵も増えるということだ。
その中には、アスーナと婚約破棄したカリブラもありえるだろう。むしろカリブラの性格上、敵対してくることは間違いないとノゲムスは確信した。
(公爵令息ハラド・グラファイト……カリブラよりも強い立場にいるが……)
「ハラド殿、もしも公爵家に嫁いでアスーナの立場が悪くなればどうされる? 言っては何だがカリブラ殿の性格上、あとから何かするやもしれませぬぞ?」
「俺はアスーナ嬢を婚約者として責任を持ちます。カリブラが今更何を言ってきても公爵家が後ろ盾になって守ることもできますのでご安心ください」
「カリブラ殿だけではない。公爵家に嫁ぐというだけでアスーナの敵は増えるでしょう。それは貴殿がよくおわかりのはず。必然的にアスーナにも負担がかかるでしょう。そこはどうお考えで?」
アスーナに負担がかかるだろうとまで言われるとハラドは笑顔を止めて真剣な顔つきに変わった。ハラドもその言葉の意味がよく分かるのだ。自身もそういう経験をしてきたゆえに。
「確かにアスーナ嬢に精神面で負担をかけるでしょう。他の貴族からも圧力をかけられる。おこぼれを狙った忖度や嫉妬からくる嫌がらせとかがそうだろう……それがどれだけ精神的に嫌なものであるかも考えもしないで……」
「ハラド様……」
「俺はその苦痛を身をもって経験しています。だからこそ、アスーナ嬢がそうなった時は俺がどんな時があっても味方になります!」
「!」
「苦しんでいるときも慰め、寄り添って力になります! 愛犬ポッピーが俺にそうしてくれたように!」
「「「「…………ええっっ!!?? 愛犬!?」」」」
ハラドの口から思いもよらぬ言葉が聞こえた。こんなシリアスな話の中で『愛犬』というのだ。伯爵家当主ノゲムスも嫡男リボールも執事のチャーリーも肝心のアスーナも予想できなかった。
「そうですね。あのカリブラと婚約していたので言えなかったのですが、貴族令嬢の模範と言われるアスーナ嬢には以前から関心を抱いていたのです。婚約者がいる女性に婚約目的で声をかけるわけにはいきませんでしたが、今日絶好のチャンスを取ったわけです」
「ふむ……」
ノゲムスの目線ではハラドが嘘をついているようには見えない。アスーナに好意を抱いているという熱意も確かに伝わってくる。父親としては娘が正当な評価をされるのは嬉しいし、何よりもカリブラとは違って婚約の重みを理解しているようだ。
(……カリブラよりはずっとマシだな。あの男とはもう少し早く婚約解消するべきだった。ただ、今度は公爵家ともなるとかえってアスーナに負担になるやもしれんが……)
グラファイト公爵家に悪い噂は聞いたこともない。だが、公爵家とは王家に次ぐ上級貴族だ。強い立場というだけで敵を作るのが貴族社会。婚約破棄した伯爵令嬢のアスーナが公爵家に嫁ぐ身としてはギリギリ及第点というところだろう。つまり、それだけでアスーナの敵も増えるということだ。
その中には、アスーナと婚約破棄したカリブラもありえるだろう。むしろカリブラの性格上、敵対してくることは間違いないとノゲムスは確信した。
(公爵令息ハラド・グラファイト……カリブラよりも強い立場にいるが……)
「ハラド殿、もしも公爵家に嫁いでアスーナの立場が悪くなればどうされる? 言っては何だがカリブラ殿の性格上、あとから何かするやもしれませぬぞ?」
「俺はアスーナ嬢を婚約者として責任を持ちます。カリブラが今更何を言ってきても公爵家が後ろ盾になって守ることもできますのでご安心ください」
「カリブラ殿だけではない。公爵家に嫁ぐというだけでアスーナの敵は増えるでしょう。それは貴殿がよくおわかりのはず。必然的にアスーナにも負担がかかるでしょう。そこはどうお考えで?」
アスーナに負担がかかるだろうとまで言われるとハラドは笑顔を止めて真剣な顔つきに変わった。ハラドもその言葉の意味がよく分かるのだ。自身もそういう経験をしてきたゆえに。
「確かにアスーナ嬢に精神面で負担をかけるでしょう。他の貴族からも圧力をかけられる。おこぼれを狙った忖度や嫉妬からくる嫌がらせとかがそうだろう……それがどれだけ精神的に嫌なものであるかも考えもしないで……」
「ハラド様……」
「俺はその苦痛を身をもって経験しています。だからこそ、アスーナ嬢がそうなった時は俺がどんな時があっても味方になります!」
「!」
「苦しんでいるときも慰め、寄り添って力になります! 愛犬ポッピーが俺にそうしてくれたように!」
「「「「…………ええっっ!!?? 愛犬!?」」」」
ハラドの口から思いもよらぬ言葉が聞こえた。こんなシリアスな話の中で『愛犬』というのだ。伯爵家当主ノゲムスも嫡男リボールも執事のチャーリーも肝心のアスーナも予想できなかった。
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