【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

最終章 聖戦編

第135話 魔女の花1・禁断の果実

　仲間の協力のおかげでデュラハンとドラゴンを倒し、残るは大司教ビーチと寄生樹本体だけになった。

「みんな、ありがとう。後は俺が直接寄生樹を倒す。みんなは身の安全の確保と周辺の巨獣を蹴散らしてくれ」

　モニター越しに全員の了承りょうしょうの声を聞いて俺は前を向いた。眼前に見えてきた寄生樹。枯かれ木の大木だが、幹や枝には渦うず模様が描かれていて狂人が描いた絵画のようにも見える。見ようによっては邪神樹より不気味だ。

　大司教ビーチは生きているのだろうか。寄生樹が急成長する時に呑のみ込まれたはずだがそのまま死ぬとは思えない。ここまでの敵の戦い方を見ると生きているとは思うが。

　その疑問に応こたえるように寄生樹の幹にバラの花のようなものが咲き、中から女神をかたどったような美しい女体の上半身が生えてきた。

「ヒッヒッヒ。よく逃げずに来たねぇ」

　声が若返っているが、間違いなく大司教ビーチだ。寄生樹と融合ゆうごうしたらしい。見た目だけは美しいが、邪悪な存在になんの魅力も感じない。俺から見ればただの魔女の花だ。

「家に生えた雑草を抜かずに放置するほどガサツじゃないんでね」

　適当な鎧兵をスピーカーにして応えてやった。

「竜も首なし騎士も倒すとはねぇ。少々見縊みくびっていたよぉ」

「セフィラも集められなかった雑魚に俺の鎧兵が負けるかよ」

「それならこれはどうだい？」

　バラの花から赤い球体が出現。一部が裂けて口のようになった。口内には無数の牙。

「禁断の果実を召し上がれ」

　ビーチが甘くも不快な声を発しながら手を振ると、赤い球体から虫のような足が生えて鎧兵へと迫る。

「マズそうだな。料理の練習した方がいいぞ」

「食べる専門でねぇ」

　俺は鎧コウモリに乗せた火鎧兵を突撃させた。両者が接触すると、どちらも大爆発を起こした。

「爆弾対爆弾か。いいね、最終決戦はこうでなくちゃ」

「若さ故ゆえの昂たかぶり。嫌いじゃないがいつまで持つかねぇ」

「うるせぇ。こいつでも喰らいな」

　大盤振る舞いで百体の雷鎧兵をまとめて雷撃に変えて放った。それを連発。

　雷の速さについていけず敵の右腕が飛ぶ。

「やるねぇ、でもまだまだ刺激が足りないよぉ？」

　すぐに再生し、手を艶なまめかしく動かして挑発してくる。

　さらに地面から寄生樹の木の根攻撃。鎧兵を突き上げ、その延長線上にいる飛行中の鎧コウモリも貫つらぬかれた。

「チッ、邪魔くせぇ。除草剤でもくらいな」

　俺は毒鎧兵を地面にばら撒まいた。それにより、敵の根を汚染して枯死こしさせる。

「毒も効くのか。どうやらお前は無敵の神では無さそうだな」

「口だけは達者だねぇ」

　俺は無視して鎧コウモリの群れを突撃させる。

「羽虫はむしではやれないよぉ？」

　敵は右手に巨大な葉っぱの扇おうぎを出現させて一振り。突風によりコウモリ達は吹き飛ばされた。

　チッ、こうも簡単に防がれるとムカつくな。

「ヒッヒッヒ、そろそろ出ておいでぇ、臆病者おくびょうものの本体よぉ」

　さすがに俺本体の位置も絞しぼられてきたな。

　だが、俺には優秀な参謀さんぼうがいるから大丈夫だ。

　モニターにその人物を映し出した。

「ムギッコ、出番だ。頼むぞ」

「うん！　任せて、トンカツの中身さん！」

　誰が豚肉だよ。

　現れたのは近所に住む少女ムギッコだ。彼女の能力を使えば必ず勝てる。