私立探偵と男達の愛

いちみりヒビキ

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(03) 宗近 2 アイドルの素質

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宗近はデスクに手をつき、ツナギの男は後方から体を密着させた。
宗近のアナルに男のペニスは根本まで喰い込む。

男が腰を突き上げる度に、接合部からはパンパンと音が鳴り、デスクの足からはギシギシと音が鳴った。

「うっ、うううっ……」

宗近は、喘ぎ声が出ないように必死に口を塞ぐ。
しかし、どうしても漏れ出すのを抑えきれない。

(お、おかしい、なんでコイツのペニスはこんなにも気持ちが良いんだ……)

宗近が経験してきた男達のペニスとはまるで違う。
大きさ、太さ、固さ。
そこに特別な特徴があるわけじゃない。

(し、しかし…………やばい……このままでは。こっちが先にいっちまうっ……く、くそっ、こんなはずでは……)

既に、宗近の下腹部に溜まった性欲は大きな塊となっていた。

宗近は、実は今まで男にイカされたことはない。
度重なる社長との秘め事で、アナル開発はしっかりとされていた。

だから、メスイキは体が覚えてしまっている。
しかし、最後の一線を超え、絶頂を迎えるのは自分の意志。

自分がいきたい時にいく。決して、男にいかされる事などあってはならない。
それが男のプライド。

だから、セックスではこんな奴には負けるはずがない。
そう思っていた。

しかし、実際にこのツナギ男のペニスを体内に迎え入れてみると、それが甘い考えだった事に気付いた。
自分の体なのにまったくコントロール出来ない。
体が勝手に快楽を求め始めてしまう。



男が腰を突き上げながら言った。

「きっつっ。中々、いいアナルじゃねぇか。お前の名前、宗近っていったよな? 宗近のケツの穴、俺は結構好きだぜ」

ツナギの男の言葉を聞いて、「こいつ、何、上から言っているんだ!」と、腹が立った。
だが、一方で内心、少しほっとしてもいた。

自分だけじゃない。
この男も気持ちいいんだ。
だから、一方的に負けた訳ではないのだ。

「そ、そうかよ……なら、ほら、早く気持ちよくなって、いっていいぜ? うっ、うっ……」

宗近は、快感に耐えながら必死に答えた。

先にこの男がいってしまえば、それでいい。
あとは、勝利の悦びと共に思う存分メスイキの絶頂を味わおうではないか。
宗近はそんな風に考えた。

「そうだな、いきたくなるほど、気持ちいいぜっ……うう、締まる……」

(ほら、早くいけ! そしてすべて吐き出せ!)

宗近はアナルに力を入れ精子を絞り出すようにペニスを締め付けた。
ツナギの男はすぐに反応した。

「くーっ、たまらん。よし、もっと奥に突っ込むぞ!」

ツナギの男はそう言うと、ドンっと奥までペニスを喰い込ませて来た。

「あっ……ううううっ……」

ペニスが体の芯に突き刺さる。
宗近は、快感で意識が飛びそうになった。

「あっ……あああ……あわあわ……」

ぶるぶると体が震える。
いく前兆。

(だ、ダメだ……いってはダメだ。でも、いくっ……このままじゃ、いかされてしまう。くそ! こんな奴に、こんな奴なんかに……ああ、でも感じる……)

はぁ、はぁ、と息を荒げ、焦点が定まらない視線を何とか合わせようとした。
でも、白目になり目の前が見えなくなる。

(あいつだって気持ちいいはず……なんとしてでも……)

全身全霊で堪える。
と、その時、男に声が耳に入った。
それはとても穏やかで優しい声色だった。


「なぁ、宗近。張り合うなって……お前がいかないと俺もいけないじゃないか? 互いに喜ばせ合うのが気持ちがいいセックスだろ?」

(なんだって!?……)

宗近は、雷に打たれたような衝撃を感じた。
今まで宗近の体を貪ってきた相手は体目的の男達。

勝手に気持ち良くなり勝手に果てた。
宗近にこんな言葉を投げ掛けてくる者はいなかった。

(な……力が……緩む……)

既に肉体は、男の物を受けいれ、男の物によって気持ちよくなろうとしていた。
それを気力でなんとか抑えつけていたのだが、その緊張の糸がプツリと切れた。


ツナギの男は、その宗近の体の変化を敏感に感じ取る。
宗近の耳元に口をよせて言った。

「そうだ。いい子だ。一緒にいこう。な、宗近……」

男は、宗近の顔を無理矢理横向きにさせると、唇を奪った。
そのまま、ちゅぱ、ちゅぱと、舌を絡めながら、ペニスを更にズズズと奥へ奥へと突っ込んでいく。

(うっ……だ、ダメ……それ以上は)

一段と大きく固くなったペニスは、宗近の一番敏感な所に直撃した。

(くぅーっ……)

快感で体がしなる。

ツナギの男は、宗近の腰をぎゅっと掴むと、激しい突き上げを始めた。

ずっちゅ、ずっちゅ……。

「はぁ、はぁ……最高だ、宗近。確かに、お前のアナルは最高に気持ちがいい!」

ひと際大きな腰の振り。

パーン!

大きな突き上げの音。
そして、間もなく男の断末魔。

「いくーっ!」

宗近も時を同じくして絶頂に達した。

(だ、ダメ……いくっ……)

意識が飛んでいく。
体がガクガクと痙攣し下腹部に堪った熱い塊が弾けた。
それと、同時にペニスの先からは白くて濃い液が飛び出す。

メスイキをしながら射精。
男をいかせ、そして、男にいかされる。

(くそっ、こんなセックス……最高かよ……)

宗近は、頭の中が真っ白になっていく中で男の熱いザーメンが体の中にドクッドクッと流れ込んでくるのを心地よく感じていた。


****


ソファにもたれかかる二人。
いつしか、手をギュッと握り合っていた。

息を整えた宗近は、ツナギの男に話かけた。

「なぁ、お前。どうして、オレなんかとしたんだ?」
「ん? そうだな。宗近は、捨て猫みたいだったからな」

「な、何だよそれ!」
「オレは捨て猫は放っておけないたちでよ」

さらっと酷い事を言う。
宗近は、捨て猫よばわりされた事に、カッとなった。

「何だよ! 同情でオレを抱いたってのか!」
「そうだが? ほら、お前自殺するんだろ? 最後ぐらい気持ちいい思いさせてやりたくてな……本物の男同士のセックスってやつをな」

男はにこっと微笑んだ。
優しさを湛えた瞳。
それ見た宗近は、もっと言い返してやろうとして止めた。

「同情で抱いたか……」

歯に物着せぬいいように腹立たしさよりむしろさっぱりした男らしさを感じた。
正直な気持ちが伝わってくる。
宗近は手を自分の心臓辺りに置き、ギュッと抑えた。

(あったかいぜ、畜生……)

とはいえ、宗近とてこのまま負けたつもりはない。

「ふっ、偉そうに! どうだ? オレはお前を喜ばせてやれただろ? アイドルの素質が無いなんて言ったのを取り消せよ」

男は笑いながら言った。

「ふふふ。そうだな。確かにお前は人を喜ばせる素質がある。悪かったな、この通りだ」

男は素直に頭を下げた。

「分かればいいんだよ! 全く!」

宗近は、乱暴な言葉とは裏腹に今までにない程の素直な微笑みで見守った。


****


二人は衣服を整え、出会った時と同じ格好に戻った。
ツナギの男は言った。

「さて、俺はいくよ。宗近、後はお前次第だ。俺はお前がどんな選択をしたとしてもいいと思っているよ」
「そうか……ありがとう」

「じゃあ」

ツナギの男は手を上げた。
宗近は、男の背中に声を掛けた。

「なぁ、お前の名前、まだ聞いてなかったな。教えろよ」
「拓海だ。高坂 拓海たかさか たくみ

「……拓海か……。また、会えるか?」
「そうだな……お前が望めば、またいつかどこかで」

ツナギの男、いや拓海はニコっと笑うとそのまま消えるように立ち去った。
宗近は、一人呟いた。

「拓海……拓海か。ふふふ、あんな奴もいるんだな」

宗近は、拓海を見送ると、すっかり清々しい気持ちになっていた。
ふと、天井を見上げて、頭を掻いた。

「さてとこのロープをどうやって取り外すかな……」
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