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第0部「RINNE -友だち削除-」&第0.5部「RINNE 2 "TENSEI" -いじめロールプレイ-」
第11話 出席番号男子7番・篠原蓮生 ①
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中北知道が死んだ。
「彼もどうやら、首謀者ではなかったようですね」
先生がそう言うと、ぼくたちの携帯電話がまた一斉に鳴った。またクラッシックの曲のオルゴールだった。ベートーベンの第九だと思う。
これまでにいじめの首謀者から送られてきた指令のメールはこうだ。
18:00 指令1「内藤美嘉に変なあだ名をつけろ」失敗。大和死亡
19:00 指令2「内藤美嘉に変なあだ名をつけろ」成功。
20:00 指令3「内藤美嘉が処女がどうか確認しろ」失敗。中北死亡
最初の指令に従わず、大和を死なせてしまったぼくたちには、二度目の指令で同じ指令が下された。
三度目の指令に中北は従おうとしたが、指令を果たすことができず、彼は内藤美嘉に殺された。たった三度の指令で、ふたりも死なせてしまった。
じゃあ、今届いた四度目の指令は、二度目のときと同じように、三度目と同じ指令だろうか。
恐る恐る携帯電話の画面を覗くと、
──内藤美嘉さん、初めての公開処刑、お見事でした。お疲れ様でした☆
いじめの首謀者は内藤にねぎらいの言葉をかけていた。それにしても最後の☆が気になった。
そして、今回の指令はこんなものだった。
──ゲームが始まって四時間が経ちました。皆さんもだーいぶお疲れだと思います☆ そぉこぉでぇ、今から一時間だけ、棗先生の日本史の授業を受けてもらいたいと思いまぁす。授業を聞くのも聞かないのも自由でぇす。仮眠をとってもかまいませーん。教室から出ることはできませんが、ゆっくり休んでくださいね☆
──それから、このゲームのルールについて、棗先生の説明がちょぉっとぉ不十分だったので、いじめの首謀者のわたしからこの場を借りて説明しちゃいます☆
──今から1時間、お休憩タイムなのは、内藤美嘉さんが中北知道くんを処刑したからです☆ このゲームでは、指令が実行されず、いじめられる者によって生け贄が処刑された場合、1時間お休憩を挟みます☆
一度目の指令では先生が大和省吾を殺した。だから休憩にはならなかったということだろう。
説明してくれるのはありがたいが、それにしても、
「なぁ、祐葵、ぼく、こいつの語尾とか口調とかなんかいちいち鼻につくんだけど」
「気にするな。俺もだ」
ぼくたちはメールを読みながら、そう言い、
「服部さんっぽいよね」
鮎香が言った。
「服部?」
「服部さんってさ、さっき内藤さんにあだ名をつけたときいつもと様子が違ってたけど、でもいつもこんな喋り方のぶりっ子じゃない?」
言われてみれば確かにそうだった。
服部絵美。八十三町でも有数の、内藤の家と並ぶ地主の家の生まれで、生粋のお嬢様だった。美術の才能があり、特にすごく綺麗な油絵を描く。芸大に進学を希望していると聞いたことがあった。
普段の口調とメールの文面が似ている、それだけでいじめの首謀者だと断定はできないけれど、候補のひとりとして頭の片隅に置いておくくらいのことはした方が良さそうだ。
──そぉれぇかぁらぁ、生け贄がひとり処刑される度に、ゲーム時間が六時間ずつ短縮されます。大和省吾くんと中北知道くんのふたりが処刑されたので、十二時間ゲームが短縮されましたぁ☆ なぜ処刑によってゲームの時間が短縮されるかというと、短縮しないとその時点で、いじめられる者がクラス全員を射殺できるようになってしまうからでぇす。
「どういう意味だ、これ?」
祐葵がぼくに尋ねた。
ぼくは少し考えて、先生が言っていたことを思い出した。
ゲームは七日間、つまり一六八時間行われる。
内藤美嘉がいじめの首謀者だと思う者を射殺できるのは六時間に一度、一六八時間だと二八回。
1年2組はクラス全員で三十人だから、内藤を除くと残りは二九人。
内藤が一六八時間でいじめの首謀者だと思う者を二八回射殺する機会があるということは、いじめの首謀者は逆に二八回別の者を首謀者だと内藤に思わせれば、ひとりだけ生き残ることができる。
しかし、いじめの首謀者からの指令メールの内容が実行できなかった場合、ぼくたちは誰かひとりを内藤に生け贄に捧げなければならない。
わかりやすく考えると、最初の指令をぼくたちは実行できず、先生によって大和が処刑されてしまった。それによってクラスは内藤美嘉を除くと二八人になってしまった。ゲーム時間がそのままだと、内藤は二八回首謀者と思われる者を射殺することができるから、いじめの首謀者を含めたぼくたち全員を射殺できることになってしまう。
だからゲームが六時間短縮されるのだ。
六時間短縮されることで、内藤が射殺できる人数がひとり減る。そうすることで、元通りいじめの首謀者がひとり生き残ることができるようになる。
中北の処刑が行われ、クラスは内藤を除くと二七人になった。ゲーム時間はさらに六時間減り、内藤は二六回しか射殺できなくなった、ということだろう。
「よく出来たゲームだな、これは」
ぼくが考えをまとめながら説明すると、祐葵が感心したように言った。
本当によく出来ているとぼくも思う。
中北を簡単に生け贄に差し出したり、中学時代に伊藤香織の恋人を自殺に追いやったりした野中や平井、あるいは、あっさりと内藤を裏切った、同じグループのメンバーで、山汐凛をいじめ、売春を強要した佳苗貴子や藤木双葉、八木琴弓あたりはどうかはわからないけれど、いじめなんか誰もしたくないはずだ。しかもただのいじめじゃない。これはゲームで、おまけに命がかかっている。
だからと言って、指令を実行しなければ、クラスメイトの誰かを生け贄に捧げなければならない。しかし、誰かを生け贄に捧げれば、次の一時間はいじめの指令は来ず、休憩時間が与えられる。おまけにゲーム時間が6時間短縮される。ゲームを早く終わらせたければ、次々と指令を無視して、クラスメイトを生け贄に捧げていけばいい。四人捧げれば一日ゲームは短くなる。二四人捧げればゲームは一日で終わる。いや、一日では終わらないか。一日に指令は二十回しか来ないし、生け贄に捧げたあとは一時間休憩になるのだ。最低でも1日半? 丸二日はかかることになるのか? ぼくは数学があまり得意じゃないからわからないが、しかし生け贄を捧げればゲーム時間が短縮されるのは間違いない。
けれど、そんなことはできるわけがなかった。ぼくにとってこのクラスで特に親しい友人は祐葵と鮎香くらいだ。けれどそれなりに親しい者もたくさんいるし、親しくない者もクラスメイトであることには変わらない。クラスメイトが死ぬのを黙って見てるわけにはいかない。逆に自分や祐葵や鮎香が生け贄に捧げられるのだけはなんとしても避けたい。死んだ中北みたいに嫌いな奴もいて、彼の死になにも動じなかったぼくがここにはいるけれど、それでも嫌いだからと言って、生け贄に捧げていい道理はない。
でも、とぼくは考える。
遅かれ早かれ結局死ぬのは二八人じゃないのか?
指令を必ず実行し、七日間ゲームを続けたら、内藤は二八人を射殺できる。
指令をすべて無視し、ゲームを二日か三日に短縮したところで、結局は内藤に二八人殺される。
いや、それはあくまで、最後に生き残るのがいじめの首謀者だったらの話だ。
内藤か、あるいはぼくたちが、いじめの首謀者を少しでも早く見つけることができたなら、ゲームは最小限の犠牲で終えることができるはずだ。
──このあとのスケジュールを簡単に説明するとぉ、22:00と23:00に指令メールがみなさんの携帯電話に届きまぁす☆ 24:00はお待ちかねの復讐タイムでぇす☆ 復讐タイムはその名の通り、いじめられる者がいじめの首謀者だと思う者を拳銃でばぁんと撃ち殺すことができる時間です。この時間は、指令メールは届きません。復讐タイムは六時間に一度、一日に四回だけあります。だぁかぁらぁ、いじめの指令は一日に20回、復讐タイムは一日に四回あることになりまぁす☆ 拳銃はリボルバー式のものなので、弾は六発しか入っていませーん。内藤さんは弾がなくなったら棗先生にもらってくださいね☆
「彼もどうやら、首謀者ではなかったようですね」
先生がそう言うと、ぼくたちの携帯電話がまた一斉に鳴った。またクラッシックの曲のオルゴールだった。ベートーベンの第九だと思う。
これまでにいじめの首謀者から送られてきた指令のメールはこうだ。
18:00 指令1「内藤美嘉に変なあだ名をつけろ」失敗。大和死亡
19:00 指令2「内藤美嘉に変なあだ名をつけろ」成功。
20:00 指令3「内藤美嘉が処女がどうか確認しろ」失敗。中北死亡
最初の指令に従わず、大和を死なせてしまったぼくたちには、二度目の指令で同じ指令が下された。
三度目の指令に中北は従おうとしたが、指令を果たすことができず、彼は内藤美嘉に殺された。たった三度の指令で、ふたりも死なせてしまった。
じゃあ、今届いた四度目の指令は、二度目のときと同じように、三度目と同じ指令だろうか。
恐る恐る携帯電話の画面を覗くと、
──内藤美嘉さん、初めての公開処刑、お見事でした。お疲れ様でした☆
いじめの首謀者は内藤にねぎらいの言葉をかけていた。それにしても最後の☆が気になった。
そして、今回の指令はこんなものだった。
──ゲームが始まって四時間が経ちました。皆さんもだーいぶお疲れだと思います☆ そぉこぉでぇ、今から一時間だけ、棗先生の日本史の授業を受けてもらいたいと思いまぁす。授業を聞くのも聞かないのも自由でぇす。仮眠をとってもかまいませーん。教室から出ることはできませんが、ゆっくり休んでくださいね☆
──それから、このゲームのルールについて、棗先生の説明がちょぉっとぉ不十分だったので、いじめの首謀者のわたしからこの場を借りて説明しちゃいます☆
──今から1時間、お休憩タイムなのは、内藤美嘉さんが中北知道くんを処刑したからです☆ このゲームでは、指令が実行されず、いじめられる者によって生け贄が処刑された場合、1時間お休憩を挟みます☆
一度目の指令では先生が大和省吾を殺した。だから休憩にはならなかったということだろう。
説明してくれるのはありがたいが、それにしても、
「なぁ、祐葵、ぼく、こいつの語尾とか口調とかなんかいちいち鼻につくんだけど」
「気にするな。俺もだ」
ぼくたちはメールを読みながら、そう言い、
「服部さんっぽいよね」
鮎香が言った。
「服部?」
「服部さんってさ、さっき内藤さんにあだ名をつけたときいつもと様子が違ってたけど、でもいつもこんな喋り方のぶりっ子じゃない?」
言われてみれば確かにそうだった。
服部絵美。八十三町でも有数の、内藤の家と並ぶ地主の家の生まれで、生粋のお嬢様だった。美術の才能があり、特にすごく綺麗な油絵を描く。芸大に進学を希望していると聞いたことがあった。
普段の口調とメールの文面が似ている、それだけでいじめの首謀者だと断定はできないけれど、候補のひとりとして頭の片隅に置いておくくらいのことはした方が良さそうだ。
──そぉれぇかぁらぁ、生け贄がひとり処刑される度に、ゲーム時間が六時間ずつ短縮されます。大和省吾くんと中北知道くんのふたりが処刑されたので、十二時間ゲームが短縮されましたぁ☆ なぜ処刑によってゲームの時間が短縮されるかというと、短縮しないとその時点で、いじめられる者がクラス全員を射殺できるようになってしまうからでぇす。
「どういう意味だ、これ?」
祐葵がぼくに尋ねた。
ぼくは少し考えて、先生が言っていたことを思い出した。
ゲームは七日間、つまり一六八時間行われる。
内藤美嘉がいじめの首謀者だと思う者を射殺できるのは六時間に一度、一六八時間だと二八回。
1年2組はクラス全員で三十人だから、内藤を除くと残りは二九人。
内藤が一六八時間でいじめの首謀者だと思う者を二八回射殺する機会があるということは、いじめの首謀者は逆に二八回別の者を首謀者だと内藤に思わせれば、ひとりだけ生き残ることができる。
しかし、いじめの首謀者からの指令メールの内容が実行できなかった場合、ぼくたちは誰かひとりを内藤に生け贄に捧げなければならない。
わかりやすく考えると、最初の指令をぼくたちは実行できず、先生によって大和が処刑されてしまった。それによってクラスは内藤美嘉を除くと二八人になってしまった。ゲーム時間がそのままだと、内藤は二八回首謀者と思われる者を射殺することができるから、いじめの首謀者を含めたぼくたち全員を射殺できることになってしまう。
だからゲームが六時間短縮されるのだ。
六時間短縮されることで、内藤が射殺できる人数がひとり減る。そうすることで、元通りいじめの首謀者がひとり生き残ることができるようになる。
中北の処刑が行われ、クラスは内藤を除くと二七人になった。ゲーム時間はさらに六時間減り、内藤は二六回しか射殺できなくなった、ということだろう。
「よく出来たゲームだな、これは」
ぼくが考えをまとめながら説明すると、祐葵が感心したように言った。
本当によく出来ているとぼくも思う。
中北を簡単に生け贄に差し出したり、中学時代に伊藤香織の恋人を自殺に追いやったりした野中や平井、あるいは、あっさりと内藤を裏切った、同じグループのメンバーで、山汐凛をいじめ、売春を強要した佳苗貴子や藤木双葉、八木琴弓あたりはどうかはわからないけれど、いじめなんか誰もしたくないはずだ。しかもただのいじめじゃない。これはゲームで、おまけに命がかかっている。
だからと言って、指令を実行しなければ、クラスメイトの誰かを生け贄に捧げなければならない。しかし、誰かを生け贄に捧げれば、次の一時間はいじめの指令は来ず、休憩時間が与えられる。おまけにゲーム時間が6時間短縮される。ゲームを早く終わらせたければ、次々と指令を無視して、クラスメイトを生け贄に捧げていけばいい。四人捧げれば一日ゲームは短くなる。二四人捧げればゲームは一日で終わる。いや、一日では終わらないか。一日に指令は二十回しか来ないし、生け贄に捧げたあとは一時間休憩になるのだ。最低でも1日半? 丸二日はかかることになるのか? ぼくは数学があまり得意じゃないからわからないが、しかし生け贄を捧げればゲーム時間が短縮されるのは間違いない。
けれど、そんなことはできるわけがなかった。ぼくにとってこのクラスで特に親しい友人は祐葵と鮎香くらいだ。けれどそれなりに親しい者もたくさんいるし、親しくない者もクラスメイトであることには変わらない。クラスメイトが死ぬのを黙って見てるわけにはいかない。逆に自分や祐葵や鮎香が生け贄に捧げられるのだけはなんとしても避けたい。死んだ中北みたいに嫌いな奴もいて、彼の死になにも動じなかったぼくがここにはいるけれど、それでも嫌いだからと言って、生け贄に捧げていい道理はない。
でも、とぼくは考える。
遅かれ早かれ結局死ぬのは二八人じゃないのか?
指令を必ず実行し、七日間ゲームを続けたら、内藤は二八人を射殺できる。
指令をすべて無視し、ゲームを二日か三日に短縮したところで、結局は内藤に二八人殺される。
いや、それはあくまで、最後に生き残るのがいじめの首謀者だったらの話だ。
内藤か、あるいはぼくたちが、いじめの首謀者を少しでも早く見つけることができたなら、ゲームは最小限の犠牲で終えることができるはずだ。
──このあとのスケジュールを簡単に説明するとぉ、22:00と23:00に指令メールがみなさんの携帯電話に届きまぁす☆ 24:00はお待ちかねの復讐タイムでぇす☆ 復讐タイムはその名の通り、いじめられる者がいじめの首謀者だと思う者を拳銃でばぁんと撃ち殺すことができる時間です。この時間は、指令メールは届きません。復讐タイムは六時間に一度、一日に四回だけあります。だぁかぁらぁ、いじめの指令は一日に20回、復讐タイムは一日に四回あることになりまぁす☆ 拳銃はリボルバー式のものなので、弾は六発しか入っていませーん。内藤さんは弾がなくなったら棗先生にもらってくださいね☆
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