「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

文字の大きさ
161 / 271
【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」

第161話 守れなかった約束

しおりを挟む
「取り込み中のとこ悪いが、ジパングからふたりの女王様がおみえだ」

 前の世界から召喚されてきたアンフィス・バエナ・イポトリルが申し訳なさそうに告げに来た。


「久しぶりだね、アンフィス」

 レンジは言い、再会を喜んだ。

 そして、

「この世界のジパングの女王も、返璧マヨリ(たまがえし まより)と白璧リサ(しらたま りさ)で合ってる?」

 と尋ねた。

「あぁ、前の世界の記憶もちゃんと持ってる。
 タカミやミカナたちのことを思い出すのは、ふたりにとっては良いことなのか悪いことなのかわからないけどな」

 レンジは、そうか、としか言えなかった。

 マヨリやリサにとって、タカミやミカナ、そしてメイは大切な存在だった。
 思い出してしまえば会いたくなってしまう。
 彼らにとってもふたりの女王は大切な存在だったが、元いた世界に同じ名前、同じ顔をした存在がいた。
 彼らはそのふたりの元に帰り、そして二度とこの世界に来ることはない。
 永遠の別れを一度経験したのに、思い出すことで二度も経験したのだ。

 つらい、という言葉では言い表せないほどつらい思いの中にいるだろう。

 レンジとステラはふたりの女王の元に向かうことにした。
 ピノアとアリス、そしてアンフィスはその場に残った。


「悪いが、席を外してくれないか?」

 アンフィスはアリスに言った。

「ピノアとふたりきりにしてくれ」

 アリスは、わかったわ、と言うと、レンジたちを追いかけて行った。


 アンフィスは、ピノアの隣に座り、

「2000年前に、この世界に産まれた俺といっしょに、魔導大戦を止めてくれたんだってな。
 こっちの俺はどんな奴だった?」

 と、ピノアに尋ねた。
 だが、彼女は彼の問いには答えなかった。
 アンフィスと目を合わせようともしなかった。

「オロバスに、この世界の俺を呼んでもらうこともできたはずだよな。
 でも、前の世界の俺にしたってことは、俺の方がいい男だったって解釈でいいか?」

 アンフィスは、ピノアの手を握った。

 そして、

「約束、守れなくて悪かった」

 と言った。

 ピノアはその手を握り返した。


 ピノアは、前の世界でレンジやステラを送り出した後、アンフィスから求婚された。
 だが、彼女はレンジのことが好きだった。
 レンジのことが忘れられず、彼の気持ちに答えられなかった。

 レンジのことを忘れられたら、彼の気持ちに答えようと思っていた。
 そんな彼女に、俺が忘れさせてやる、と彼は約束した。

 その直後に大厄災は起きてしまった。


「アンフィスのせいじゃないよ。
 わたしたちは大厄災が起きるのを止めたはずだったから。
 あの日、レンジのお父さんが大厄災が起こすなんて、誰も思ってなかったんだから」

「そうかもしれない。
 だが、約束を守れなかったのは事実だ。
 そして俺はピノアに、大厄災後の世界をひとりで生きる地獄を見せた。
 ピノアがどれだけつらかったか、俺は8回も大厄災後の世界を経験したからわかる。
 だから、ごめんな」

「アンフィスは優しいね……」

「ピノアにだけだけどな」

「この世界のアンフィスも、いい男だったよ。
 わたしのことを好きになってもくれた。
 でも、同じアンフィスでも、彼は大厄災を起こす力を持ってはいなかったし、大厄災後の世界を経験したりもしてなかった。
 性格もちょっと真面目すぎ。わたしがちょっとおふざけするとすぐ怒るし、つまんなかった。
 だから、今わたしの隣にいるアンフィスの方がいい男かな……」

 最高の褒め言葉だ、とアンフィスは思った。

「レンジにはもう、帰る世界がないんだってな。だから、『我々』とかいう奴らを倒した後も、この世界で生きていくことになるんだろ。
 そして、ピノアは精霊になっちまった。ピノアもこの世界で生きていくしかないんだってな」

 アンフィスは一時的にこの世界に助っ人として呼ばれたに過ぎない。
 元の世界に帰らなければならない。

「この世界でやるべきことをしたら、俺は元の世界でピノアとの約束をちゃんと守るつもりだ。
 誰が大厄災を起こすのかは、もうわかっているからな。あとはどこで起こすのかさえわかれば、俺は大厄災を止めることができる」

 そして、彼のそばには過去のピノアがいる。

「この世界に俺を呼んだのは、そういうことだろ?」

 アンフィスは笑い、ピノアは小さくうなづいた。

「ちゃんと、過去のわたしに、レンジのことを忘れさせてあげて。
 あなたの気持ちに答えたいけれど、答えられないのが、つらいと思ってるから」

 ピノアは言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...