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第13話「日常は爆発するのだ♡」中
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「レイタさんは、夜空に浮かぶ星々が、今まさに星から放たれている光ではないことはご存知ですか?」
「何万光年も離れてる星は、光の早さでそれだけ離れてるってことだから、その光がこの星に届くのには同じだけの時間がかかるってことだろ? だから、俺たちが見てる星は何万年も昔の光だっていう。確か太陽の光も6分だか7分か前の光だったよな?」
その何万年もの間にその星がなくなってしまっていたりするかもしれないが、それに気づけるのは何万年後の人々だけだという話をレイタは聞いたことがあった。もっとも、NASAのハッブル宇宙望遠鏡あたりを使えば、今はもうすぐにわかるようになっているのかもしれなかったが。
「そうです。ですが、それはあくまで光だけの話。いくら遠く離れていても、ふたつの星は同じ宇宙に存在し、同じ時間の流れの中にあります。どちらの星にもわたしたちがいて同じ会話をしていると思ってください。今のこの会話は、遠く離れたふたつの星でまったく同じ時間に起きている。それはわかりますか?」
レイタは黙って頷いた。
わざわざそんな説明をするということは、未来星はそうじゃないのだろう。彼にはなんとなくわかってしまった。
「ですが、未来星にはそういう時間の流れについての常識が通用しません。夜空に浮かぶ星々は、その多くが太陽のような恒星です。未来星やわたしたちのスク水星も、そのうちのひとつのまわりを、この星が太陽のまわりを回るように回り続けている惑星に過ぎません。仮にですが、この星と未来星が1万光年離れているとしましょう。そのどちらの星にもわたしたちがいて、やはり同じ話をしているとします」
「お前が言いたいのは、今ここにいる俺たちの会話と、未来星にいる俺たちの会話は、同じ内容だけど同じ時間に起きているわけじゃないってことか?」
「はい。未来星にいるわたしたちのこの会話は1万年前の過去の出来事になるんです。1億光年離れているとしたら、1億年前の出来事に」
「光の早さでどれだけ離れてるかによって、未来星はその分だけその星よりも未来にあるってことか? 1万光年離れてる地球から見たら1万年未来だけど、1億光年離れてたら1億年未来で……」
だんだん頭がこんがらがってきた。
「そういうことです。スク水星は未来星とは3光年ほどしか離れていないので、わたしたちの星から見れば3年ほど先の未来になるだけですが、この地球と未来星は実際には5億6700万光年離れています」
「5億6700万光年……?」
レイタはスマホを取り出すと、光の速さについて調べることにした。
光の早さは毎秒29万9792.458km、1光年は9兆4600億kmらしい。
電卓アプリを開き、9兆4600億に5億6700万をかけてみることにした。
「なんだこれ、16進法か何かか?」
スマホの電卓には、「5.36382E21」と表示され、彼にはその数字とアルファベットが意味するものが全くわからなかった。
ネットの知恵袋に似たような悩みを抱えていた人がいて、1.00E+20とは何かと質問していた。1.00×10の20乗、100000000000000000000のことですよ、という回答がベストアンサーに選ばれていた。
どうやら「5.36382E21」の「E」は「×10」、「21」は「21乗」を意味しているようだったが、そのあまりに途方もない0の数にレイタは軽くめまいがした。
一応、Eが入った数値を普通の数値表記に戻す変換サイトもあったから試してみたのだが、出てきたのは、5363820000000000000000。
53垓(がい)6382京(けい)と読むのだろうか。
そんな、遥か彼方としか表現できないようなところから、ぷぷるんやミズキたちはこの星にやってきていたのだ。
レイタがぷぷるんを見ると、いつの間にか彼女は、隣にいたウルといっしょに仲良くソファで眠っていた。
「地球から見れば、未来星の今は5億6700万年も未来なのか……」
53垓6382京kmという距離は想像もつかなかったが、ミズキの話は理解できた。
道理でひとりの少女が単独で大気圏に突入できたり、町をひとつ簡単に破壊できたりするわけだ。
この星も、これから先一度も文明や人類が滅びることがなく、西暦5億6700年を迎えることがあれば、きっと同じくらいかそれ以上の科学力を持つことができるのだろう。
だが、常に世界情勢が不安定なこの星には、そんな未来はまず来ないだろうなと思った。
「ミズキたちは、ぷぷるんを追いかけてこの星に来たんだろ? ぷぷるんがどうしてこの星に来たのか知らないか?」
「未来星を救うためだと聞いています。星の寿命が近づいていて、それは未来星の科学力をもってしてもどうすることもできないと」
「そういえば、地球や太陽も何十億年後には死ぬって聞いたことがあるな」
ゲームでもよくある設定だったが、そんな途方もない未来のことなんてどうでもいいとレイタは思っていた。その時代どころか、100年後すら自分は生きてはいないのだからと。
だが、5億6700万光年も遥か彼方の星では、レイタとほとんど変わらない年でそういう状況に直面し、なんとかしようともがいている女の子がいるのだ。その子は今、自分のすぐそばにいる。
自分に出来ることなんてたかが知れているが、ぷぷるんの力になりたいと思った。
「ぷぷるんは、『アリフ』と呼ばれるものを求めて、この星にやってきたんだと思います」
「『アリフ』? 俺の苗字と同じ……?」
レイタの苗字である「在経(ありふ)」は、「ずっとある状態で経過する、ありわたる、生き長らえる」という意味の古文の慣用句であり、
ーーことさわがしき心地して在り経(ありふ)ふる中に。
『蜻蛉日記(かげろうにっき』の中巻にも使われている。
レイタの先祖は、士農工商や穢多や非人に含まれない特殊な職業についており、武士より位は上だったそうだが、江戸時代の終わりまで苗字を持っていなかったらしい。明治時代に入り、戸籍制度が出来た際に蜻蛉日記から「在り経」を「在経」として苗字に引用したと聞いていた。
「それは、未来星に古来から伝わる『不老不死の悪魔』であり、『ありわたる者』」
どこかで聞いたような設定だなと思った。
その体を右腕に、その魂を左目に宿し封印していた少年を、レイタはよく知っていた。
「なんで、俺が考えた中二病設定が未来星に……」
それは、彼自身のことだった。
「何万光年も離れてる星は、光の早さでそれだけ離れてるってことだから、その光がこの星に届くのには同じだけの時間がかかるってことだろ? だから、俺たちが見てる星は何万年も昔の光だっていう。確か太陽の光も6分だか7分か前の光だったよな?」
その何万年もの間にその星がなくなってしまっていたりするかもしれないが、それに気づけるのは何万年後の人々だけだという話をレイタは聞いたことがあった。もっとも、NASAのハッブル宇宙望遠鏡あたりを使えば、今はもうすぐにわかるようになっているのかもしれなかったが。
「そうです。ですが、それはあくまで光だけの話。いくら遠く離れていても、ふたつの星は同じ宇宙に存在し、同じ時間の流れの中にあります。どちらの星にもわたしたちがいて同じ会話をしていると思ってください。今のこの会話は、遠く離れたふたつの星でまったく同じ時間に起きている。それはわかりますか?」
レイタは黙って頷いた。
わざわざそんな説明をするということは、未来星はそうじゃないのだろう。彼にはなんとなくわかってしまった。
「ですが、未来星にはそういう時間の流れについての常識が通用しません。夜空に浮かぶ星々は、その多くが太陽のような恒星です。未来星やわたしたちのスク水星も、そのうちのひとつのまわりを、この星が太陽のまわりを回るように回り続けている惑星に過ぎません。仮にですが、この星と未来星が1万光年離れているとしましょう。そのどちらの星にもわたしたちがいて、やはり同じ話をしているとします」
「お前が言いたいのは、今ここにいる俺たちの会話と、未来星にいる俺たちの会話は、同じ内容だけど同じ時間に起きているわけじゃないってことか?」
「はい。未来星にいるわたしたちのこの会話は1万年前の過去の出来事になるんです。1億光年離れているとしたら、1億年前の出来事に」
「光の早さでどれだけ離れてるかによって、未来星はその分だけその星よりも未来にあるってことか? 1万光年離れてる地球から見たら1万年未来だけど、1億光年離れてたら1億年未来で……」
だんだん頭がこんがらがってきた。
「そういうことです。スク水星は未来星とは3光年ほどしか離れていないので、わたしたちの星から見れば3年ほど先の未来になるだけですが、この地球と未来星は実際には5億6700万光年離れています」
「5億6700万光年……?」
レイタはスマホを取り出すと、光の速さについて調べることにした。
光の早さは毎秒29万9792.458km、1光年は9兆4600億kmらしい。
電卓アプリを開き、9兆4600億に5億6700万をかけてみることにした。
「なんだこれ、16進法か何かか?」
スマホの電卓には、「5.36382E21」と表示され、彼にはその数字とアルファベットが意味するものが全くわからなかった。
ネットの知恵袋に似たような悩みを抱えていた人がいて、1.00E+20とは何かと質問していた。1.00×10の20乗、100000000000000000000のことですよ、という回答がベストアンサーに選ばれていた。
どうやら「5.36382E21」の「E」は「×10」、「21」は「21乗」を意味しているようだったが、そのあまりに途方もない0の数にレイタは軽くめまいがした。
一応、Eが入った数値を普通の数値表記に戻す変換サイトもあったから試してみたのだが、出てきたのは、5363820000000000000000。
53垓(がい)6382京(けい)と読むのだろうか。
そんな、遥か彼方としか表現できないようなところから、ぷぷるんやミズキたちはこの星にやってきていたのだ。
レイタがぷぷるんを見ると、いつの間にか彼女は、隣にいたウルといっしょに仲良くソファで眠っていた。
「地球から見れば、未来星の今は5億6700万年も未来なのか……」
53垓6382京kmという距離は想像もつかなかったが、ミズキの話は理解できた。
道理でひとりの少女が単独で大気圏に突入できたり、町をひとつ簡単に破壊できたりするわけだ。
この星も、これから先一度も文明や人類が滅びることがなく、西暦5億6700年を迎えることがあれば、きっと同じくらいかそれ以上の科学力を持つことができるのだろう。
だが、常に世界情勢が不安定なこの星には、そんな未来はまず来ないだろうなと思った。
「ミズキたちは、ぷぷるんを追いかけてこの星に来たんだろ? ぷぷるんがどうしてこの星に来たのか知らないか?」
「未来星を救うためだと聞いています。星の寿命が近づいていて、それは未来星の科学力をもってしてもどうすることもできないと」
「そういえば、地球や太陽も何十億年後には死ぬって聞いたことがあるな」
ゲームでもよくある設定だったが、そんな途方もない未来のことなんてどうでもいいとレイタは思っていた。その時代どころか、100年後すら自分は生きてはいないのだからと。
だが、5億6700万光年も遥か彼方の星では、レイタとほとんど変わらない年でそういう状況に直面し、なんとかしようともがいている女の子がいるのだ。その子は今、自分のすぐそばにいる。
自分に出来ることなんてたかが知れているが、ぷぷるんの力になりたいと思った。
「ぷぷるんは、『アリフ』と呼ばれるものを求めて、この星にやってきたんだと思います」
「『アリフ』? 俺の苗字と同じ……?」
レイタの苗字である「在経(ありふ)」は、「ずっとある状態で経過する、ありわたる、生き長らえる」という意味の古文の慣用句であり、
ーーことさわがしき心地して在り経(ありふ)ふる中に。
『蜻蛉日記(かげろうにっき』の中巻にも使われている。
レイタの先祖は、士農工商や穢多や非人に含まれない特殊な職業についており、武士より位は上だったそうだが、江戸時代の終わりまで苗字を持っていなかったらしい。明治時代に入り、戸籍制度が出来た際に蜻蛉日記から「在り経」を「在経」として苗字に引用したと聞いていた。
「それは、未来星に古来から伝わる『不老不死の悪魔』であり、『ありわたる者』」
どこかで聞いたような設定だなと思った。
その体を右腕に、その魂を左目に宿し封印していた少年を、レイタはよく知っていた。
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それは、彼自身のことだった。
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